表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
冒険への足掛かり
36/237

ブラッドグリズリー

 俺達は街から出て森へ向かっている。特に街で用意する物もなかったので直ぐに街を出た。しかし魔獣と戦うことになるとはな~。まだ最初の街から出てもないんだけど。



「今回は俺が久々に全力で戦ってみようかな~。」



 そんなことを歩きながら2人に言ってみた。最近は戦うとしてもEランクのモンスターばっかりでスキルを上げたりしたかったのでガイとブランに戦闘はほとんど任せていた。俺は支援魔法を使ったり、牽制して気を引いたりをずっとしていた。別に戦闘狂(バトルジャンキー)でもないけど今はこの溜まったフラストレーションを吐き出したい気分だ。



「うん、今回は俺1人で戦ってみるよ。」



 2人が返事してくれる前に俺は自分で決めたことを伝えた。



「危なくなったらフォローする。」


「そうじゃの、下手に近寄らん方がいいかもしれんな。」



 2人からOKが出た。

 俺は【ブラッドグリズリー】と戦う時に接近戦を仕掛けるつもりはない。結構な傷を負わせてもすぐ直ってしまうんであれば斬り付けた隙に反撃を貰うかもしれない。剣にそこまでの自信があるわけでもないし魔法で戦う方が無難だろう。【ブラッドグリズリー】には特に遠距離攻撃はなかったはずだ。

 そして全力の魔法で戦うと【ブラッドグリズリー】の近くにいる人間を巻き込みかねない。2人は接近戦が基本だから上位スキルの魔法を打つと確実に巻き込む。だから俺が全力で戦う時には正直1人の方が細かいことを気にしなくていいから楽なんだ。



 そんなやり取りをしてる間に森の入口まで来た。

 いつもの様に【索敵(レーダ―)】を使う。睡眠学習で【並列思考(マルチタスク)】を習得しようとしているからか最近は【並列思考(マルチタスク)】のスキルを外していてもスキルの付け替え位は別の事をしていても簡単にできるようになった。他のスキルも外していて効果を発揮するようになっていた。俺の推論は正しかったようだ。これだったらホントにいろんなスキルがわざわざスキルを付け替えなくても使えるようになるな。持っていたらかなり使えるってスキルから優先して身に付けるようにはしている。だから【MP高速回復】と【魔素吸収】も身についてきている様で俺のMP回復はすこぶる早い。

 ともかく俺は俺で成長してるはずだからどれくらい戦えるようになっているか旅に出る前に最後に確認しておこう。


 【索敵(レーダ―)】に【ブラッドグリズリー】が引っかかった。

 本当に森の中腹ぐらいにいた。

 森の中は奥に行けば行くほどモンスターが増える。【ブラッドグリズリー】は他のモンスターを捕食する。だから餌となるモンスターの多い森の奥にいるはずなんだが。

 何かあるのか?こういう場合もしかして魔王が出てきたから魔獣が活性化するとかのテンプレが存在するのだろうか。そう言えば勇者と魔王ってどうなったんだろう?興味がないからすっかり頭になかった。 魔王って復活したとかのパターンなんだろうか?それとも新たに誕生?

 俺は城では勇者ではないことになっていたのでそこら辺の情報は教えてもらってない。

 自分で調べるしかないか。しかしホントに魔王が復活して魔獣とか動きが活発化するんだった旅するの結構大変になるんじゃないか?


 いや、今こんなこと考えてもしょうがない。

 後で考えるとして今は【ブラッドグリズリー】を倒すことだけ考えよう。



 俺達は【ブラッドグリズリー】のいるところまで向かうことにする。

 20分程森の中を歩いてその姿を見付けた。


 体長は3mぐらいある姿形はほぼ熊と変わらない。ただ毛の色は真っ赤だ。

 そして4足歩行ではなく2足歩行で移動する様だ。熊と違って獲物に爪を立てて血をすするのが食事方法だからか前足の爪が異様に長い。爪が長いから前足を地面につけれないのか。その巨体がのそのそと森の中を我が物顔で歩いていた。


 あれと戦うのか。ちょっと怖いな。でもここまで来たし腹をくくるしかない。

 俺はとりあえずかけれるだけの支援魔法を自分にかけた。よし行くか。



「じゃあ、ちょっと行ってくる。」



 ガイとブランにそう告げて俺は【ブラッドグリズリー】へ戦いを挑んだ。




 まずは【岩の弾(ロックバレット)】を30個程作って放つ。岩の形は20cmぐらいの長さがある針の形にしてる。球というより針だ。これだったら刺さってよりダメージを与えられるはず。

 まだ俺の姿を視認してなかった【ブラッドグリズリー】の体に岩の針が刺さる。

 グアッと大きく吠えながらそれを放った俺のを怒った顔をして睨んできた。その体には岩の針が何本も刺さっている。しかしその針は体から押し出されるように地面に落ちた。刺さっていたはずの部分から血が一滴も出ていない。血が岩の針を体から押し出した?ダメージはほとんどなさそうだな。

