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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
冒険への足掛かり
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ギルドマスター

やっぱりスキルを10個以上一度に使えるのは良いなと思ったりもする。俺の場合は付け替えないといけないし。ただ多分2人がどう頑張っても使えないスキルとか使えるんだから一長一短だな、と2人とモンスターを狩っている時に思った。



 そろそろ旅に出てもいいかもしれない。

 スキルも大分成長したし、旅で食べる分の料理も作った。3人が一月位食べても十分な量の食べ物が俺の【倉庫持ち(アイテムボックス)】の中に入っている。依頼をこなしたり、それ以外のモンスターも倒して素材を持ち帰ってギルドで買い取ってもらってるからお金もそれなりに溜まった。


 俺達が旅に出て向かうのはブランの弟が住んでいるという街。

 【商業国家 エルバドス】にある【ザール】という街だと教えてもらった。


 今いる街から出て西に一月ぐらい進んだところにあるらしい。行くにも徒歩や、馬車を使ったりと移動手段も色々とあるので、早く着いたり遅くなったりするだろう。


 ちなみにこの世界の一月は30日間のみで12か月で1年の計算だった。四季とかは特にない、土地によってはあるかも知れないけどそれはその土地まで行ってみないと分からないらしい。



 話を戻すが俺達はこの街を出たら大体一月旅を続けることになる。俺は世界をいろいろ見て回りたいと持ってるからゆっくり進んでもっと時間がかかるかも知れない。そこで今あるギルドカードだと一月の間に依頼を受けないと失効してしまう恐れがある。だから最低Eランクの冒険者になってから旅に出ようと決めていた。



 だから俺達は今ギルドランクを上げる為の依頼を聞きにギルドに来ていた。



 受付の窓口にはギルド登録した時にいた女性がいる。



「そろそろ俺ともう1人のギルドランクを上げたいんですけど、どうしたらいいですか?」



 俺は受付の女性に話を聞いた。



「ランクアップですか?そうですね・・・結構依頼もこなして頂けてるようですし問題なくランクアップできるとは思うんですが。一度ギルドマスターに確認してみます。」



 女性はそう言うと2階の階段を上がっていった。

 俺達がしばらくそのまま待っていると二階から受付の女性と男性が一緒に階段から降りてきた。



「ランクアップしたいってお前らか?」



 男は俺達の前にきて挨拶もなく言ってきた。



「あっ、こちらがうちのギルドマスターのウェインさんです。」



 受付の女性が代わりに教えてくれた。



「そうです、俺とこのガイという合わせて2人がFランクからEランクになりたいと思ってます。」


「ふ~ん。」



 ウェインと名乗るギルドマスターは俺とガイをしたから嘗め回す様に見ながら言った。

 ん?こいつお仲間か?


 ウェインはブラウンアッシュの髪色で少し長め髪をしてる。目がかなり鋭くてガラが悪い感じに見える。筋肉質な体形で冒険者を昔してたのかもしれない。年齢はガイと同じくらいかな。

 悪いが俺のタイプではない。申し訳ないなと心で謝る。



「お前らちょっとついてこい。」



 ウェインはそう言ってまた2階へ戻っていった。

 俺達は顔を見合わせて何が起きてるんだろうと思う。



「すいません。一緒についてきて下さい。」



 女性の方が気を使ったようで俺達を先導して2階に向かう。

 階段を上がり一番奥の扉まで進む。



「どうぞお入りください。」



 女性が扉を開けてくれた。仕方ないので俺達は中に入った。女性は中には入らないみたいでそのまま扉が閉まった。入った部屋は壁には本棚があり、大きな机が置いてある。その前には応接室にありそうなテーブルと椅子のセットがあった。ギルドマスターの私室なのか、執務室なのか。そのギルドマスターことウェインはテーブルの前の椅子に座っていた。足をテーブルの上に放り出してふんぞり返っている。



「お前らも座れ。」



 どう考えても好きになれないウェインに言われて仕方なく俺達もテーブルの前の椅子に着いた。



「お前らなんか隠してるだろ?」



 ウェインの言葉に少し驚く。思い当たることがあり俺はすぐに【鑑定眼(アナライズ・アイ)】を使ってウェインのスキルを確認する。すると【観察眼オブザーベーション・アイ LV.6】というスキルを持ってることが分かった。このスキルで俺達の違和感に気付いたんだろう。しかしこのスキルは偽装した情報までは見抜けるわけじゃない。多分ガイとかを見てかなりの強さを持ってるのにレベルが低かったりするのがおかしいと思ってるんだろう。



