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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
いざ世界へ
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暗殺者

 俺は大きな扉の前にきている。

 盗賊のアジトの残りの全員が、今俺の前にある扉の向こうにいるのが【索敵(レーダ―)】で確認できた。俺はスキルを付け替えて覚悟を決めて扉を開けた。



 中に入ると結構な広さがある部屋だった。小ホールと言ってもいいほどの広さだった。

 その中で30人近くの盗賊が談笑し手に持った酒を飲んでいた。

 1人が俺に気付く。



「あん?てめぇ何者(なにもん)だ?」


「旅の冒険者です。」



 俺は空けた扉を閉めながら言った。



「冒険者だと?ここに迷い込んだのか?って見張りはどうした?」



 一番奥で豪勢な椅子に座っている髭面の男が聞いてきた。こいつがリーダーかな。



「どうしたって、始末しました。」



 努めて普通の事の様に俺は言った。

 するとこの場にいた盗賊全員が色めき立った。みんな立ち上がり俺のことを睨みつつ周りを取り囲んでいく。



「あっ、そうそう。ちょっとお聞きしたいことがあるんですがよろしいですか?」


「なんだ?」



 俺は質問する。

 リーダー格の奴が座ってた椅子から立ち上がり剣を抜きながらそれに答えた。周りの男達もすでに剣やらナイフを手に持っている。



「今日村から1人女性さらっていきましたよね?

 その女性をどうするつもりだったんですか?」


「あん?おめぇあれか。村の奴にその女助けて来いっていわれた(くち)か?

 いいだろう、教えてやる。

 俺達は盗賊だ、決まってるじゃねぇか。俺達が可愛がってやった後に奴隷商に売っぱらうんだよ。」



 リーダー格の男は下卑(げひ)た笑みを浮かべそう言った。

 だろうとは思ったよ。これがこの世界では当たり前なのかな。

 もういいか。俺はそう思った。

 周りの男達はリーダーの声が掛かればすぐにでも俺に飛び掛かれる準備が整ったようだ。

 奇遇だな、俺もとっくに準備は終わってる。

 会話をしてる間に【鑑定眼(アナライズ・アイ)】を使って全員のステータスを見た。大したスキルを持ってるやつはいなかった。全員に盗賊の称号があるのも確認した。



「お前1人か?1人で俺たち全員を相手にできると思ってんのか?」


「思ってるよ。思ってなきゃ1人でこんなとこに来るわけないだろ。」


「てめぇ。」



 俺の言った言葉に周りの殺気が一段と強くなった。



「でも相手をするというと違うかな。俺がただ蹂躙(じゅうりん)するだけだよ。」



 そう言って俺が手を差し出すと俺の周りには100本に近い数の針状の【岩の弾(ロックバレット)】が浮かんでいた。盗賊と会話している間にスキル【隠匿(インビジブル」)】を使って隠しながら作っておいた。そして今【隠匿】のスキルを解いたから一瞬にして現れたように見えたんだ。

 俺は前にした手を振るう。すると待機させていた【岩の弾】が放たれた。


 放たれた【岩の弾】は部屋の中の色々な物にドドドドッというすごい音を立てながら突き刺さり、壊していく。椅子をぶち壊し、木のテーブルを突き抜け、もちろん俺の周りにいた盗賊達にも容赦なくその牙を立てていく。悲鳴と物が砕ける音が部屋にこだまする。しばらくして悲鳴が無くなったので俺は【岩の弾】を放つのを止めた。

 部屋の中は凄い惨状になっていた。部屋のほとんどの物は原型を留めていない。【岩の弾】をくらった盗賊のほとんどが絶命していたが何人かは息があるようでうめき声が聞こえた。

 そして目の前を見るをさっきまでリーダー格の男がいるところに土の壁があった。

 リーダー格の男はスキルに土魔法のスキルがあったはずだ。こいつがこのアジトを作ったんだろう。そして俺の攻撃に合わせて【土の壁(アースウォール)】を使って防御したんだ。



