大人の対応
俺は盗賊のアジトの中を探し回った。【索敵】があるから隠し部屋はすぐに分かった。リーダー格の奴が土の魔法で壁を作って隠してたみたいだけど俺には通用しない。土の壁をぶち壊して中に入るとなかなかの金品があった。片っ端から【倉庫持ち】の中に入れていった。この世界では盗賊の持っていたものは退治した者が全て持っていっていいらしい。だから遠慮はしない。他にも食料庫とかもすべて漁ってやった。
俺はアジトの中のめぼしいものを全て持って出た。そしてアジトから出てから土魔法で洞窟の入口を潰した。また新しい盗賊が住み着いても困るしな。
そうして俺は村へ帰ることにした。
村に帰ると入口にガイとブランが待っていてくれた。
「ただいま。」
「「おかえり(なさい)。」」
笑顔で声を掛けると笑顔で返してくれた。
それから三人で村長の家に行ったら村のほとんどの人がいた。
村長からやエミルの親からはとても感謝された。エミルもいたが疲れてるだろし時間も夜遅くになったので休むように言った。それと一緒に他の人も解散してもらうように言った。
それから俺達は村長の家で晩飯をご馳走になり一夜を過ごした。
明けて次の日俺達は村から出て旅を続けようと村長の家から出た。
すると村人全員が俺達の事を送り出す為に待っていた。
気恥ずかしい気がしたが断るのも悪い気がしたのでそのまま村の入口へ全員で移動する。
「本当にありがとうにありがとうございました。」
エミルが俺達の前まで来て頭を下げてそう言った。
「いや、依頼されたことをしたまでですから。」
とりあえず笑って答えておいた。
「お兄ちゃん。」
エミルと入れ替わる様にココが俺の方に来た。
「お姉ちゃんを助けてくれてありがとございました。」
ニコリと計算された笑顔で俺の目を見て言ってくる。あざとさが気になる。
しかし今俺はそれよりも気になることがある。
「あの、エミルの隣に立っているのは?」
そう言ってココに聞く。
エミルの隣には髪が短くツンツンの筋肉が結構ある強面の男が立っていた。
「えっ?あぁ、はは~ん。残念でした、あの人はお姉ちゃんの婚約者のデビットさんよ。
昨日はお姉ちゃんを助けに行くって聞かなくて家に閉じ込められていたの。
24年間彼女いなくてお姉ちゃんが初めて付き合った人なんだよ。子供の頃からの知り合いなんだけどシャイで奥手だから言えなかったみたい。お姉ちゃんが付き合うって言った時私は顔が怖いから嫌だったんだけどお姉ちゃんは笑った顔は少年みたいに無邪気よって言って、私も一緒に居たら笑ってるところを見てホントだって思ったわ。
だからお姉ちゃんを狙っても無理だと思うな。」
おませなココがペラペラとしゃべって説明してくれた。
しかし何を勘違いしているかわからないが、そうじゃない。そうじゃないんだ!
まさか俺が考えていた人物がこうして現れるとは思わなかった。
なぜ盗賊はデビットの方をさらってくれなかったんだ。
「落ち込まないでね。でも、私だったら可能性あるかもよ。」
呆然としている俺にココが言った。
顔を少し赤らめて俺をしたから覗き込んでいる。
いや、無理。無理だから。ここで「10年後も気持ちが変わらなかったら考えておくよ」みたいな男前の台詞ははかないからな。
「えぇ~と、村の中に好きな人はいないの?」
「いないわ。こんな寂れた村で暮らしている、盗賊に怯えて何もできないような甲斐性なしの男ばっかりだもの。」
うわ~、えぐってくるね。うん、そう素直に言葉にする子って嫌いじゃないよ。将来が別の意味で楽しみになるし。
ただ物の表現には色々あることを伝えておいた。小さい頃からそんなことを言っているとロクな大人になれない。
「君だったらきっと素敵な人を見付けて幸せになるよ。」
と当たり障りのないことをココに言っておいた。ごめん、これが大人の対応ってやつなんだ。覚えておいて。
「俺達はもう行くよ。皆さんお元気で。」
俺達はそう言って足早に村から出て行った。
―ダイゴ達が去った村
ココ「お父さん、私お姉ちゃんを助けてくれた冒険者の人と結婚するわ。」
父「何を馬鹿なことを。この村にもいい奴はいっぱいいるだろう?ほらよく一緒にいるゴメスとか。」
ココ「いやよ、この村の男なんて〇〇〇〇で△△△△△△△△の上□□□□の人ばっかりなんだもん。」
父「どこでそんな言葉憶えたー!」
ココ「その冒険者さんよ。」
父「絶対にそんなやつには嫁にやらん。」
ダイゴの作戦は成功したらしいです。




