男気
「いや~、違うんですよ。別の俺はやりたくてやってたわけじゃないんっすよ。」
そう言うのは俺達の目の前で正座をして縄でぐるぐる巻きにしているキースだ。
あの後野盗やキースを縄でふん縛ってこれからどうするかを考えていた時だ。
割と早めに気が付いたキースが俺達に言いたいことがあるからと言ってきたので聞いている。
「俺もね、野盗なんてやるつもりはなかったすよ。
元々冒険者やってたんですけど色々あってパーティから追い出されてどうしようかと思ってたんです。それで街道歩いてたらこいつらに絡まれたんす。んで俺がちょっとばかり懲らしめてやったら「俺達の親分になって下さい」とか言われちゃって。
俺って昔から頼まれると断れない性格っていうか性分っていうか、それに冒険者業も難しくなったから悩んでたんす。それで物は試し、今回ちょっとさわりで親分やってみて上手くいったらこのまま野盗やるのもいいかなって思ってたんすけど。
まさか初めてでこんなに強い冒険者の方と出くわすとは思ってなかったんですよ。
だから俺はまだ野盗じゃないんです。未遂、未遂なんっすよ。だから勘弁してもらえないっすか?」
とキースはペラペラしゃべる。
確かに俺が見たステータスの称号の欄には野盗とか犯罪を犯したような人が持つ称号がなかった。だから初めステータスを見た時に疑問に思ったんだ。
「こういう場合はどうしたらいいんだ?」
俺はブランに聞いてみた。
「どうじゃろうな、わしもそんな場面に出会ったことがないしの。野盗を殺しても罪にはならんがまだ野盗じゃないものを殺すとこちらが罪に問われるかもしれんのう。ただ殺さなければ大丈夫じゃよ。喧嘩とかもあるし、死なない程度の怪我を負わせても問題ない。」
なるほど。死ぬ寸前まで痛めつけて魔法で回復してまた痛めつけるという無限ループは問題ないのか。ってそんなことするつもりはない。どんな拷問だよ。1人ノリ突っ込みはいいとして。
俺達の話を聞いてキースは青い顔してる。
「そう言えばあなた達はどうしたいですか?」
忘れていたが俺は馬車の人を助けに来たんだ。依頼を受けたわけじゃないけど一応聞いておく。
「いえ、私共は何も。助けて頂いただけですし。しかしお礼は本当に何もしなくてもよろしいんですか?」
男性が聞いてきた。ホントに依頼受けたわけでもないし、こっちから乱入して勝手に助けてお礼よこせっていうのもどうかと思ったのでお礼は必要ないと伝えていた。しかし馬車の2人は青い顔したままだった。こんな状況だと仕方ないよな。縄で縛ったと言っても近くに野盗いるわけだし。
「わかりました。ではこの場は私たちに任せて行って頂いてもいいですよ。」
なんだか可哀想にだったんでそう伝えると、お礼を述べそそくさと馬車は街の方に向かって走っていった。
それを見送ってどうしようかホントに悩む。
「とりあえずこやつらをまとめて街に連れていって冒険者ギルドに引き渡せばいいじゃろう。幸いに街も近いことじゃしそう手間でもないじゃろう。」
ブランがそう言った。
話を聞くと冒険者ギルドに盗賊や野党などの犯罪者を連れていくと報奨金を貰えるらしい。盗賊の討伐の依頼などもあるギルドがそう言うことしているとのこと。知らなかった。
犯罪を起こしたものが行きつく末は基本奴隷になるか死かだけだ。大きな罪を起こせば問答無用で死が与えられる。それ以外はほとんどが奴隷になる。奴隷契約を貸すと行動を縛れるようになるからだろう。ただ大きな街ぐらいじゃないと【刻印術】のスキルを持ってる者がいないのでそうそう奴隷契約なんてできない。そこで腕っぷしの強いものが集まる冒険者ギルドで一旦預かるんだろう。それから大きな街に連れていって奴隷にするみたいだ。
じゃあこの5人はそうしよう。ただもう1人をどうするかなんだよな。
そう思ってキースの顔を見る。
キースは俺が何を考えてるのかわかってるのかとびっきりの笑顔で俺のことを見ていた。
