ランクアップ
なんか話もまとまったみたいだし街に帰ろうかな。
そう思って帰りの準備を始める。
【タイガーキングクラブ】の持って帰る部分って確かハサミだったっけ。加工とかしたら武器の素材になったりするらしい。
でも1つのハサミは俺がバキッと折ってしまった。何も考えずにとっさの行動だったからな。
幸いにももう1つのハサミはガイの剣で綺麗に根元から斬られて転がっていた。こちらを持って帰ろう。
腕に当たる部分もまだついていたからガイにハサミだけになるよう剣で斬って貰った。
しかしその他の部分はどうしようか。このまま放置したら問題になりそうだし埋めるか、持っていくかなんだけど。もしかすれば何かの素材になるかも知れないから持っていくか。俺の【倉庫持ち】の中ドンドン死骸が入っていくんだけど、食べ物とかと混ざらないよね?
「兄貴も【倉庫持ち】持ってたんすか?ってあれが全部入るってどんなスキルなんですか!?」
俺が【タイガーキングクラブ】の体全てを【倉庫持ち】に収めたのを見てキースが声を上げる。どうなんだろうね、俺の持ってるのってどれくらいの物が入るか未だに底が見えないんだよね。実は無限に入るとか?もしかしてスキルの鑑定とかしたら分かったりするかも。
俺はそう思って【鑑定眼】を使って自分の【倉庫持ち】を見てみた。するとパソコンなんかでHDの容量を見るような円グラフが見えた。なになに、今の使用量は5%って書いている。結構入れてるんだけどね。前に考えた水を入れとくとかいうのも試してるから、25mプール一杯分の水は入ってるはず。その他諸々入ってまだ5%しか使ってないのか。うん、無限ではなかったけどまだまだ保管できるな。頑張ったら城丸ごととか行けるんじゃないか。
またこのスキルも色々研究するところもあるし色々試していくか。
その場の片付けが終わったので後は口裏を合わすだけだ。
これから俺達は討伐が終わったという報告をギルドに行ってしないといけない。
ただ正直にでっかい人形足止めしてる間に剣で足をスパスパ切り落として動けなくしてから、人形が潰れるまで叩き続けました。なんて報告できるわけがない。
一応俺に考えがあるので、ギルドに行って俺が話すことに合わせてくれるように頼んだ。
それから俺達は歩いて街に戻った。
街に戻ってからギルドに一直線に向かった。
俺はデカい袋を持っている。ギルドで【倉庫持ち】から【タイガーキングクラブ】のハサミも出す訳にもいかないので手に持ってるんだがそれが結構大きくて邪魔だ。一刻も早くこの邪魔な荷物を失くしたい。
「すいません、ギルドマスターにお会いしたいんですが?」
受付の先日も見た男性にそう告げ、ブランがギルドカードを見せた。
「話は伺っております。あなた達のパーティが来られた時には直接マスターの部屋に案内するように言われてます。今はマスターも2階におりますので直接部屋へ行ってください。」
そう言われたので俺達は2階に向かう。
一番奥まで進んでからキースにノックしてもらう。俺は今手がふさがっているんだ。
中から「どうぞ。」という声が聞こえたので扉を開けてもらい中に入る。
「何かあったんですか?」
俺達の姿を見たカガチさんがびっくりしたように声を上げて椅子から立ち上がる。
部屋を訪れたのが俺達とは思ってなかったんだろう。普通だったら討伐の準備とかを俺達がしてるだろうと思うところだ。その俺達が部屋に来たってことは何か良くない事でもあったんじゃないかと思ったんだろ。
「いえ、大したことじゃないんですが。
【タイガーキングクラブ】の討伐が終わったのでその報告に参りました。」
「はい?」
俺の言葉にカガチさんは目を丸くしてる。
「言葉通りなんですけどね。【タイガーキングクラブ】を討伐して、その証拠にハサミを持って帰ってきました。」
俺はそう言って持ってる大きな袋をちょっと上にあげた。
「ええぇっと、まずちょっと座って頂いてもいいですか?私も落ち着きますので。」
勧められたので俺達はテーブルの前に座った。カガチさんも俺達の前に腰を下ろす。
「その、本当に【タイガーキングクラブ】を討伐したんですか?この人数で、しかもこの短時間で。」
「えぇ。証拠のハサミです。」
疑っているカガチさんの前のテーブルに袋から【タイガーキングクラブ】のハサミを置く。
「本物・・・ですね。」
カガチさんは【タイガーキングクラブ】のハサミを手でなでながら言った。
「しかし、こんな短い時間でどうやって?」
カガチさんは真剣な目で俺に聞いてきた。
「そうですねぇ、あまり詳しいことは言えません。俺達の冒険者としての戦いのノウハウがあるので。
ただ簡単に言うと落とし穴を作って、それに誘い込んだんです。そして落ちたところに上から岩を落として動きを封じてから、ある方法で倒しました。」
「それで倒せるんですか?それにこのハサミから推測するに【タイガーキングクラブ】の大きさは5mを越えるでしょう。落とし穴なんてどんな大きさであればいいのか見当つきませんが。」
「俺とリーダーは【土魔法】が得意です。地盤の柔らかいところを見極める必要がありますが、【タイガーキングクラブ】は甲羅が硬いだけなので動きさえ封じれば倒す方法は色々あるという事です。」
俺は最初に考えていた倒し方をそのまま話した。こうやって倒そうかなっては思ってた。そういればキースに見られても問題ないかとは思ってたんだけど。いきなり向こうが気付いて襲ってくるとは思わなかった。
「何となくは理解できました。それに実際にハサミを持って帰ってこられていますし、信じましょう。
では討伐の達成を確認しましたのでお2人をCランクの冒険者にランクアップいたします。
それから討伐の報酬と、このハサミの買取なんですが・・・。」
「そのことについてなんですが、1つお願いがあるんですがよろしいですか?」
「えっ、お願いですか?私の出来ることであればですがお話をお聞きしましょう。」
「実は今回ここにいるキースさんがとても役に立って頂いたんです。」
俺がそう言うと言われたキースは驚いた顔してる。話合わせろって言っただろ、そう思って俺はキッとキースを睨む。キースはそれに気づいたのか照れたフリをして頭をかいてた。
「落とし穴に誘い込むときに囮になって頂いて、おかげで今回の作戦は成功したと言ってもいいほどでした。その為俺達はキースさんをパーティに迎え入れようと決めました。そうですよね、リーダー?」
「えっ、あぁ、うん、まぁ、そうじゃの。そうじゃった、そうじゃった。」
ブランに顔を向けると、ブランも慌てて答えた。大根か。でもその慌てた感じ頂きました。
「そこで今回はハサミの買取の金額などは必要ありませんので、キースさんも俺達と一緒にCランクにして頂けないかとお願いしたいんです。」
「キースがですか?ほんとに?」
カガチさんは物凄い疑いの目をキースに向ける。
「俺達は旅をしているパーティなんでキースさんが加わったら早くても、明日にはこの街を出て行くつもりです。」
「わかりました、了承しましょう。」
俺の言葉にカガチさんは即決した。そんなにキースにこの街から出て行ってほしかったのか?やっぱりちょっと自重した方がいいぞ、キース。
そんな感じで話はまとまったのでカガチさんに手配をして貰って1階に戻り俺達3人のランクアップとキースのパーティへの登録をして貰った。報酬は討伐だけでも結構貰えた。そうだよな、Cランクの魔獣倒したらそれなりに貰えるよな。やっぱり前のギルドがおかしかっただけだ。
全てがすんでギルドの外に出てから俺はキースに言った。
「『ダイザン』にようこそ。」
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