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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
いざ世界へ
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ランクアップに向けて

 俺達4人は宿で一晩過ごした。

 俺とキースの話にガイとブランは何も言ってこなかった。どう思われてるかちょっと気になったけど。キースの前で聞くのもなんだか恥ずかしい気がする。あんな脅すようなことを言ってるのを聞いてどう思ったとか、とてもじゃないけど聞けないな。酷いやつだなとか思われてたらやだな~。うん、モヤモヤする。

 やっぱり聞いてみよう。また俺が勝手に決めて勝手に進めてる気がするし。


 朝になって起きた時にキースには少しだけ外に出てもらうように伝えた。

 それを聞いてキースも部屋の外に出てくれた。

 それで改めてガイとブランに向き合った。



「えっと2人にちょっと聞きたいことがあるんだけど。」



 2人に言うと不思議そうな顔をして聞いてくれた。



「あの、昨日のキースとの話なんだけど。なんか俺が勝手に決めちゃった気がしたんだ。何もしなければ俺達についてきてくれてもいいよって。2人に了承も取ってないのに勝手にいっちゃったからさ、2人はどう思ってるのかと思ってそれを聞きたいんだけど・・・。」


「あぁ、その事か。別に気にしてない。俺はお前と一緒に旅をしたいと思っただけだから他に誰が一緒になろうと関係ない。」



 ガイが言った。



「わしも(あるじ)の役に立ちたいだけじゃし、おんなじじゃな。増えても問題ないぞ。」



 ブランもそう言ってくれた。

 良かった。

 でも俺の事どう思ったんだろうか・・・。



「後さ、俺キースに対して脅したりしてたけど、どう思った?」



 2人は顔を見合わせて顔に?を浮かべている。



「いやさ、あんなこと言って酷いやつだなとか思わなかったかなって。」


「なんじゃ、(あるじ)はそんな事考えておったのか。

 わしらがそんな事思う訳なかろう。」



 ブランが言うと隣でガイも頷いている。



(あるじ)が言ってたことはまっとうな事じゃ。どんな人間かもわからないような人間を近くにはおいておけん。これから旅を続けていくにはそうやって用心をすることは大事じゃ。

 やつが言っていたように先にそれを伝えてやって選ばせてやるなんて(あるじ)は甘いとは思ったがそこが(あるじ)の優さで、いいところじゃ。じゃからわしは好ましく思ったし、この人が(あるじ)であることを嬉しくもなった。」


「そうだな、別にあんなもん脅しには入らないだろう。脅しっていうのはホントにやってから最後にきくもんだ。一線を越えない為にな。俺も甘いとは思ったが俺たち全員の事を思って言ったんだろうし別に何とも思ってない。まぁ、確かに甘いというよりも優しいやつだなとは思ったけどな。」



 ブランとガイが答えてくれる。なんか嬉しいな。



「わしらは(あるじ)の優しさに助けられたんじゃ。(あるじ)が優しいことを一番わかってると思っておる。じゃからいくら酷いことを言ってもその裏には優しさがあることぐらいわかっておるわい。だから(あるじ)は好きなようにしたらよい。」



 ブランが優しい笑顔しながらそう言った。

 ヤバい、泣きそう。

 俺もそんな事今までの人生で言われたことないよ。

 俺は自分のやりたいようにやる、人にどう思われていいよ。みたいな感じに思われているかもしれないし実際に他人にどう思われても気にしない。ただやっぱり自分が大事に思ってる人に酷いやつだと思われていると思うと心が苦しい。ブランの言葉が胸に広がる。俺の事を本当に信頼してくれているんだろう。とてもありがたいことだ。



「ありがとう、そんな事言われたのは初めてだ。とても嬉しい。だけど本当に俺が間違ったことや、人としておかしいと思う事を口にしたら言って、叱ってくれ。」


「お前でもそんな事言うんだな。なんか少し安心した。若いくせに達観(たっかん)してると思ってたがそんな事を気にすることもあるんだな。ふふっ。」



 なんかガイに笑われた。

 だって気になるじゃんかよ、自分が気に入ってる人に嫌われるのって(こた)えるんだぞ。



「あの~、まだっすか?」



 部屋の外からキースの声が聞こえたので俺達は部屋から出て朝飯を食べに行くことにした。




 朝食を宿で食べてから俺達はギルドに向かった。

 依頼を受けてギルドランクを上げようと思ったからだ。買い物とかはまた後でいいかな、依頼の内容によっても必要になるものがあるかも知れないし。


 ギルドに入って受付のカウンターにいた女性に声を掛ける。

 キースの姿を見て顔が引きつってるんだけど?

