引き渡し
「いや~、それにしても強いっすね。兄貴。」
「誰が兄貴ですか。あなたの方が年上でしょう?」
「兄貴と呼ぶのは尊敬の証っすよ。年齢なんて関係ないっす。」
街へ向かう道を歩いている。
俺はずっとキースに付きまとわれていた。
誰が兄貴だ、まぁ呼ばれるのは嫌いじゃないが、そして呼ぶのも。
そう言う事ではない、このままなし崩しに仲間になろうとしてるんじゃないか、こいつ。
俺達は一番前に馬を引き連れたガイ、2番目に盗賊の5人、その5人に繋いだ縄を持っているブラン、そして俺という隊列で街まで向かっている。俺が一番後ろの方が何かあった時にフォローをしやすいんだ。もし野盗が逃げ出そうとしても即座に後ろから狙い撃ちできる。
その一番後ろを歩く俺にキースはずっと引っ付いて話を振ってくる。
「それでな皆さんは旅をしてるんっすか?」
「まぁね。」
「どこに向かってるんすか?」
「そんなの教える訳ないだろ。」
「いや、俺も連れてってくださいよ~。」
「遠慮しとく。」
「俺も結構役に立ったりするんすよ。」
「へぇ~、例えば?」
「俺実は【倉庫持ち】のスキル持ってるんすよ。」
キースが胸を張りながら言ってきた。
うん、知ってる。ステータスは確認済だし。ただその【倉庫持ち】の横に(最小)って書いてあったんだけど。俺のスキルの横にはそんな文字はない。気になったので聞いてみる。
「その【倉庫持ち】にはどれくらいのものが入るの?」
「え~っ、とカバン1つ分くらいっすかね・・・、手の平位の。」
少な!俺が思った通りスキルの横の最小っていうのは入れれる容量が小さいってことか。多分【倉庫持ち】のスキルは他のスキルみたいにレベル分けしても俺には意味がないんだろう。保管するところが一緒でいっぱい物が入れれるスキルを持ってるのに、少ししか同じ所に仕保管するスキルがあっても意味ないんだろう。だから統一されてただ【倉庫持ち】としてのスキルしか持ってないだろうなと思った。
「それって意味あるの?」
「ありますよ、だって入れといたら誰にもとられる心配ないんすよ。貴重品とか入れておけます。
なんだったら預かりましょうか?」
「結構です。」
俺だって【倉庫持ち】のスキル持っててそっちに入れてあるって。
しかしこんなところでスキル持ってますなんて言えないのでとりあえず流す。
そんなことを話しているともう街はすぐそこまで近づいてきていた。
目の前の街も外壁が街の周囲を囲っている様だ。
道なりに進んでいくと街の中に入る為の門があった。
俺達は冒険者用の入口の方へ進む。すると俺達一団に気付いた門番に入口の大分前で止められた。そりゃまぁ馬を連れて、縄で縛った野盗も連れてるんだから当然止められるよね。
「こいつはいったいどういう状況だ?」
「俺達は旅の冒険者なんですが、さっき街に来る前に野盗を捕まえたんです。それで冒険者ギルドに連れていこうと思ってます。後あの馬はその野盗が乗ってた馬です。」
門番に聞かれて俺は簡単に答える。
「そうか一応ギルドカードを確認させてもらってもいいかな?」
そう言われたのでギルドカードを渡す。するとグラントの城下街でも使っていた水晶のようなものを俺のギルドカードに近づけて見ている。その水晶は青く光っただけだ。
「ありがとう。」
門番はそう言って俺にカードを返してくれた。
それから野盗達に近づいて行って持っていた水晶を野盗にかざした。すると水晶は赤く光った。それを5人に繰り返す。全員を調べ終えたようで俺のとことに戻ってきて言う。
「あいつらが犯罪者であることは確認取たよ。」
あの魔法具でそんなことわかるのか。そう言えば門は犯罪者を街に入れない為にもあるって言ってたっけ。そりゃ門のとこで犯罪者かどうか確認できるようにしておかないと誰も入れないよね。みんながみんなギルドカード持ってる訳じゃないし。
「それでどうする?ギルドの人間をここに呼ぼうか?」
「そんなこと出来るんですか?」
「あぁ、出来るよ。ギルドまで連れていくのは大変だろうし先に話を通した方がいいだろう。」
「ではお願いします。」
門番の人にお願いすると誰かを呼んで言付けを頼んだみたいだ。
ここまで引き取りに来てくれるのならありがたい。少し待つように言われたので邪魔にならないところに移動して待つこと数分。冒険者の一団と思われる数人の男たちがやってきた。
「君たちが話にあった野盗を捕まえてくれた冒険者かな?」
先頭に立っていた男が俺達に聞いてきた。ギルドの人なのかな。
こげ茶色の短めの髪をした少し優しそうな顔をしてる。しかし身体はかなりのムッキムキの様で袖から見える腕が凄い。
「そうです、この縄で縛っている5人です。後向こうの馬は野盗が乗っていたものです。」
俺が代表して答える。
「そうか、こちらで引き受けるけど馬はどうする?必要ないならギルドで買い取るが。」
「俺達に馬は必要ないのでお願いします。」
うん、俺は馬乗ったことないしな。その気になればスキルを使ったら乗れると思うんだが餌代やら馬房代などランニングコストがかかる。特に大きな荷物を運んで旅してる訳でもないしな。
「じゃあ俺達はギルドに行くがこいつらの事を少し調べたいし、そうだな。夕方辺りにギルドに顔を出してもらえるかな?それまでには報奨金も用意しておくようにするよ。」
「わかりました。」
俺はギルドの人に答える。
向こうではガイとブランがそれぞれ馬と野盗をギルドの人に渡している様だった。
「キース?お前キースだろ、こんなとこで何やってるんだ?」
目の前のギルドの人が声を掛けた。
声を掛けた方を俺も見てみると、顔を手で隠し背中を向けたキースがいた。
しかしバレてしまったので仕方ない感じで顔から手を放し、こちらを向き照れた笑みを浮かべていた。
「何やってるって、別に俺は・・・何もしてないっすよ。」
いや、その話し方どう考えても怪しいだろう、自分で気付いてないのか。
「君たちの仲間か?」
俺がジト目でキースの事を見ていたらギルドの人に言われた。
「いえ、全く関係のない人です。」
俺は即答した。
「だったらあいつには気を付けた方がいいぞ。」
「何かしたんですか?」
「冒険者としてはそれなりで、悪いやつではないんだがな・・・女癖が最悪なんだ。」
あぁ。
「女がいるパーティに入っては口説きまくって、パーティじゃなくても口説きまくって、ギルドの受付にも声を掛け、街中の綺麗だと言われる女性にも片っ端から声を掛けてるな。成功してるかどうかは知らんが大分問題になって自分のパーティから追い出された。」
そうか、いるよね。女癖が悪い奴って。それでパーティ追い出されるって相当だと思うけどな。それで野盗になるところまで考えるくらいなら男好きになったらよかったのに。冒険者なんてほとんど男なんだからウハウハだと思うけどな。
いや、今俺はウハウハか?ん~、逆に悶々とする方が多いじゃないか?難しいところだな。勧めるのはやめておこう。
「だから君たちも注意した方がいいぞ。」
「わかりました。」
俺はそう答えておいた。
しかしもう付きまとわれています。注意した方がいいならこいつも一緒に連れていって下さいお願いします。
そんなことを思ったが口には出せない。
そんなことを言ってギルドの人たちは去っていった。
とりあえず後ろにいるやつは気にしないで夕方まで時間が空いたし街の中を散策するとしよう。
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