ん~、嫌いな笑顔じゃないんだけどな。
俺は仕方なくキースの後ろに回って縄を解く。
「これからは悪いことをしないようにね。」
そう言うとキースはキョトンとした顔をしていた。
「えっ?いいんすか?」
「未遂だしね。俺達も特に何かされた訳じゃないし、恨みがある訳じゃない。だから何もしないよ。まぁ部下の奴を助けたいとかなら別だけどね。」
驚きながら聞くキースに答えた。
「【岩の弾】」
俺がそう唱えると、バレーボール大の岩の弾が近くの木に当たりなかなかの太さのあった幹をへし折る。
「ただし今度は容赦はしないからそのつもりで。
後そっちの5人は街まで一緒に行ってもらう。逃げようとしたら容赦なく魔法ぶち当てるので死ぬのを覚悟してほしい。」
俺はそう言ってキースと、後ろで青い顔で震えている野盗たちに言った。
それから野盗達を1本のロープで繋いだ。
そのロープはブランに引いてもらうことにした。
後、実は盗賊が3頭の馬を持っていた。馬車をここへ誘導するときにも乗っていたんだろう。どうしようかと思ったがガイが近衛兵の時に馬も乗っていたこともあり、馬の扱いが分かるようでまとめて街まで連れてきてくれるとのことだった。
いざ街へ向かおうと思ったらキースが俺達の前に立ちはだかった。
野盗達が「親分っ」と少し感激した感じで言った。
ふむ、かなわないと思っても一度手下になった人間は助けようと思うのか。殊勝なことだとは思うけど流石に野盗を見逃すわけにもいかないしな。
そう思っていたらキースは俺達の前で土下座した。
「俺をパーティに入れて下さい。」
キースが土下座しながら大きな声で言った。
周りの空気が固まる。
「その強さと、寛大な心に惚れ込みました。俺を仲間にして下さい。」
キースは顔を上げて俺のことを見た。
いや、あの、野盗の人たち物凄い白い目で見てますけど。しかしそんな目で見られても当のキースは気にしない様だ。
「無理。」
俺は一言でばっさり断る。
「えぇ、何でですか?」
「いや、冒険者するのが難しいと思って野盗をやろうなんて思う奴を信用出来る訳ないでしょ。」
「それは、まぁ、そうなんすけど。皆さんとなら俺もちゃんと冒険者としてやっていけるかなって思うんすよ。」
「そんなことを思われても俺達には関係ない。俺達が信用できない人間を仲間にすることは出来ないって言ってるだ。」
「じゃあ、信用してもらえるんだったらなんだってします。」
「なんだってっていうんだったら俺と奴隷契約して奴隷になれるのか?」
「それは・・・、流石に・・・。」
「俺も流石にそれは無理を言ってると思うよ。でもそれぐらいの覚悟がないんじゃ俺は仲間にしようと思わない。」
俺には色々と秘密があるんだ。信用できる人間しか仲間にはしたくない。でも俺はもうガイとブランの奴隷契約は解除してもいいと思ってる。2人にそのことを告げると奴隷契約してた方が強くなれるからという理由で断られてしまった。そうだよな、一か月位一緒にいただけなのに普通に修練して過ごす数年分、もしかしたら数十年分は強くなってるもんな。
「そういう訳だから、仲間にするのは無理だからあきらめてくれ。」
「じゃあ俺が信用してもらえるまで勝手について行くっす。」
俺がもう一度断るとキースはそんなこと言ってきた。そう言われてもな。勝手についてくるって言われると仲間にしてくれって言われてる訳じゃないから断るのも違うし。そこまで言ってくる奴をぶっ飛ばすのもどうかと思う。
ガイとブランを見ると2人も難しい顔していた。
もう考えるのも面倒になってきた。
「こんなとこにずっといても仕方ないし街に向かおう。」
俺はガイとブランに言った。
「はい。」
一番に答えたのはキースだった。
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