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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
いざ世界へ
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信頼

 俺達は結局宿で4人で1つの部屋を取った。

 キース1人だけ別の部屋にして、その金を貸してやるのが何となく気が進まなかった。

 一緒に泊まっても俺には【気配察知】のスキルもあるしおかしなことをしてもすぐにわかる。だからおんなじ部屋でも大丈夫だろうと思った。

 今回はさっきの買取の件もあったので宿代はこちらが負担するという事にした。ただし今日1日限りだと伝えた。

 


 それから俺達は良い時間になったのでギルドに行くことにする。

 ギルドの場所はキースが知っていた。

 俺達の前を意気揚々とキースが道案内をした。


 こちらもさほど時間がかからずギルドに到着する。

 前にグラントの城下町にあったギルドとは規模が違うのか建物の大きさは3分の1ほどだった。

 まぁ城下町に比べると街のサイズ自体も小さいしな。大体半分ないくらいか。城下町に比べて民家が多いみたいだし。城があってその周りに街があるところと比べても仕方ないけど。


 ギルドに入ると中もこじんまりしていた。

 受付のカウンターに1人、報酬窓口に1人、ギルドの人は目に見えるところで2人しかいないみたいだ。中にいた冒険者も2パーティ分ぐらいしかいなかった。酒場は併設されていないみたいだがテーブルとイス位は置いてあった、それに腰かけて何か話していた。まぁ冒険者がずっとギルドの中にいるのもどうかと思うけどな。実際にはこの街を拠点にしている冒険者はもっといるんだろうけどね。


 とりあえず報酬窓口の方に行ってみた。

 受付にいたのは男性だが割と細身な感じだな。元冒険者とかじゃないんだろうか。



「すいません、先程野盗を捕まえた者なんですけど、夕方位にこちらに報奨金を取りに来るように言われたので来ました。」



 そう窓口の人に告げる。



「話は伺ってます、少々お待ち下さい。」



 男性はそう言って扉の奥に消えていった。

 しばらく待つと受付の男性と、先程門に野盗を受け取りに来た男が一緒に現れた。



「先程はどうも、俺はここのギルドマスターをやってるカガチと言います。」



 そう言って門であった男が挨拶する。

 ギルドマスター自らわざわざ来てくれてたんだ。何となくギルドの人少なそうだもんね。



「捕えて貰った野盗の調べも済んでるし、報酬をお渡しするね。

 馬の買取料金も入ってるから。」



 そう言って俺にお金の入った袋を渡してくれる。結構入ってるっぽい。



「しばらくこの街に滞在される予定かな?」



 袋をしまっていたらカガチさんに聞かれた。



「そうですね、できればランクを上げたいんですが。

 リーダーはCランクなんですが、俺とこのガイはまだEランクなんで、出来たらDにランクアップしたいんです。」



 そう俺は伝えた。取りあえず事前の打ち合わせで、しばらくの間はCランクのブランを俺達のパーティのリーダーっていう事にしようと話し合った。ブランは難色を示したがEランクの俺がCランクのブランを差し置いてリーダーやってるのは、他から見るとおかしいと思われると思ったからだ。俺がCランクに上がるまでの話だと伝えて了承を得た。そして街を変わるごとに少しずつランクを上げていこうという話にした。それなりの強さ、ブラン曰くAランク位の実力を持つ俺達がずっと下のランクでいるとかなり手を抜いて依頼を受けないといけなくなる。正直スキルを隠したりバレない様に戦うのが面倒なんだ。街を変わっていくときにランクを上げていけばそこまで目立たないと思うし。上のランクになってる頃にはこの国から離れてるだろうから強くなったことがバレても大丈夫かなっと思った。最悪勇者であることがバレてもいいかな~と思ったけどどういう反応されるかわからないしな。

 そう言うことで俺達はこのリステルの街で俺とガイのギルドランクを上げようと思っている。



「えっ~~っ。兄貴Eランクだったんですか!?」



 そこに俺の言葉を聞いて驚くキースがいた。

 そう言えばキースには俺のランクのこと言ってなかったしな。言う必要がないと思ったからだけど。



「なんだキースお前か。ってなんで一緒にいるんだ?」



 カガチさんがキースに気付いた。そうだよね、忠告してもらったもんね。



「なんか勝手に付いてきたんです。街を案内してやるからって。

 後俺達が話してるんで少し黙っててもらえますか?」



 俺はそう言ってキースの方を見て威圧した。余計なこと言うなよって。

 キースは流石に何かあると思ったのか口をつぐんだ。



「そうか、さっきも言ったけどあんまり関わり合いにならない方がいいと思うぞ。」



 ギルドマスターにここまで言わせるって何をしたんだホントに。

 ってふと見るとギルドにいた他の冒険者から凄い目で見られてるだけど。親の仇を見るような目をしてるよ。どうやったらそんなに恨み持たれるの?



