表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
いざ世界へ
53/237

秘密の共有3

「【タイガーキングクラブ】も2人が倒したようだから合流しに行こう、立てるか?」



 俺は地面に座るキースにそう言って手を伸ばした。

 伸ばした手をキースが力強く掴んだので引いて起こしてやる。

 しっかりと立ち上がるキースを見て少し安心する。

 【復活(リヴァイブ)】はしっかり効いたみたいだな、久々の回復魔法だから大丈夫かなと思ったけど。


 それから二人でガイとブランの元へ歩いて行った。

 近づいていくとブランが岩の人形(ロックゴーレム)を地面に戻してるところだった。



「お疲れ様。2人で倒してくれて助かったよ。」



 俺はガイとブランにお礼を言った。



「いや、なに。最近戦ったりしておらんかったから、自分がどれくらい強くなったか確認することが出来ました。良い機会を貰いましたわい。」


「そうだな、旅に出てからは自己鍛錬ばかりだったからな。たまにはこうして自分の実力を知っておくのも必要な事だと思う。」



 2人はそう返した。

 そう言えばそうだな。旅に出てから戦闘は俺くらいしかやってない。モンスターを狩ったりもしてないしな。昨日の野盗も戦闘と言うほどの事でもなかったし。でも着実に二人とも強くなってるな。楽勝に勝てる相手だとは思ってたけどここまでとは思ってなかった。基本的に旅中はそれぞれにスキルの訓練とかしてたから話には聞いてたけど、実際に使ってる所を見たら違うな。

 そんな事を思っていたころにはブランの人形(ゴーレム)も大地に戻った。後に残るはバッキバキに割れた【タイガーキングクラブ】の死骸だった。



「2人共お強いんですね・・・。」



 キースが【タイガーキングクラブ】の死骸を間近でみて呆けたように呟いた。



「いや、わしらなんてまだまだじゃよ。わしらよりも(あるじ)の方がもっと強い。」



 ブランがそう言って俺を見た。

 いや~、俺はそんなに強くはないと思うけどな。



「疑ってた訳じゃないですけど、ホントに3人で【タイガーキングクラブ】を倒せたんですね。」



 まぁな、普通Eランクの冒険者がそんなこと言っても信用しないだろう。

 俺も自分がそう人に言われたら信じるかどうか。



「だったら、俺何仕出かしたんだろ・・・。兄貴たち余裕で勝てるのに囮になるから逃げて下さいなんて言って、しかも殺されかけて兄貴に助けられるし。」


「そうだな、流石にあれには焦ったよ。とっさに俺も行動できなかった。

 だからキースには大怪我を負わすことになってしまって申し訳ないと思ってる。」


「いや、そんなの俺が勝手にやったことで兄貴が謝ることなんて1つもないっすよ。」


「そうじゃな。しかしお前さんは何故あんなことしたんじゃ?」



 キースにブランが問いかける。



「何故・・・?何故かは俺もとっさの事だったんでよく覚えてないんですけど。

 兄貴達が危ないって思ったら自然と体が動いていました。」


「自然と俺達を助けてくれようとしたんだな。ありがとう。」


「えっ、いや、そんな。俺なんてただ大怪我負っただけですし、ってあの怪我は兄貴が治してくれたんですよね?」


「そうだよ、一応最上位の回復魔法に当たる【復活(リヴァイブ)】って魔法を使ったんだ。」


「でも兄貴って【生活魔法(デイリーマジック)】と【土魔法】しか使えないんじゃなかったですっけ?」



 キースが不思議そうな顔をして聞いてくる。


 俺のことはレベルの高くない魔法使いだとしてキースには伝えている。

 夜に【生活魔法】の【浄化(クリーン)】を使ってみんなを綺麗にするのでそれと、ブランに教えてもらったという建前で【土魔法】を使えるという事にしている。ギルドカードにもそんな風に見える様に偽装を施してる。



「あぁ、それは申し訳ないがそれは嘘だったんだ。俺は魔法使いじゃないんだ。

 今から話すことは出来れば他の人には話さないで欲しい。俺達の事を命を張って守ろうとしてくれたから俺もキースの事を信用して話そうと決めたから。お願いできるかな?」


「そんな、もちろんすよ。兄貴は俺の命の恩人にもなったんですから約束するっす。」


「そうか、後驚かないで聞い欲しいんだが俺は勇者なんだ。」


「・・・・はい。」



 あれ?リアクション薄っ!返事だけ?