 このまま削るか?そう思って俺はまた何本も岩の針を周りに出して放つ。これぐらいの魔法なら使い続けていても魔力が尽きることはない。

 先程より多い岩の針が【ブラッドグリズリー】に向かう。しかし【ブラッドグリズリー】は向かってくる岩の針に動じることなく顔を両方の前足でガードしたまま俺の方に突っ込んでくる。何本もの岩の針が腕に刺さっていくがお構いない様だ。


 マジか!?多少のダメージを無視して接近戦を挑もうとしてる。自分の能力をよく分かった戦い方だ。



「【土の壁(アースウォール)】」



 俺はそう唱え俺とブラッドグリズリーの間に2m位の土の壁を作り出した。しかし【ブラッドグリズリー】は臆することなくそのまま土の壁に突っ込んだ。ドカンッと音がして土の壁が粉々にぶっ飛ぶ。だがぶつかったおかげで【ブラッドグリズリー】のスピードは緩まった。



「【奈落の穴(アビスホール)】」



 俺はスピードが緩んだ【ブラッドグリズリー】の下に直径3m、深さ5mくらいの落とし穴を掘ってやった。穴に落ちたら上から魔法をこれでもかってくらい叩き込んでやる。

 そう思ったが穴が出来上がる瞬間にブラッドグリズリーが跳んで大きく後ろに下がる。

 落とし穴を避けやがった。

 確か魔獣は魔素の流れを感じ取りやすいと本で見た。俺が魔法を使った時に干渉した魔素を感じ取って落とし穴を避けたってことか?罠系は通用しないか。

 だがまたお互いの距離を離すことが出来た。


 チマチマ攻撃していてもほとんどダメージは通ってないみたいだ。ここは大きい魔法を食らわしたい所だがその暇がない。俺は一応無詠唱で最上級の魔法も使えるがそれでも詠唱がないだけで魔力を練ったりしないといけないのでポンポン放てるもんでもない。後最上級の魔法は天変地異かと思うくらいの威力があるからこんなとこで気安く使えない。倒したことを証明できるように首も持って帰らないといけないから、消し炭にする訳にもいかない。

 近づかれると厄介だしな。でも足を止めようとしても低レベルの魔法だと足止めにもならない。なかなか一人で戦うのは面倒くさい。気を引いてくれる人がいればいいんだけど。でも一人で戦うって言っちゃった手前今更ガイとブランには頼みにくい。

 そうだ。



「【岩人形(ロックゴーレム)】」



 俺が唱えると俺とブラッドグリズリーの間に岩が集まり大きくなっていく。大きな岩の塊が出来、その姿を変えていく。体長3mのロボットの様な岩の人形(ゴーレム)が出来上がった。ダイゴMk-Ⅱだ。



「足止めしろ。」



 作り上げたダイゴMk-Ⅱに命令する。ダイゴMk-Ⅱはドシンドシンと大地を踏みしめ【ブラッドグリズリー】に向かっていく。【ブラッドグリズリー】もダイゴMk-Ⅱを脅威と感じたのか腕を大きく開き威嚇する。ダイゴMk-Ⅱは【ブラッドグリズリー】に向かって腕を広げ体当たりをする。両者がぶつかるが体当たりを受けた【ブラッドグリズリー】も倒れることなく受けきった。しかしダイゴMk-Ⅱは【ブラッドグリズリー】の体に腕を回し抱き着く。そのまま力を込め、ベアハッグを決める【ブラッドグリズリー】は抜け出そうともがくがそう簡単に逃れられない。上手く足止めをしてくれている。


 その間に俺は魔力を練りこんでいる。辺りの気温が急激に下がっていっている。地面の草には霜が降り、凍り付いていく。

 時間稼ぎありがとうダイゴMk-Ⅱ。巻き込んじゃうけどごめんな。



「【凍てつく棺(アイスコフィン)】」



 俺が口にすると【ブラッドグリズリー】とダイゴMk-Ⅱの足元から氷が出現する。その氷は足元から這い上がり二体をその中に取り込んでいく。氷は厚みを増していき、やがて【ブラッドグリズリー】とダイゴMk-Ⅱは完全に氷の中に埋もれた。

 いくら【ブラッドグリズリー】が再生能力に優れていても、その力を持つ血を凍らされてはどうにもできないだろう。【凍てつく棺(アイスコフィン)】は中に閉じ込めたものを完璧に凍らせる。【ブラッドグリズリー】の能力ではそれから逃れる方法はない。

 

 とりあえず決着はついたかな。

最後どうやって倒そうかは色々考えたんですけどね。


ダイゴMk-Ⅱとガチバトルというのもあったんです。

戦隊物のロボットでのバトルみたいになりそうでやめました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