「そんなに酷いんですか?」


「そいつの通り名は【全ての女の敵】や【色欲魔王】だ。」


「そうなんですね。注意します。」


「それでランクアップの件なんだがまた明日にでも来てくれるか?依頼を見繕っておくよ。その依頼をクリアして貰ったらランクアップ出来るようにするから。」


「わかりました。ではまた明日伺います。」



 俺はカガチさんにそう答えてギルドを後にした。



-------------------------



 宿に戻って4人で部屋に入った。



「キースさん、ちょっと座って頂けますか?」


「なんすか?」



 俺がキースに声を掛けベットに腰かける様に言った。

 キースが座り、俺もその前のベットに腰かける。



「先程余計なことを言わなかったのは、ありがたく思います。」


「いや~、そんな。」


「ただ、これから俺達の後を付いてきて、もし俺達について知ったことを誰かに話せば俺はあなたを許しません。そうですね、その顔を一晩で直視出来ないぐらいに替えて差し上げます。殺さなけえれば罪にならないのなら顔が変わるまで痛めつけてそれから治してあげます。

 後、俺達と一緒にいる間に俺達に迷惑が掛かるようなことはしない事。具体的には女性に声を掛けたりしない事。それも守れないようだったら同じ様な目に合わせます。そんなの嫌だって言うのなら俺達のことは忘れて目の前から去って下さい。俺達もあなたのことは忘れます。あなたがしようとしたことは誰にも言いません、約束します。

 わかりましたか?」



 俺はそう言ってキースを見つめる。キースは絶句しているみたいだ。

 

 正直なところキースの事は嫌いではない。どちらかというと好きな方だ。

 話していて分かったが裏表がほぼない。俺の事を尊敬してると言っていたがそれは媚びへつらって言っている感じはない。素直にそう思っているみたいに、悪意を全く感じさせない。女癖が悪いことも度が過ぎるってことでそんな悪いことをしているとは思っていない。迷惑してる人はいるだろうけど、とっかえひっかえ女の人を代えて遊びまくってる感じもしない。欲望に忠実であんまり考えてないだけなんじゃないだろうか。野盗になろうとした理由もそうだし。裏で何か画策して人を騙したり、貶めようとしてる人間よりはよっぽどいい。前面で自分の好きな事やってるだけなんだから。

 ただ俺はそれでいいとしても俺の傍にはガイとブランがいる。2人に迷惑が掛かるようなことは絶対にしたくない。キースと一緒にいることでトラブルが舞い込んできたり、変な目で見られたりするのは嫌だ。俺1人だけなら別にいいんだが、もしガイやブランが俺から離れて冒険者をやることになった時に変な噂とかを持って欲しくない。今は俺がまぁいいかでキースの同行を許しているが2人がどう考えてるかもわからない。多分聞いても俺の好きなようにとは言ってくれるんだろうけど。だからせめて2人の迷惑になるようなことは絶対に許さない。俺はそこまで甘い人間じゃない、いくらキースの事に好感を持てても信用はしていないし、2人の方がずっと大事だ。

 だからちゃんと言っておく。



「別に今直ぐこの部屋から出て行ってもいいよ。」



 黙ったままのキースに言う。



「わかりました。言われたことは守ります。

 俺も男です、一度ついて行くと決めた相手にはとことんついて行きます。」



 キースは真剣な表情で言ってきた。でもなんで俺なんかについてきたいんだろう?



