買取査定
俺達は街の中に入ろうと思った。今までの一連の流れは街に入る門の前で行われていたやり取りだ。
時間も出来たことだし街に入ってどこに向かうかだな。宿も取りたいし、道具屋も行きたい。
そう言えば街に来たら行きたいところがあったんだ。
「すいません、以前に盗賊を討伐してその盗賊が持っていたものを頂戴したんですが、それを買い取ってもらえる店をどこか知りませんか?」
そう門番の人に聞いた。
「そうか、ん~、たしかドラの店が質屋で買い取りをやってたかな。」
門番はそう言ってその店までの道順を丁寧に教えてくれた。
「ありがとございます。」
「いや、それとリステルの街へようこそ。」
俺がお礼と言うと門番の人は笑顔で迎えてくれた。
俺達は門番に聞いた店の前に来た。門からはそんなに距離が離れてなかったから直ぐについた。
店の扉を開けて中に入る。
店の中は色んな商品が並んでいたが、道具屋とは違って宝飾品やアクセサリーが殆どだった。
「いらっしゃいませ。」
店のカウンターにいる男から声がかかる。
ドラの店ってことはこの人がドラって人かな。
その男は恰幅の良い、人の良さそうな笑顔を浮かべている。ただ雰囲気は商人の様な感じがする。
「私はこの店の店主のドラと申します。本日はどのようなご用件で?」
「今回は持ってきたものを買取して欲しいんです。」
「はい、ではお持ちいただいたものを見せて頂いてもよろしいですか?」
そう言われて俺はカウンターに宝石やアクセサリーを並べていく。
盗賊から頂いたものは金貨以外にも宝石やアクセサリーがあった。ただ俺達には宝石やアクセサリーは特に必要ない。それだったら金に換えた方がいい。
「こちらは全てあなたのお持物ですか?」
「えぇ、先日盗賊の1つを潰しまして、その時にアジトにあったものを頂いてきました。」
「冒険者様なんですね。ではギルドカードを確認の為見せて頂いてもよろしいですか?」
そう言われたので俺はギルドカードを見せた。こういう時ギルドカードがあると役に立つな。もし俺が持ち込んだ物が盗品だったら俺の称号には盗賊などの称号が付くことになる。そういった罪を犯したという事が分かる称号が付くとギルドカードは使えなくなり、真っ黒なカードになる。スキルなどはギルドに行って何かしらの手続きをしない限り更新されないが、称号はその場ですぐ更新される。
「結構です。ではまずこの一番端の宝石ですが・・・そうですね、金貨12枚でいかがでしょうか?」
俺のカードを確認して問題ないと判断したドラが一番端にあった宝石を手に取って言った。
俺は正直宝石の価値なんてわからない。だからドラの言い値で買い取ってもらってもいいかとは思っていた。特に苦労して手に入れたものでもないしな。
しかしドラの言葉に待ったを掛けた者がいた。
「ちょっと待て、その宝石がそんな金額な訳ねぇだろ。お前カモにしようとしてるな。」
そうドラに食って掛かったのは、なぜか一緒に店までついてきたキースだった。
「その大きさで特に傷もついてないし、適当な貴族に売っても金貨30枚はいくだろう。それを半額以下で買い取ろうなんてぼったくろうと思ってるだろ。」
「お前キースか、何してる?それにお前には関係ないことだろ思うが。」
「あぁん、この人たちは俺の恩人なんだよ。その恩人がぼったくりにあってるのを見逃せるか!」
恩なんてあったっけ?二人は俺の事を置いて言い合いを始めた。
買取の金額はあんまり気にしてなかったけど、俺がカモされてると考えられてるのは少しムカつく。
だからキースがドラを言い負かせれるんだったらと思って放っておく。
「冒険者と思って舐めるなよ、それは金貨30だ。」
「いや、宝石だけを買う貴族なんてめったにおらん。アクセサリーに加工するにもこっちが金を払ってするんだからその分もある、金貨15枚がいいとこだ。」
「はぁ?それでも半額じゃねぇか。それを考えたとしても25枚だ。」
「売れる為に加工するのがどんなに大変か分かっておらんくせに、18枚だ。」
そんな感じでずっと二人は値段交渉をしている。
結局その後も全部の品物を同じように交渉した。
最終的にはドラが最初に言った金額の1.5倍程の金額での買取になった。
一つ一つそれなりの金額だった為結構な差になった。
やっぱり足元を見られていたんだろう。
元の世界でも宝石とか見たことなかったしな。知識がないとこういうことになるのか、勉強になった。また本とか店とか覗いて物の価値は確認しておいた方がいいかもしれないな。
俺達は買い取って貰った金を手に店を出た。
「お礼を言っておくよ、ありがとう。おかげで大分高値で買い取って貰えることが出来た。
買い取って貰った中からいくらか渡そうと思う。」
俺はキースにお礼を言った。勝手に付いてきてとは思ったけど俺の為にしてくれたことに対してはちゃんとお礼をしておく。
「いやいや、そんな俺が勝手にやったことなんで。それに俺の物でもなかったものをちゃんとした金額で買い取って貰っただけっすよ。だから受け取れません。」
キースは胸を張ってそう言った。
こういうとこはちゃんとしてるんだ。俺の中で少しキースの好感度が上がった。
それから俺達は今日泊まる宿を見付け受付を済まそうと思った。
そこにはキースもいた。結局付いてきてる。
キースも俺達と同じ宿に泊まるつもりか。
「キースもこの宿に泊まるつもり?」
「あの~、実は俺手持ちがなくって・・・金貸してもらえないっすか?」
前言撤回。結局俺のキースへの好感度は元に戻った。
お読み頂きありがとうございます。
この話を書いていてあともう少しで書き終わるってところで消えてしまいました。
仕方なくもう一度、一から書き直したんですが書き終わってみると文字数が大分減ってる。
う~ん、同じように書いたつもりなのに。




