2人の話
俺達はギルドを出てから少し遅めの昼飯を食べた。
それから一旦宿に戻ってきた、これからの事を話をする為だ。
考えてみたら俺は明日にはこの街を出て行くと言ったがキースには問題ないか確認してなかった。ガイとブランにはギルドランクが上がったら街を離れることは事前に伝えていたので問題ないだろう。まさかこんなとんとん拍子でことが進んで滞在わずか3日になるとは思わなかかったけど。
「それでなんだけど俺が勝手に決めちゃったんだけど、キースは明日にこの街から離れても大丈夫なの?」
「あぁ、その事っすか。問題ないっす、元々この街から離れて野盗をやろうと思ったんすから。」
話があるからと言って座らせたキースに聞いてみると問題ない様だ。
「これから旅をして色んな所に行ってみようと思うんだ。それこそいろんな国とか巡ってさ。
次の目的地ってブランの弟さんのいる【商業国家 エルバドス】にある【ザール】という街なんだ。」
「げっ。」
俺がそう言うとキースは青い顔をして呻いた。
「何かあるの?」
「いや~、まぁちょっと色々ありまして。」
ん?なんだろう。奥歯に物が挟まったみたいな言い方するけど。そこで俺は閃いた。キースは確か生まれ持ったのが【倉庫持ち】のスキルだった。【倉庫持ち】のスキルは商人が多く持ってるスキルのはず。もしかして。
「もしかしてキースってエルバドス出身だったりする?後家族が住んでたりとか。」
「なんでわかったんすか?そうっすね、エルバドスで生まれたっす。正確に言うとザールに行く途中の街で親父が商人やってます。その街の生まれっすね。」
「なるほど、でもそれだけだったらそんな顔しないよね?家族となんかあった?」
「そんなことまでお見通しっすか。俺は親父に家を継げと言われたんですけど嫌だったんで家を飛び出して冒険者になったっす。」
なんかどっかで聞いた話だな。
「よし、じゃあ途中でキースの家によって親父さんに挨拶しよう。」
「えぇぇぇっ、なんでそんなことになるんすか?」
「だって一緒のパーティで旅をするんだし、挨拶位はしておかないとね。」
「そんな、うちに帰ったら殺されちゃいますよ、俺。」
「あぁ、即死しない限り俺が治してあげるから大丈夫だよ。」
「それはそれで何回も死ぬ目にあうので遠慮したいんっすけど・・・。」
「とりあえず街を出たらまずキースの家に遊び・・・挨拶しに行こう。
2人共それでいい?」
ガイとブランは俺の言うことに頷いて答えてくれた。
「マジっすか・・・。」とつぶやいてるキースはほっとく。
「それからさ、ホントに明日になったらこの街出て行くけど心残りとかないの?
女の人にいっぱい声かけまくってたんでしょ?その中でいい感じになった人とかに別れを告げなくてもいいの?」
「声はかけていい感じになったりとかはありましたけど一晩限りの関係ばっかっすからね。続いてもその間も声掛けてたから恨まれてたかな~、挨拶しに行っても清々するとかぐらいしか言われないかもしれないから別にいいっす。」
ホンとそういうところだけはダメダメだな。
「いや、ホントに自重した方がいいと思うよ。」
「だって男に生まれたら、女の子がいたら声を掛けるなんて当たり前の事じゃないっすか。」
いや、そんな事当たり前じゃない。生まれてこの方女の子に声掛けたことなんてないぞ。
俺は首を振って否定する。
「兄貴は違う世界からきてこっちはまだそんなに慣れてないっすよね?
お2人はどうだったんですか?いい関係の人とかいなかったんすか?別れ言いました?」
俺が違うと言ったからガイとブランに話を振った。
えっ、ガイとブランの恋バナが聞けるの?マジで!?
