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偽装

 さて俺の新天地での生活が始まった。



 俺に与えられた部屋は客間として使われている部屋だった。

 地方の貴族が国王に会いに来た時に使ったりするらしいがしばらく使う予定がないとのことでその部屋を使わせて貰っている。

 貴族が使ったりするとあって部屋の中の調度品などは高級なものが使われているし、部屋の中に風呂や、トイレなどもついていた。



 その部屋でこちらの世界の事を教わっていたりする。教えてくれているのは執事長のハインツさんだった。



 ハインツさんはロマンスグレーが似合うナイスミドルだった。

 若い頃はモテていたんだろうなと言った少し彫りの深い精悍な顔。背は俺より高く執事長だけあって姿勢もよく、所作も気品に満ちていた。



 そのハインツさんに俺はこの世界の成り立ちや日常生活、これから旅に出るにあたりの注意点、スキル、称号の詳細などを聞いていた。

 時間は有限であり、俺には一月しかないんだから。



 なぜ俺がこんな生活を始めたかなんだが。

そもそもなぜ俺が勇者ではないという事になっているか、答えは簡単である。

 スキルを使ったという事だ。



 俺の使っているスキルは【偽装イミテーション】というスキルだ。

 このスキルは対象のありとあらゆる事柄を隠蔽し、偽の情報を作り出せる。

 召喚された部屋から出る前に俺はこのスキルを発動した。その時から俺のスキルやステータスなんかは、全て俺の設定した通りになっている。だからあの時魔法具には勇者という項目がなかったんだ。

 後見た目に関しても少しいじっている。

 念の為というやつだ。

 

 これから旅に出る予定だし何があるかわからない。


 こっちの世界は写真なんてなさそうだし見た目とか見たことある人ぐらいしかわからないだろうと思って外見も変えてみている。

 実際に変わるわけではないが、周りの認識が変わるという感じになっている様だ。

顔は変えている、ただ体形は変えると服のサイズがおかしなことになる気がしたので変えていない。

 召喚された部屋は暗かったし、そんなに顔なんてじろじろ見てもいなかっただろうから顔を変えた後も特に変な目で見られていないのでバレてはいないだろう。



 今は人の良さそうなたれ目の顔にしている。

 しかし本当の顔は髪はベリーショート、眉は太くその下に割と小さめの瞳がある。鼻は少し大きくて口もそこそこ大き目。口と顎に髭がある。男っぽさ溢れる顔だが小さな目がどこか子犬の様な雰囲気がすると言われたことがある。ガタイはいい方だ。昔から柔道や、ラグビーをやってきた。175cm、95kg。脂肪もあるがそれ以上にトレーニングして筋肉も付けた。



 そうした上で俺はこの生活を選んだ。

 俺はこのまま城にいて勇者として育てられ、魔王と戦おうとは思えなかったからだ。

 人の都合も考えず勝手に召喚して戦わせようとすることに賛同できないし、それよりもこの世界を自分で見て回ってみたかったからだ。

 城にいるよりも大変な事が色々とあるだろうが俺には神から貰ったスキルがある。このスキルを使えばそんなに苦労することがないんじゃないかと思っている。まぁそれ以外にもこの城を出ていきたい訳があるんだが。