「えぇ、そうですね。隠していることはありますよ。ただそれは俺達の冒険者としての生命線なのでお教えすることは出来ません。」



 俺は変に嘘をついたりしないことにした。嘘をついてさらに突っ込まれてボロを出してしまったら元も子もない。最初から隠し事はあるが言えないと答えた方がいいだろう。



「ふ~ん、まぁいいか。ランクアップの件だが、俺が指定したCランクの魔獣を狩ってきたらしてやるよ。」



 ウェインはニヤリとして言った。

 こいつは。

 俺達はFランクでEランクに上がるくらいならそこまでのモンスターを狩らなくてもランクアップできるはずだ。いくらCランクのブランがパーティにいるからと言ってCランクの魔獣はない。


 魔獣はそこらにいるモンスターとは格が違う。

 一般的には突然変異で生まれたり、魔素の多いところで普通のモンスターが進化して新たに能力を得たものだという。その為普通のモンスターに比べて数が少ないが強さは段違いに強い。強靭な体を持つものや進化によって特殊な能力を個別で持っていたりする。ただのモンスターでもそれなりに強くのにな、それよりも強いって。

 そしてCランクの魔獣だったらCランクのパーティが何組か組んで挑むか、それなりのBランクのパーティが挑むのが常識だ。それを俺達に討伐して来いってか。



「わかりました、依頼を受けます。」


「へぇ~、Cランクの魔獣がどれほど強いか知ってるよな?しかもまだどんな魔獣か言ってないのに即答かよ。よっぽど腕に自信があるんだな。」



 正直断ってやろうかと思ったが目の前のこいつにイラついた。こんな奴がいるギルドにいつまでもいたくない。それにこれが最後の依頼になるだろうから終わったらとっととこの街を離れればいいやと腹をくくる。



「それで対象の魔獣はどんなのですか?」


「あぁ、【ブラッドグリズリー】っていう魔獣で近くの森の奥に住み着いてるその森の主みたいなやつだ。なんでもいつもは森の奥の方にしかいないはずなんだか最近森の真ん中に現れたらしい。んで、ぶち当たったCランクのパーティが全滅した。近くにいたやつが隠れてやり過ごしてからうちに報告しにきたんだ。このままだとあの森に入った冒険者が軒並みやられるかもな。今このギルドにはBランクのパーティはいねぇからな。」



 お前そんな奴をよく狩ってこいと言うな。そう言えば最近ギルドの酒場で大変な事が起きてるとか騒いでる冒険者がいたな。

 もう何でもいいや。



「そいつを討伐してどこの部位を持って帰ってきたらいいんですか?」


「そうだな~、ちゃんと討伐出来たかわかる様に頭でも持って帰ってきてもらうかな。」



 そう来たか。

 本で読んで知ってるが【ブラッドグリズリー】がなぜ魔獣として数えられているのは持っている再生能力のせいだ。体に流れる血に特殊な力があるみたいで少々の傷なら一瞬で治り、腕を切り落としても腕と胴体から流れ出た血がそれぞれの切り口から伸びて、絡まり、収縮して腕がくっつくらしい。再生には力を使う為力が尽きると再生しなくなるみたいだがそれまでずっと戦い続けないといけなくなる。長期戦になることが殆どで大体冒険者の方が体力やMPが底を付いて全滅する。他者の血を吸って力をつけるっていうのもあるから1人でもやられて血を吸われるとまた最初からダメージを与え直さないといけない。だから頭を持って帰って来いってことは完全に殺して来いよという事だ。



「わかりました。そいつの首を持ってきたら俺とガイのランクアップをしてくれるんですね?」


「あぁ、そいつは約束する。」


「じゃあ討伐に向かいます。」


「そっか、下でギルドカード渡すんだな。こっちからいっとくから。」



 俺達がはさっさと立ち上がって部屋から出て行く。

 1階に降りて受付の女性にギルドカードを渡すと依頼を登録してくれた。

 ただその依頼内容を見て青い顔をして俺達を見た。

 普通はそういう反応になるだろうね、FランクがCランクの魔獣の討伐依頼受けるなんてのを見たら。



「ありがとうございます。それじゃ行ってきます。」



 女性から笑顔でギルドカードを受け取って颯爽とギルドから出て行く。

 


 あんな奴の相手してるよりもモンスターと戦ってる方がよっぽどましだ。このフラストレーションはブラッドグリズリーにぶつけてやる。


2016/10/8 商業国 エルバドス ⇒商業国家 エルバドスに変更しました。

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