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提案

「どう言うことだこれは!!!」



 王が椅子から立ち上がり声を荒げて言った。



 先程召喚の時にいたローブのおっさんたちがそれを聞いて集まって何やら話し出す。



「まさか失敗?」


「いや、2人はちゃんと召喚できている。」


「そうだ、1人だけ勇者じゃないなど、前例がないぞ。」



相当焦っているのか話し合ってる内容がこっちまで筒抜けなんだけど。



「えぇ~、でも勇者って3人って聞いたよ。神様に。」



 空気を読まず勇が軽い雰囲気で言った。

 ちっ、いらんことを。

 するとローブのおっさんたちが一斉に俺の顔を見つめる。



 いや、そんなに見つめられても。

 俺は首を傾げ(かしげ)何の事だかわからないという表情をする。



「大悟君って神様に会ってないの?」



 勇がおっさんたちの代わりに聞いてくる。



「神様?何のことだか・・・?俺は家に帰ったと思ったらさっきの部屋にいたんだ。

 それで訳も分からないから言われるとおりにしてただけだが?」



 そのセリフを聞いておっさんたちはまた話合う。



「お前たち、誰でもいいから説明せよ!!」



 王がキレた様に怒鳴る。



 すると思い出したかの様にローブのおっさんたちは膝をつきこうべを垂れる。



「恐らくこの者は漂流者かと思われます。

 もう1人の勇者は・・・他国が召喚したと思われます。」



 一番年齢が高そうなおっさんが王に伝える。



「なんだと!そんなことが起きるのか!」



 王は激おこの様です。



「召喚には星の配置などがありまして・・・それが一番良い時に行われるものです。

 その為他国が同時に行っていてもおかしくはありません。

 そしてその時には異世界との道が通じる為、迷い込む者がいても何ら不思議ではありません。」



 ローブおっさんの声は震えていた。



「なんだと!そんなことが・・・そうか致しかたがないがこちらには2人おるし。」



 そう言って王は少し落ち着いたのか椅子に腰を下ろした。



「で、結局どういうことなんですか?」



 一応落ち着いたみたいだから俺は質問してみた。

 その質問にその場は重い空気になった。



「え~っと、とりあえず巻き込まれた感じ?」



 これまた軽い感じで勇が言ってきた。



「ここって異世界で、俺ら勇者様。

 んでその勇者様を呼ぶ儀式に巻き込まれてここにいるってこと。

 ドゥーユーアンダスタン?」



 何でそこで英語なんだ?そしてどう考えてもカタカナ英語なんだが。

 俺は自分のことを親指差ししている勇を見ながら思った。



「まぁ今まで普通じゃないことが起きてるので何となく理解はしますよ。」



 ため息交じりに俺は言った。



「じゃあ、巻き込まれただけなら元の世界に返してもらえますか?」



 俺はそう王にお願いした。

 そのセリフに場の空気が凍り付いた気がした。誰もが無言、静寂が訪れる。



「それは・・・出来ません。」



 その重い空気に耐えきれなくなったのか王ではなくローブのおっさんが口を開いた。



「違う世界との道を開くのはある特定の星の配置などがかかわってくるのです。

 そして、その次の機会はおよそ百数年後です。」



 どう考えても生きちゃいないわな。ということは他の勇者も元の世界に帰れないってことだよな。

 2人を見ると青い顔していた。向こうには家族だっているだろうし、恋人だっていたかもしれない。それももう会えないってことだしな。



「しかしながら」



 ローブおっさんが続ける。



「神の中には他の世界へ渡る術を持つと伝わっております。

 その神を見付ければもしかすれば・・・」



 もしかすればなんだ。ってか誰もその神のこと知らないんじゃないか?

 正直今ここにいる人間にはどうでもいいと思ってるんじゃないか、俺たち以外。召喚された勇者が魔王を討伐してくれたら後のことは気にしてないんじゃないだろうか。



「じゃあ私はどうしたらいいんですかね?

 元の世界にも帰れない、こっちの世界でも勇者でもない人間はどうやって生きて行けと?」



 俺の言ったことにみんな小難しい顔している。

 それ以外にも可哀想な者を見る目をしたいた、主に勇と彰。



「出来るだけの援助はしてやろうとは思う。

 しかし今は魔王との戦いも予定されておる。

 その為、ずっと面倒を見てやるというわけにも・・・。」



 王は困ったように俺に言った。

 そんなことは知らん、直ちに城から出ていけって言われるかと思った。まだましだな。



「いえ、私もそこまでのことは申しません。

 出来るかどうかはわかりませんが、先程聞いた他の世界へ渡る術を持つ神様を探して旅をしようかと思います。

 その為に一月程この世界の知識や技術を学べる時間を頂きたいと思います。そして旅立つ時に当面の生活費でも頂ければ幸いです。」



 俺はそう言って周りの臣下と同じように片膝をついて王願い出た。



「うむ、分かった。それぐらいのことであればこちらで部屋を与え教える者をつけてやろう。」



「ありがとうございます」



 そうして俺の一月の勉強生活が始まった。

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