「ここまではよろしいですか?」



 そんなことを考えているとハインツさんから声がかかった。

 いかんいかん、今はハインツさんにこの世界の事を色々教えてもらっているところだ。



「ぼーっとしてすいません。なかなか理解するのが難しくて。」



俺は苦笑しながらハインツさんに謝る。



「いえ、あなたの置かれている状況を考えれば仕方がないことだと思っております。

 しかし時間はあまりありませんので私としても出来る限りお伝えしたいと思っております。」



 ハインツさんからのやさしい言葉が身に染みる。



「はい、ありがとうございます。では続きをお願いします。」



 そう言って俺は勉強を再開する。




 ハインツさんは物凄く賢い人だった。いろんな知識を持ち、伝え方も上手だった。

俺の理解力に合わせいろんな話をしてくれ、わからないことはわかるまで教えてくれた。



 まずこの世界の事。

名前は【レイガス】と言った。そしてこの世界に3つの大きな大陸があるとの事。

 1つがが俺が今いる人族が多く住まう大地【アルメデ】。

 2つ目は主に獣人や精霊、霊獣、獣が住まう緑の大地【ウィクルーア】。

 最後に未開の土地、魔族や魔王がいると言われている終末の大地【クリプス】。

 その大地を分ける海から成り立っているらしい。



 やっぱりこの世界には獣人とかいるのか。まさにファンタジー。絶対に会ってみたい。

 元の世界にいた時にはゲームや、ファンタジー小説それに付随する漫画やアニメもよく見たりしていた。

 見た目に反してどちらかというとオタク気質だったんだと思う。だからこの世界に来た時には不安よりも期待の方が大きかったかもしれない。



 それからこの世界を生きていくにあたっての知識も教えてくれた。

 俺は一応は元の世界への戻り方を探して旅をするという事になっている。そうした場合はこの世界では冒険者として生きていくことが良いとのこと。

 やっぱりあるんだな、冒険者業。

 人を害するモンスターがいたりして警察はない為冒険者達が対処するんだと。仕事の中身は冒険者ギルドに登録してから聞いてほしいとのことだった。



 そしてスキルと称号のことも聞いた。

 ちなみにハインツさんのスキルを聞いてみると【胆力】とのこと。ちょっとしたことでは動じないらしい。

 生まれ持ってたスキルがそれってどんな子供時代を過ごしたんだろう。そう思ったら親も執事で城勤めでずっと住み込みで城で働いていたんだって。



 生まれ持ってくるスキルにはある一定の法則の様なものがあるらしい。

 親と同じスキルを引き継いだり、両親の併せ持ったスキルだったり。だから貴族や王族は世襲制が殆どの様だ。王や貴族に適したスキルが引き継がれることが良くあるからだと。

 他のスキルが欲しい場合は神様に祈ったりするらしい。〇〇な子が生まれてきます様にって。聞き届けてくれた場合は親には関係ないスキルで生まれてくる子もいるとのこと。その為結構この世界では神を真剣に信奉している。まぁ人と一緒に暮らしてる神様がいるみたいだし直接願い事かなえてくれそうだけどな。稀に突然変異の様に凄いスキルを持って生まれてくる子供もいるそうだ。その子は【神子かみこ】と言われているとのこと。



 そういえばなぜ言葉が通じるかという事なんだが俺達勇者が持っていた【世界順応】と言うスキルのおかげだった。そのスキルは降り立った世界の言語や文字が勝手に理解できるというスキルだった。これのおかげで読み書き、会話については問題ない。

 勇者と言う称号に対して勝手につくスキルの様で自動的に付与されたらしい。



 後称号と言うのがこれまでの行動や、精神的志向などで自動付与されるものらしい。それによって新しいスキルを得たりすることもあるとのこと。

 それ以外にも例えば【勇者】と言う称号には先程言った世界順応と言うスキルが付く以外に成長度が上がる、成長値補正、耐魔族なんて言う見えないスキルの様なものがついている。

 だから勇者はこの世界の人よりも早く成長し、そして考えられないぐらい強くなるらしい。俺も持ってるんだけどね、スキルで他の人にはわからないようにしてるけど無くなったりしまったわけではないので俺も恩恵は受けることが出来る。



 しかしなぜ勇者の称号がないのに俺には世界順応のスキルを持ってるのかって話になった。それはたまたまだろうってことになったんだけどね。

 俺達に使われた魔法具は伝説級と呼ばれるようなものだったようでそれが勇者ではないと判定されているので疑う者はいなかった。

 【偽装(イミテーション)】のスキルを見破られる可能性があったが、このスキルを見破るにはかなり高ランクのスキルじゃないと不可能の様でこの城の中にはいなかった。魔法具も見破る為の魔法具でもない。あくまでその人物のステータスを表示するだけだ。

 異世界から来た人間が、勇者じゃないって偽るとも思ってないんだろう。



 スキルと称号のことは聞いたが加護のことは聞かなかった。

 俺は勇者ではなく漂流者としてこの世界に来たことになっている。神とは会っていないはずだから下手に聞いてなぜ知っているとなっても、ややこしくなりそうなのでまた自分で調べてみようっと。


 後は戦う為の知識だ。

 冒険者をするとしてその場合にもどう考えても戦闘がある。

 モンスターを相手にしたり、もしかしたら魔族とやらを相手にしないといけなくなるかもしれない。そう言ったときにどうやって戦うかと言うことだ。



 端的には修練するしかないと言われた。

 剣や他の武器を使って戦うときにも、魔法を使って戦うにも全てにおいて修練を積むしかないとのこと。

 剣は素振りや組手をしたり、実際にモンスターを狩ったりを繰り返す。

 そうしてるうちに【剣術】と言うスキルを会得して何度も繰り返すびにレベルが上がっていくらしい。レベルの最大は10でそこまでのレベルにするにはかなりの鍛錬と時間を要するとのこと。

 しかし剣術は単純に剣の扱いの腕が上がるだけでいざ戦いになるとそれだけでは勝つことは難しい。相手の攻撃をよけたり受けたり、どんな攻撃が来るかもわからない。

 それに対処しないといけないので他のスキルも必要になる。



 魔法も弟子になって魔法の基礎を学ぶことから始まって勉強や修練を繰り返してやっと使えるようになる。

 魔法使いの子供がスキルを持って生まれてきてそのまま魔法使いになることが多いらしい。

 魔法の種類も簡単な属性魔法を操る【初級魔術】のスキルから1つの属性に特化した【炎魔法】など細かく分かれる。

 なかなか魔法を使えるようになるには長い道のりがありそうだ。

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