俺達だけだとそんな話今まで出たことなかったけど、キースがパーティに入って良かったと思えることが出来たよ、ありがとう。
いや、ちょっと待て。
これでもしブランとかガイに「許嫁がいる」とか「心に決めたやつがいるんだ」とか言われたらどうしよう。女の影とか今まで見えたことなかったけどもしかしたらもしかするかもしれない。
俺そんな事聞いたら、吐血して倒れるよ。今まで負ったことのないダメージ受けるよ。みんなのレベル超絶上がると思うよ。
「そうじゃの~、特におらんのう。わしは若い頃にもう今の様に旅をする冒険者になっておったし。特定の所にずっと長くおるという事もしてなかったしのう。こんな身なりをしておる奴に寄ってくるようなのはおらんかった。」
俺が妄想を繰り広げてる間にブランが答えた。
良かった、血反吐吐かなくて済んだ。
大丈夫だ、ブラン。そんな身なりに寄っていってるやつがここにいるから。
「俺も別に。周りが男ばっかりの所で過ごしたしな。なかなか街に出てってこともなかったし。」
ガイもそうなんだ。結構モテそうなのにな。ただ雰囲気的に真面目で奥手そうだしな。キースと違って声掛けたりはしなさそう。お見合いとかで結婚しそうなタイプだよな。
「街に出てってない?そう言えば兄貴のことは聞きましたけどお2人の事も詳しく伺ってもいいっすか?」
キースが言った。
そう言えばガイとブランの事はほとんど話してなかったな。これから一緒に旅をして行くんだからちゃんと教えておいた方がいいかもな。
「そうだな、その方がいいと俺も思う。全部話してしまってもいいと思う。」
キースに言われてなぜか俺の方を見てる2人に言う。俺が話すの禁止にしてたからかな?キースは仲間になったんだから2人が話せる範囲だったらいいと思う。
「俺は元はこの国の近衛兵団の団長をしてたんだ。でも貶められて奴隷にされた。それをダイゴが買ってくれたんだ。」
それ言っちゃっていいんだと俺は思った。でももうガイの中で割り切れた話になったからこうして普通に言えるようになったのかもしれないな。
「えっ、ホントに兄貴の奴隷だったんですか?」
「わしもじゃよ。わしも両手を失くし奴隷になったところを主に拾われて、こうして治してもらったんじゃ。」
驚いたキースにブランは自身の腕を叩いて言った。
「申し訳なかったんだけど、さっき話したけど俺は勇者であることを隠したかったからさ。
一緒に旅をしてくれる人を探す時に普通の冒険者よりも秘密を守れる奴隷の方が都合が良かったんだ。」
「主、いつも言っておるが申し訳ないことなんて1つもない。わしらは救われたんじゃ。それに主の奴隷になったからと言って今までに酷い扱いを受けたりしたことは一度もない。大事に思ってくれてることが良くわかる。だからわしは主の奴隷であることを誇りに思っておるわい。」
ブランがいつものように優しくそれでいて強い目をして言った。
駄目だ、本当に嬉しい。思わず抱き着きたくなるが我慢我慢。
「そう言ってくれると俺も救われた気持ちになるよ、ありがとう。
でも言ってくれたらいつでも奴隷契約は解消するからね。」
「いや、このままの方が良い。そうだキース、わしら強かっただろう?」
「えっ?はい。そうっすね、あんなに強いとなるとAランクとか、もしかしたらSランクの冒険者の強さ位を持ってるんじゃないっすか?」
ブランにいきなり質問されてびっくりしながらキースは答える。
「それも全て主の奴隷だからなんじゃ。主の奴隷であるからわしたちはここまでの強さを手に入れることが出来たんじゃ。」
ブランはそう誇らしげに言った。
「どういうことっすか?」
キースが俺の顔を見てくる。ん?俺が説明した方がいいのかなとガイとブランを見るが2人共俺の方を見てるだけだった。俺のスキルや称号のおかげだから俺が説明しないといけないのか。