 この人にも声掛けたんだろうな。まぁなかなかの美人だとは思うけど。



「昨日にギルドマスターのカガチさんとお話はさせて頂いたんですがランクアップをしたいんです。」



 俺はそう言ってギルドカードを見せた。



「伺っております、直接マスターの部屋に行ってください。2階の一番奥です。」



 女性にそう言われた。案内はしてくれないみたいだ。受付は1人しかいないからこの場から離れらないんだろう。

 俺達は階段を上がって教えてもらったように奥へと進む。

 一番奥の部屋の前に着いたので扉をノックしてみる。「どうぞ。」と中から声が掛かったので扉を開けて中に入る。入った部屋はグラントの城下町にあったギルドマスターの部屋とそう変わりがなかった。



「ようこそ。

 そちらの椅子にお座りください、あれ?キースもご一緒なんですか?」



 カガチさんは立ち上がって俺達の事を迎えてくれた。どっかのギルドマスターとは大違いだ。

 しかし俺達と一緒に入ってきたキースに気付いたようで難しい顔してる。



「えぇ、俺達には迷惑を掛けないと約束して頂いてしばらく一緒にいることにしました。ここら辺には不慣れなもので色々と案内をして貰ってます。」



 俺は一応差し障りのないように言っておいた。

 カガチさんはため息を一つついて、自身も椅子に掛けた。この件についてはもう触れない様だ。



 俺たち全員が座ったのを確認してカガチさんは話し出す。



「一応EランクからDランクにランクアップする為の依頼はいくつかあるんですが、ただ今回は少しお願いしいことがありまして・・・。」



 カガチさんは眉をひそめ申し訳なさそうに言った。



「実はですね、この街の近くにCランクの魔獣が現れました。今このギルドにいる冒険者はDランクが殆どなんです。そこでCランクの冒険者のいるこちらのパーティに討伐を協力して頂けないかと思いました。他のパーティと協力して頂いて討伐すればランクアップを認めるというのはどうでしょう?」


「普通Cランクの魔獣を討伐するならCランクのパーティが何組かで当たるか、Bランクのパーティが挑むものだと思ってます。Cランクのパーティは結構いるんですか?」


「えぇ、そうなんですがまずこの周辺にBランクのパーティがいないんです。Cランクのパーティも一組くらいでしょうか。」


「ちなみにその魔獣ってどんなやつなんですか?」


「それが【タイガーキングクラブ】という魔獣なんです。」


「【タイガーキングクラブ】だって!?そんなのCランクのパーティいくつも必要だろ。」



 驚いて声を上げたのはキースだった。

 俺も本で読んだので【タイガーキングクラブ】がどんなモンスターかは知ってる。

 姿はでっかいカニみたいだ。2本のハサミを持っていて硬い甲羅が体を覆っている。体長はまちまちだが大体が全長5m位あってバカでかい。鋭いハサミで攻撃してくる。動きも結構素早いらしい。魔獣としての一番の特徴は甲羅の硬さだった。とにかく硬く、並みの剣じゃ傷一つつかない。通用するのは魔法とかになるが魔法にも耐性があり効きにくいらしい。

 倒すためには森などに誘い込んでハサミや足に縄などを引っ掻けて動けなくしてから比較的柔らかいとされる腹側から攻撃するか、上から岩などを落とす罠で物量で押しつぶしたりするかなどだった。だから普通討伐しようとすると囮になるものや、罠にかけてからも結構な人数がいるので他のモンスターの討伐よりも多くの人出が必要だ。まぁどんな魔獣を倒すのに結構な人数は必要なんだが。もしかして俺達に話を持ってきてるのはブランがドワーフで土魔法を使えるのが分かってるからかな?



「うちのリーダーは土魔法が得意なので上手く戦えるかもしれませんね。俺達もEランクなんですが旅の最中にリーダーから鍛えてもらってますから、普通のEランクより戦えるとは思っています。ただ俺達の戦闘って少し特殊なんで他のパーティと一緒にだと連携が取れるかわからず本領発揮出来ないかもしれません。今回はうちだけに任せてもらうことは出来ませんか?」


「えっ?!

 そりゃこちらとしてはありがたいお話なんですが本当に大丈夫なんですか?」


「大丈夫ですよね?リーダー。

 前にいたところではCランク魔獣のブラッドグリズリーも倒しましたしね。」



 俺がそうブランに話を振ると「うむ」と言ってブランは答えた。

 俺は正直楽勝だとは思ってる。たださっき言ったように他のパーティがいる方が面倒だ。



「ブラッドグリズリーを!?まぁそれでしたら可能なのかもしれませんね。

 もし本当にこのパーティだけで【タイガーキングクラブ】を討伐出来たんであればお二人をギルドマスター権限でDではなくCランクにランクアップすることをお約束しましょう。」



 マジで!それはありがたい。

 カガチさんはどっかの誰かさんと違って丁寧だし、いい人そうだから普通に受けてもいいと思ってたんだけどこんな事言ってくれるんだったらさらにやる気が出る。



「いいんですかそんな事?」


「えぇ、普通Cランクの冒険者のパーティがいくつも必要な依頼です。お一人Cランクがいるからと言ってこの人数でこなせる様な依頼だとは思ってはいません。だからもし倒して生き残れるのであればCランクと言ってもおかしくはないでしょう。普通であれば生きて帰ることでも難しいんですよ。」


「大丈夫です、俺達は死ぬ気はありませんから。」



 俺達はそう言ってこの依頼を受けた。

お読み頂きありがとうございます。

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