「1つ聞きたいんだけど何でそんなに俺達についてきたいんだ?」


「それは兄貴を尊敬してるからっす。」


「そんな尊敬されるようなことしてないと思うけど?」


「いや、兄貴に倒されて捕まってから思ったんです。あれ?俺の人生ってもう終わりかなって。深く考えずに野盗なんてしようと思ったけどこうして捕まったらもう奴隷か下手すりゃ親分だから死刑かなって思いました。物凄く怖くなって軽口たたいて見逃してもらおうと思ったらホントに見逃してくれて。普通の冒険者にそんな奴いないっす。その場で一生立てない位ボコボコにされます。それだけでもすごく嬉しかったんですけど、お3人さんを見ていて分かったっす、お互いをすごく信頼してるってことが。

 自分で言うのもなんですけど俺みたいな訳の分からないやつがいきなりついて行ってもお2人は特に何も言わず、気にする訳でもない。兄貴は兄貴でお2人をずっと気遣っているのが分かったっす。そんな信頼をしあえる仲間がいるとは思ってなかったす。俺がいたパーティは少しでも何かあるとすぐ喧嘩になったり、誰も心から信用してなかったす。俺もそれが当たり前だと思ってました。

 でも兄貴たちは違ったっす。傍から見てる俺にもわかりました。そしてその中心が兄貴だってわかったんす。兄貴がお2人を信頼していて、お2人も兄貴を心底信頼してるって。

 だから俺兄貴のことを尊敬してるんです。こんな世の中にもまだこんな人がいるんだって。

 それで、もしかしたら俺もその中に入れてもらえないかなって。俺も信用して、信用される仲間が出来るんじゃないかなって。そう思ったっす、今なら兄貴の奴隷になってもいいっす。俺を仲間に入れて下さい。」



 そう言ってキースは頭を下げた。

 まいったな、そこまで思ってるとは思わなかった。キースが嘘や建て前を言っているようには思えなかった。だがここでホントに奴隷契約して仲間にするのもどうかと思った。仲間にする為に奴隷にするってことに抵抗がある。それに俺達は旅をしている、これからもしかしたら魔王を戦うことになるかも知れない。命がけの旅をして行く、それは信用出来る仲間が欲しいのとはまた別の話になる。信用出来る仲間だからといって命がけの旅に一緒に行ってくれというのも違う気がする。何か俺の為に命を懸けてくれって言ってる気がする。ガイとブランは聞いた時にそれでいいと言ってくれたから俺も心から信頼して何があっても二人を守ろうと決めている。しかしキースにはまだそこまで思えない。

 それに俺が勇者であることを告げた時にどういう反応をするのかわからない。勇者だからガイやブランが付き従っているってことだと信頼とは別の話だ。だったら仲間にはならなかったと言われるかもしれない。俺のキースに対する信用がまだまだ足りていないんだ。



「ごめん、キースの言ってくれた言葉は嬉しいし、信用したい。

 でも会って1日も経っていないキースの事を俺はすぐには信用できない。

 あぁは言ったけど仲間にする為に奴隷にすることは出来ない。

 やっぱりもっと時間を掛けないとキースを信用して仲間にすることがは出来ない。すまない。」



「わざわざそんなこと言ってくれるなんて、やっぱり兄貴は優しいっすね。

 帰ってきて最初に言われたのもギルドであんな話聞いたら、普通は問答無用で俺達に近づくなって言ってきますよ。

 それを何かあったらって釘を刺すなんて、俺にちゃんと選ばせてくれてる訳でしょ?迷惑かけたら許さないけど、迷惑かけないんだったら付いてきてもいいって。そんな風に俺の事を思って言ってくれた人は初めてっす。」



 そんなことは考えていないつもりだったけどキースはそう受け取ったのか。

 でも言われたらそうなのかな、やっぱり俺はどこか甘いのかもしれない。

 この世界にきて結構殺伐とはしてるし、嫌な人間もいたけどだからって全部の人間を最初から疑りたくない。



「俺から今伝えたかったことはそれだけだ。後はキースで決めてくれ。」


「もちろん俺は兄貴たちの後をついて行くっす。俺の事を信用してくれるまで。」



 キースに言うともう決まっていたようで直ぐに返してきた。



「ただ、なんですけど・・・ホントにたまに、ホントのホントのたまにでいいんですけど女の子に声掛けさせて下さい。絶対に迷惑かけませんので。」

お読み頂きありがとうございます。



50話目ですが、かなり長くなりました。

いつもなら半分くらいに分けるんですけど、切りの良い数字だったのでそのままにしました。

読みにくければ申し訳ないです。


キースのキャラが書いているうちに変わってきました。

もっとちゃらんぽらんな感じで考えてました。最後の方は男前仕様になったり。

次の話はどう変えていこうか。

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