旅立ち
俺達は悠々と森の中を進んだ。【ブラッドグリズリー】を恐れてか近くに別のモンスターの姿はない。ついでに冒険者もいなかった。
だからすんなり森の中から抜けて街に戻ってこれた。
ギルドに到着する前に【倉庫持ち】から【ブラッドグリズリー】の頭を取り出す。流石にそのままの姿を持ち歩くのはどうかと思うので袋には包んでいる。
ギルドの扉をくぐりいつもの達成を報告する窓口にはいつものおっちゃんがいた。
「おう、毎度。」
このおっちゃんともこれで会えるの最後か。少し寂しいな。
「依頼達成の報告です。申し訳ないですがギルドマスターを呼んで頂いてもいいですか?」
俺の言葉に不思議そうな顔をする。俺達がギルドマスターの依頼を受けてたことを知らない様だ。だから俺はギルドカードを渡した。
おっちゃんは俺のギルドカードの依頼欄を見て目を丸くした。そして大声で「誰か、ギルドマスター呼んで来い。」と叫んだ。
その声を聞いて女性が急いで2階に上がっていった。物々しい雰囲気にギルド内にいた冒険者たちが俺達に注目していた。
しばらくして2階からギルドマスターのウェインが降りてきた。
「もう依頼こなしたのか?」
ウェインの顔は疑ってるような顔をして言った。
「えぇ、証拠もありますよ。」
俺はそう言ってブランから袋を受け取ってカウンターの上にドンと乗せた。そして袋の口を開けて中から【ブラッドグリズリー】の首を取り出してカウンターに出した。
まだ少し凍っていて、大きく口を開けて威嚇しているような表情の【ブラッドグリズリー】の首を見たギルド内に静寂が包まれる。
「ホントに【ブラッドグリズリー】だ。」
おっちゃんが呟き。それを境にギルド内が一気に騒がしくなる。
「どういうことだ?」「あいつから殺ったのか?」「でもこのギルドにBランクの冒険者っていなかったんだろ?」「いたたしても3人で倒せるのか?」
周りの冒険者達の声が聞こえる。
「依頼は達成したのでランクアップお願いしてもいいですか?」
俺は周りの喧騒を気に留めず静かな声で言った。
「あぁ、いいだろう。やってやれ。」
呆気に取られていたウェインがおっちゃんに向かって言った。
おっちゃんが奥に行き戻ってくる。渡されたカードを見るとギルドランクがちゃんとEになっていた。
「あんなレベルとスキルで【ブラッドグリズリー】は倒せないだろ。」
俺達のカードを見たおっちゃんがそう呟いていた。そりゃね、ギルドカードに書かれているレベルとスキルは偽装したものだからね。
「それで報酬は・・・。」
おっちゃんはそう言ってウェインの顔を見た。そう言えば報酬はランクアップ以外は聞いてなかった。
「金貨5枚だ。」
「5枚・・・いくらなんでも安すぎるんじゃ・・・。」
ウェインの言葉におっちゃんが答える。
Cランクの魔獣を倒して金貨5枚か、そんな金額だったら命がいくつあっても足りない。冒険者としてやっていける訳がない。完全に舐められてるな。
「わかりました、じゃあそれで結構です。」
俺は表情を変えずに答えた。内心かなりムカついているがもういい。これ以上こいつと関わってもいいことなさそうだ。言われたとおりにしてとっとと退散しよう。
ホントに分かってるのか、こいつ。
今この場には他の冒険者もいる。それなのにCランクの魔獣を倒しても金貨五枚しかやらないと言ったんだぞ。それを聞いた冒険者はこのギルドでは依頼を受けなくなるんじゃないか。まぁこのギルドから冒険者達が離れていっても俺は知らん。
「じゃあ俺達はこのまま旅に出るのでお世話になりました。」
おっちゃんから金貨を貰って挨拶をする。おっちゃん元気でね。アホな上司をもって大変だろうけど強く生きてね。
「まてお前ら、このギルドで働いていく気はないか?次からは依頼料も増やしてやる。」
ウェインに呼び止められる。何をいまさら言ってるんだろうか。そんな話に乗るわけないだろう。一昨日来やがれってんだ。
「すいません、俺達にはいかないといけないところがあるんです。それにEランクの冒険者なんて沢山このギルドにいらっしゃるじゃないですか。その方達に声を掛けて下さい。失礼します。」
俺はそう言ってギルドから出て行く。後ろからは「あいつがEランクだって?!」とかの驚く声が聞こえてくるがウェインからは何も言われなかった。
さぁ旅に出るか。
俺達は一旦泊まっていた宿に戻り金を支払い引き払った。
それから街の外に出ようと門に向かった。
大きな街だから近くの町まで乗り合い馬車は出ていたが今回は徒歩で移動することにした。ここから近くの大きな町までは1週間くらいの道のりで途中には村もいくつかあるみたいだ。野宿になってもいいし旅の初めだし一度歩いて移動してみたかった。ガイとブランも賛同してくれたのでまず近くの村まで歩いてみようと思う。
街の外に出てみるが1つ面倒なことがあるみたいだ。
ギルドから出て俺達の後を追ってくる気配があった。俺の気配察知を舐めるなよ。
これはあれか、ウェインの息のかかった冒険者が追ってきたりしてるのか?それとも単にEランクでブラッドグリズリーを倒した俺達が気になって取り入ろうとしている冒険者がいるのか。
何はともあれ捕まったら厄介そうなのでしばらく行先とは逆に進む。いくつかの気配が俺達の後を追ってきてるみたいだ。少し街から離れて周りに人がいないことを確認してから支援魔法を使って姿を消してやった。それから実際に進む方向へ歩いて行った。
俺達の後をつけていた気配は俺達の姿を見失ったのか焦った感じでうろうろしていた。俺の支援魔法で姿を消した俺達を補足しようなんて甘い。
しばらくはこのまま姿を消して進んでやろう。
こうして俺達はやっと旅に出ることが出来た。
はぁ、ほんとにやっとこさ旅に出させることが出来ました。
まさか最初の街で30話も書くとは思ってなかったです。
考えている話の構想からして内容の1割も話が進んでない。
このまま書き続けたら一体何話になるんだろうか。
力尽きて
―それから5年後。
俺は魔王と対峙していた。
みたいな展開にはしたくないな。