「えっとだな、まず俺は勇者であってほとんどのスキルを使うことが出来るんだ。そして称号で【奴隷の主】という称号を持ってる。その称号の恩恵で俺が持ってるスキルの力が契約してる人にも少し流れるんだ。スキルの中には習得する時に習得しやすくしたり、レベルが早く上がるようなものがある。そう言ったスキルと使いつつ俺が一緒同じスキルを使って訓練したりすると、普通の人では考えられないスピードでスキルを憶えたり、レベルアップしたりできるんだ。そのスキルと、称号のおかげで2人は一気に強くなれたんだよ。本人たちの努力も十二分にあったけどね。」
簡単に説明する。大体分かればいいだろう。
「マジっすか?じゃあ俺でも奴隷にして貰ったら御2人みたいに強くなれるんっすか?」
「まぁ可能ではあると思うよ。ただ強くなりやすくなるってだけで努力はしないといけないことは変わらないよ。」
「しかし俺達は今のキースぐらいの実力から1か月くらいでここまで来たからな。」
ガイが言ったことを考えたらそうかもしれない。キースのレベルもそんなに低くなくガイとかと出会った時とそこまで大差はない。
「兄貴、是非とも俺を奴隷にしてください。」
なんかそう面と向かって言われるとドキッとする。タイプの人間にそんなこと言われてみろ。理性が崩壊しそうになるって、絶対に。
正直なところこのまま一緒に旅をして行くのならもっと強くなってもらわないと俺達にはついてこれないと思う。だからキースがそう言ってくれるのならありがたい。
「ホントにいいの?ホントにホントに後悔しない?」
でもちょっと心配なので聞いてみる。
「大丈夫っす、後悔なんてしません。お2人の事を見たらわかります、後悔や不満があるようには見えません。だからお願いするっす。」
そこまで言われると俺にも断る理由はない。
「わかった、じゃあ今すぐにするね。」
俺はそう言って【刻印術】のスキルを付けて発動する。すると手に光が集まって1枚の紙になる。以前奴隷商で見た紙はスキルで作ったものだった。俺も何かあった時に使えるスキルだと思っていたので一応使えるようには練習しておいた。
「えっと隷属紋を刻むけど、どこがいい?
見えない場所の方がいいと思うけど。」
キースの体に魔力の印を刻まないといけないから聞いた。ガイとブランは奴隷商の所ですでに刻まれていたから胸にある。
「見えないところっすか・・・尻とか?」
お前それ、下を脱ぐってことだぞ。
そんなのドキドキして手が震えて、印が刻めなくなるかもしれないだろ。
「冗談すよ、俺の汚い尻なんて兄貴に向ける訳にはいかなっす。」
キースはそう言って右手の袖をめくって二の腕を出した。
「ここにお願いするっす。」
そう言わたので俺は指先に魔力を込めて、キースの二の腕に隷属紋を刻んだ。
「後契約の内容なんだけど、一応俺達の仲間に対しては危害を加えないってこと。もし破ったら体に激痛が走るってのでも大丈夫?申し訳ないけど罰則の一番軽いのでこれなんだ。」
「はい、問題ないっす。そんなことするつもりさらさらありませんから。」
「わかった。」
俺はそう言ってスキルで作った紙に今の事を記していく。そして指を切って出した血を紙の印に垂らした。それからスキルを使う。持っていた紙は光の粒子になってキースに吸い込まれていった。
「終わったよ。」
「こんなもんなんですね、もっと痛かったりするのかと思ってました。」
キースはそう言って自分の体を色々見回していた。俺は【鑑定眼】を使ってキースのステータスを見る。称号に【奴隷】の文字があった。問題なくスキルは使えてみたいだ。
「兄貴、改めてよろしくお願いします。」
「あぁ、こちらからも。」
キースが俺に向き合って笑顔で言ったので俺も笑顔で返した。
お読み頂きありがとうございます。