「何なんだよ、お前。」



 壁の向こうから声が聞こえた。リーダー格の男は無事の様だ。



「さっき言いましたよね?旅の冒険者ですよ。」


「Aランクか?それともSランクなのか?」


「ランクだったらEですよ。」


「そんな訳ねぇだろう。Eランクの奴にこんなこと出来る訳がねぇ。」



 そう言われても、本当なんだからしょうがない。



「待て、待ってくれ。俺達の蓄え全部やるから見逃してくれねぇか?」



 男が言った。



「いや、それだったらあなたを殺した後いくらでもこのアジトを探して持って帰りますよ。」


「頼む、何でもう事を聞くから命だけは助けてくれ。」



 男はそう言って土の壁の後ろから出てきて俺に土下座をする。



「何でもですか?じゃあ女性をさらった村で奴隷にでもなってもらいましょうか。そして死ぬまで真面目に働いて下さい。」


「あぁ、分かったそれでいい。」



 男はそう言って立ち上がって近づいてくる。



「ちなみに奴隷契約は今すぐしますよ。俺【刻印術(ルールメイカー)】のスキル持ってるから。隙を見て逃げようなんてさせませんよ。」



 そう俺が告げると男の表情が変わった。奴隷契約なんて大きい街に出ないと出来ないと思ってんだろう、そしてそれまでになんとかして逃げる気だったに違いない。



「誰が奴隷になんてなるかよ。」



 そう言って男は懐に隠し持っていたナイフを俺目掛けて投げた。

 しかし俺は慌てず【影移動(シャドームーブ)】を使って瞬時に男の後ろに回る。

 投げられたナイフは空を切り壁に当たって落ちた。



「人をさらって奴隷にしようとしてたのに、自分がそうなりそうだったら簡単に嘘ついて殺そうとするんですね。」


 

 俺は男にそう言って背中にナイフを突き立てた。ちゃんと肋骨の間を抜けて心臓に到達するように刺した。ナイフを抜くと男は前のめりに倒れた。まだ終わりじゃない。部屋にはまだ息のある盗賊がいる。俺は【気配察知】を使いその位置を確認して単語を口にする。



「【岩の槍(ロックスパイク)】」



 魔法が発動すると俺以外の部屋の気配がすべて消えた。



 終わったか。俺は少し不安になって【鑑定眼(アナライズ・アイ)】を使って自分の称号を見てみた。人殺しの称号はなかったが【暗殺者(サイレントキリング)】の称号が増えていた。



 やっぱ少しきついな。あれだけ決意して全部背負って前に行くって決めたけど重いな。

 本当はこの部屋に入る前に扉を開けた瞬間に中に魔法を叩き込むことを考えた。俺だったら多分部屋の中を跡形もなく焼き尽くしたり出来ただろう。しかしそれは何かが違うと思った。

 自分の見ていないところで魔法1つで大勢の命を奪う、それをしてしまったらこれからもずっとそうやって命を奪っていきそうな気がした。そうなったら俺は命を軽く感じてしまうと思う。そうなりたくはなかった。

 それと多分免罪符が欲しかったんじゃないかなとも思う。

 盗賊と話をしてどれだけ非道な事をしてきたか、どれだけ下種な人間かを知る。それでこんな人間だったら殺してしまっても仕方なかったよね、と思いたかったんじゃないかと思う。

 いくら自分でそう思いたくても自分の気持ちは自分が一番よくわかる。


 全部背負って行くなんて言ったけど心のどこかで、まだ自分が人を殺せるような人間だと思いたくなんだ。甘えなのかな。でも今はそう思っていても前に進もう。ここで立ち止まったままいたって誰も「君は悪くない」と言ってくれるわけじゃない。人を殺してでも前に進もうとする自分を受け入れるだけだ。

 それに早く村に帰らないとガイ達が心配するかもしれない。こんなウダウダ考えてる位なら村に帰ってガイ達にお帰り、と迎え入れられた方がよっぽどいい。

 そうと決めたらアジトの金品漁って帰るぞ。



 俺はそう切り替えてアジトの中を散策した。

お読み頂きありがとうございます。


ダイゴが大分揺れてます。

全部背負って前へ進む、と言ったものの悩んだり凹んだり。

でも「人を殺しました、平気でした」って人はなかなかいないと思ってます。

普通に生活してきた20歳の男子だったらこれぐらいは悩むだろうと思い書いてます。

多分これからもずっと悩み続けるんじゃないかと思うので見守って貰えるとありがたいです。

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