「え~っと、だから俺はほとんどの魔法を含めたスキルを使うことが出来るんだ。高レベルでも関係なくね。」


「えぇっ!マジっすか!?ほとんどのスキルをっすか?なんでも?」



 めっちゃ食いついた。こっちにめっちゃ食いついた。

 勇者ってことよりスキルを多く使えるってことの方が驚く事なの?

 あれ、そう言えばガイとブランも俺が勇者って言った時キョトンとしてたよね。

 驚いたのは魔法でブランの腕を生やしたからか?

 もしかして勇者っていうのを気にしてるのは俺だけ?そんな大したことじゃないの?

 城にいた時はみんな勇者様、勇者様と持ち上げ騒いでたけど一般の人は勇者の事大して何も思ってないのかな。



「ごめん、先に一つ聞いていいかなキースにとって勇者ってどういう存在?どう思ってる?

 俺が勇者だからって気を遣わずに正直に答えてほしい。」


「えっと、勇者ですか?

 ん~と、そうっすねぇ。どういう存在と言われてもいまいちピンとこないっすね。ずっと昔に魔王を倒して平和にしてくれたらしいですけど、すんごい昔だし実際にどう凄いかとか見たこともないですしね。どう凄かったとか具体的な話も聞いたことないですし。どう思ってるっていうのも特には。凄い人なのかなくらいですかね。生きてきた中で考えたこともなかったっすね。」



 そうなのか。この世界では勇者とか神聖視されたりとかはしていないのかもしれない。

 魔王を倒した事実位しか伝わってないみたいだし、でも神とか城での対応とかを見るとこの世界を救える人物みたいな感じがしたけど。一般の人には伝えない様にしてる?いや、単に勇者という仕事を押し付けたい為に持ち上げて気分を良くしてるだけか?う~ん、考えても実際がどうなのかって事はわからないな。

 まぁ勇者ってことがこの世界では大したことではないと分かっただけでもいいか。キースが勇者に興味がなかっただけという可能性もあるけど。



「俺ってさ、違う世界からグラントの国王に勇者として召喚されたんだ。ただその王様が信用できない人間だったから飛び出してきたんだ。それで勇者であることがバレるとその国王に良い様に使われそうだからこの国にいる間は隠そうと思ってるんだ。」


「そんなことがあったんすね。了解しました、誰にも言いません。

 勇者とそのご御一行だったからそんなに強かったんすね。」


「間違えない様に言っておくが、わしらは(あるじ)が勇者だから付き従っとるわけじゃないぞ。」


 ブランが厳しい目をしてキースに言った。



「変なこと言ってすいません。俺もわかるっす。俺も勇者だから兄貴について行こうと思ったんじゃないから、兄貴の人柄とかそういう事なんすよね?」


「そういうことじゃ。」



 2人は納得しているが俺はなんか気恥ずかしい。嬉しいんだけど。



「うぉっほん、まぁそういう事だよ。俺は勇者である前に1人の冒険者として旅をしてるんだ。それでも、魔王と戦わないといけなくなる日が来るかもしれないから強くなろうともしてるんだ。だから俺達があまり仲間を増やしたくない理由はそれだし、もし一緒に旅をするんだったらかなりの覚悟を持ってもわらないといけなくなるんだ。」



 俺は照れてるのを隠す為咳ばらいをしてからキースにそう言った。



「はい、俺は大丈夫っす。もう覚悟もあります。兄貴達について行くっす。」



 キースは明るく笑ってそう言った。

お読み頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