第二のイベント
旅も順調に進み、村を出て今日普通に行けばそこそこ大きな街に着けるところまでこれた。
色々とやることいっぱいあったし、歩くスピードも速のであっという間だった。
街に着いたら何日かくらいは滞在してもいいか思った。先日の盗賊の溜め込んだものをありがたく頂戴したので懐具合は寂しくなかった。
そんな街に着いてからの予定を考えていたらまたまたイベントが起きそうな気配がした。
旅をしながら俺は【索敵】を絶えず使っている。モンスターなんかの襲撃があったら嫌だったのと、スキルを身につけたかったからだ。
その【索敵】に不穏な影が見えた。
距離はここから800m位いったところ。少し街道を離れたところに人の気配があった。しかも10人位の人数、馬の気配もあった。俺は気配察知スキルで察知した気配の、心的状況も読み取れたりする。その気配のいくつかがかなり焦った様子だった。
【千里眼】のスキルを使ってその場を見てみる。
すると馬車が何人かの男に囲まれているところが見えた。馬車を取り囲んでいる男達は剣などで武装していた。
野盗か。どうするか。多分俺達はこのまま街道を進めばその場面に出くわすことはない。その一団は少し林になったところにいた。多分野盗に追い立てられてそこまで誘導されたんだろう。
馬車の業者の席には青い顔の若い男がいた。気になったので【千里眼】で馬車の中を見ると若い女性も載っていた。夫婦なんだろうか。
このまま無視して街に向かうか助けに行くかなんだけどな。
俺はガイとブランの顔を見た。この2人にこのことを言ったら多分また俺が決めたらいいって言ってくれるんだろう。俺の自主性を尊重してくれているのはありがたいが息子の様に思われていたらどうしよう。いや、パパか・・・、悪くない。もしくは親父かとうちゃんっていうのもありだな。
違う違うそんな事じゃなくてな。
2人を見ると不思議そうな顔で俺を見ていた。
「野盗に襲われてる人がいるみたいなんだ、助けに行こうと思う。」
俺の言葉に2人は納得顔で頷いた。
俺達は全力で走った。俺達の全力であればすぐに着けるだろう。一番スピードがある俺が先行する。道案内もしないといけないしな。一番遅いブランが離れすぎない速さで走る。でも下手すりゃ馬よりも早いんじゃないかこれ。
「別に命まで取ろうとは思っちゃいねえ。出すもんだして貰えりゃーな。」
野党の声が聞こえるとこまで来た。
俺は爆走したまま野党の1人にドロップキックをかましてやった。
俺のキックを受けて吹っ飛ばされる男、10m程転がって木にぶつかって止まる。
その光景に呆気にとられる皆さん。
「なっ、なんだ、てめぇは。」
野党の一人が声を上げる。こうやって聞くのはテンプレなんだろうか。まぁいきなり人が走ってきてそいつがドロップキックかまして来たら「何だ?」とは俺も言うと思う。
「旅の冒険者です。」
俺はそう言いながらちゃっかり【鑑定眼】を使って野党のステータスの確認をする。ここにも大した奴はいないな。考えてみたらすごく強いやつなら野盗とかやってる訳ないか。この世界には冒険者という仕事があるからだ。強ければ冒険者になれば金も地位も手に入る。犯罪に手を染めると行きつく先は奴隷になるか死刑ぐらいしかない。この世界にはちゃんとした裁判所も刑務所もないんだから。貴族裁判とか宗教裁判はあるらしいけどね。
「旅の冒険者がいきなり何しやがる。」
「あなた達ってどう考えても野盗でしょ?だから蹴りを入れてみました。」
「どういう了見だそりゃ。」
「う~ん、端的にいれば懲らしめに来たってとこですかね。」
そんな話をしていたらブランもこの場に合流した。
野党の数は五人、ただその内1人は俺が吹っ飛ばして向こうで伸びてる。後4人。でも近くにもう1つ気配がある。伏兵かも知れないので注意しておこう。
「とりあえず痛めつける程度でね、殺さない程度にしておこう。」
そうガイとブランに伝える。
「てめぇなめんじゃねぇぞ。」
野党が怒りをあらわにして怒鳴る。別に舐めてない、挑発してるだけだ。この場には一般人もいるし俺達に意識を向けたかっただけだ。
「お前らやっちまえ。」
そう言って俺達に襲い掛かってくる野盗。
俺は一番近くにいたやつの袖と襟の部分を掴んで背負い投げを決めた。久しぶりに柔道技出したな。投げた野盗は地面に叩きつけられる。一応は手加減はしてやったけど受け身も取れてないし、下は地面だしで投げられた奴は体を丸めて呻いている。しばらく立ち上がれもしないだろう。
他はと思ってみるとガイが2人相手に突きや蹴りを繰り出して野盗二人を沈めた。元近衛兵だけあって対人戦は御手の物みたいだ。
ブランの方は体を丸めて肩から野盗にぶちかましを仕掛けた。ブランの身体が野党の腹にめり込んで野盗と一緒に吹っ飛んでいく。数メートルくらい野盗を吹っ飛ばした。横たわる野党の体の上からブランが離れる。パワーと防御力はあるから全くの無傷だ。今更こんなことで傷を負うとは思えないけど。
さて一応終わったかな。そう言えばもう1つ気配があったことを思い出した。遠距離攻撃出来るやつを配置していたのかと思ってが違うみたいだ。
「親分、親分ー!」
俺が投げ飛ばしたやつがかすれた声で何とか叫ぶ。残ってたのって親分なのか。
すると林の中から1人の男が出てきた。
「うちの奴が世話になったようだな。」
そう言って出てきた男は年の頃なら30代前半。短めのオレンジの髪をしている。もみあげから顎まで髭を生やしていていわゆるラウンド髭だな。口髭もそのラウンド髭に繋がっている。男っぽい顔しているが強面とも違う感じだな。右頬に傷があった。体形はブランに似てる。筋肉はあるんだろうけどその上に脂肪もついてる感じだ。服装は軽装で、手には短剣を持っている。
なんか
「お仕事は何されてるんですか?」
「野盗の頭だよ。」
「あっ、わっかるぅー。」
そんな感じである。
う~ん、見た目的にはタイプはタイプなんだけど野党か~と思って一応【鑑定眼】でステータスを見てみた。あれ?これって。
「てめぇら、よくも俺の可愛い子分達を可愛がってくれたな。
俺はキース、人呼んで疾風のキース様だ!
俺の短剣捌きは並みの奴じゃ見切れやしない。ことが終わった時に気付くんだ。自分は切り刻まれていたってな。
そして華麗な身のこなし。並みの奴じゃ俺に触れることさえかなわない。
おっと、遠くにいるからって安心してるんじゃーねぇぜ。俺の投げナイフからは逃れられん。」
俺が考えてる間に何やら口上が始まった。しかし野党が自分から名乗ったら駄目だろう。ステータス見たから知ってるけどホントの名前だし。あれかな?自分の名前を聞いた人間を生きては返さないとかそういう事かな。
「それからな・・・。」
「【岩の弾】」
キースがまた何か言おうとしていたからソフトボール大の岩の弾を顔面に当てて黙らせた。
顔面に岩の弾の直撃を受けてキースはそのまま後ろにバタンと倒れた。
はぁ、これで一応は落ち着いたかな。
お読み下ってありがとうございます。
新キャラ登場です。




