クチナワ
【索敵】を使ってブランのところまで帰ってきた。
ブランは鍋の前に土で作った椅子に座って待っていた。
「なにか変わったことはあった?」
「いや、特にはなかったの。何もなさ過ぎて暇だったがの。」
ブランには悪いことをしたかもしれない。鍋のを覗くと中身もいい感じになっていた。ちょっと遅くなっちゃったけど昼食にしようか。
俺は土魔法を使って俺とガイの椅子とテーブルを作った。そこに【浄化】をかけて綺麗にして【倉庫持ち】から木の皿やスプーンを出した。その後皿の上にパンとかも出した。それから木の皿に作りたてのシチューもどきをよそう。
「いただきます。」
シチューを一口食べる。美味い。今まで食べたどこのよりも美味い。【調理技術 LV.10】のスキルを使って作っただけあって極上の味だった。これが旅してる間に食べれるんだったらもっと作って非常食用に置いておくのも手だな。その気になったらパンとかも自分で作れそうなんだよな。作り方は本見て覚えたし魔法系のスキル使ったら焼くためのかまどとかも作れそうだしな。今食べている店で売ってるパンはもそもそしてそんなに美味しくない。食べ物は大事だよ。体を作る基になるんだからな。
昼食も終わり少しゆっくりしてから片付けに入る。作ったテーブルや台をものと平坦な地面に戻して、作ったシチューを鍋ごと【倉庫持ち】の中へ入れた。もう料理も完成したしブランも一緒に行動した方がいいだろう。だからこの場所を元に戻して移動することにした。
さてと最後の獲物はどこにいるのかなっと【索敵】を使う。
ん~、いたいた。池の方か。移動移動。
最後の獲物は水場にいることが分かった。だから川があるところまで進んでそれを上流にさかのぼっていった。歩くとあまり透明度のない池に辿り着いた。しかし問題があるんだよな~。【索敵】でわかってる獲物の位置は何回確認しても池の中なんだよね。
最後の獲物のモンスターは【ヴィオラバイト】という。図鑑で見たがまんま蛇だった。水場を好んで水中に潜み、他のモンスターが水を飲みに来たところを襲うってみたいだ。そんな蛇もいたよね。全長は大きいもので5mぐらいらしい。ただ目の前にいるのは気配でわかるが3mくらいだろう。どうやって水の中から引きずり出すかなんだよな。普通は動物の肉とかで陸上におびき寄せるみたいだけど。
そうか、今回はその方法が俺にもとれるか。
とりあえずどうやって陸の上に引きずり出すかを思いついたので今回の討伐のプランを2人に伝える。
それから俺はスキルの付け替えを行った。
今回は俺は援護だけして戦闘には基本参加しない。援護だけでどれだけ動けるかを見ようと思った。前衛が2人いるから大丈夫だろう。まずとりあえず【支援魔法】から【魔術装甲】を2人にかけた。魔力を身体の周りで固めて鎧の様にする魔法だ。高レベルのスキル持ちが使ったら剣で斬り付けられても傷つかないくらいらしい。MPもたっぷり込めたので余程のことがない限り怪我することはないだろう。
それから【倉庫持ち】の中からさっき狩ったモフモフ・ラビットを1匹取り出す。こいつを餌にしよう。ただ俺達が池の傍まで持っていっても警戒されるかもしれない。それに出来ればこちらの近くまで引き寄せたい。
俺は【土魔法】の中からある魔法を使う。
「【土の人形】」
俺がそう唱えると地面がもこっと盛り上がって手のひらサイズの土人形が現れる。今回は土を使って作ってみたが岩や他の素材でも作れる。大きさも自由に変えらえる。今回はこのサイズで十分だ。形はロボットみたいな外見をしている。それは完全に俺の趣味だ。その土人形がモフモフ・ラビットを頭の上に持ち上げてテクテク池の方へ走っていく。モフモフ・ラビットは死んでるけどお腹の下にいる土人形は見えず、モフモフ・ラビットが動いているように見えるな。
土人形を操作して池の淵をうろうろする。しばらくすると水面に長い影が見えた。
俺は急いで土人形を俺達のいる方へ走らせる。頑張れダイゴJr.、名前付けたし逃げ切るんだ。
ザバッと水音がしたかと思ったら鎌首をもたげたヴィオラバイトが池から這い上がってきた。早すぎてもついてこないかもしれないので一定のスピードを保ちダイゴJr.が走る。その後をシュルシュルと体をくねらし追ってくるヴィオラバイト。全身が池から上がりすぐには池に戻れない距離まで来た。俺が合図をするとガイとブランが物陰から飛び出しヴィオラバイトに向かっていく。それと入れ替わりにダイゴJr.は2人の間を抜けて俺のところへ戻ってきた。お帰り、よく頑張たな。ってそれどころじゃない。俺も陰から出ていく。戦闘開始だ。
先に飛び出した2人はヴィオラバイトと一定の距離を保って移動する。左右に分かれてヴィオラバイトの周りを移動する。池に潜られるのは阻止しないと。ガイの方が走るのは早い、ガイが池とヴィオラバイトの間に陣取る様に止まる。位置取りは出来たからこっからだな。
ガイとブランに挟まれているような形のヴィオラバイトが舌をチロチロと出して様子を伺っている。正直この瞬間に魔法をぶち込んで一気に終わらせたい気分になるが自重しよう。
ガイが足を進める、とりあえず牽制するみたいだ。ヴィオラバイトに向け斬り付ける。何度か斬り付けるがヴィオラバイトは体をくねらせて器用に振るわれた剣を避ける。だがガイは囮だ。大きな動きで自分に意識を引き付けてるだけだ。ヴィオラバイトの後ろからはブランが迫っている。ブランはある程度近づいてからヴィオラバイトに向かってジャンプした。重そうな体なんだけど結構跳躍力あるな。飛んだブランは斧に体重を乗せヴィオラバイトに叩き込んだ。かなりの威力になったのか斧が当たった部分の胴体は半分ほどちぎれていた。
ヴィオラバイトはシャーッと声を上げその傷をつけたブランの方に顔を向ける。しかしそんな隙をガイも身逃さずに力を込めて剣を横に振るった。その一撃を受け首元も半分ぐらい千切れた。その衝撃で地面に頭を落とした時にブランがとどめとして首元の傷目掛けて斧を振る。そして斧を受けた部分から上が胴体から離れた。頭が飛んだのに下の体部分はしばらくのたうち回っていた。生命力強いな~。
頭も胴体も完全に動きを止めた。今回はあっさり終わったようだ。俺はなにも手だししてないし。正直支援なんてしていない。ガイも俺と戦うより動きやすそうだったしな。う~ん、ブランと役割分担がきちっとできてたからかな。お互い何をしたらいいかわかって動いてたみたいだし。スピードがあるガイが相手の注意を引いて、攻撃力のあるブランがダメージを与える。なんかいいな~。俺は・・・器用貧乏ってとこなんだろうか。自分で色々出来過ぎるから選択肢が多すぎてどれを選んだらいいか分からなくなるんだよね。そこはこれから場数を踏んでって覚えることかな。
さて部位を回収して街に戻ろうか。
ダイゴJr.はホントはブランの小さい姿をした土人形を作ってブランJr.にしようとしたけど、
それを見たブランに引かれたらいやだから仕方なく自分の名前を付けたっていう裏設定。




