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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
冒険への足掛かり
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決意

 どこかで聞いたことあるような話だなと思った。

 ガイがなぜ奴隷になったかは分かった。ただこの店の女性との関係が分からない。

 それに何か引っかかるものがあるんだよな。



「ガイはどうして近衛兵の団長になったんだ?」



 とりあえず色々と聞いてみるか。



「俺は騎士の家系に生まれた。親父も近衛兵だったし俺も当然後を継いだ。」



「私はガイ様の乳母だったのです。」



 店の女性から声が掛かった。いつの間にか湯気の立つコップを持って立っていた。

 どうぞとお茶を勧められた。俺達の話を聞いていたようだ。



「ミラは俺が生まれる前からうちで働いてくれてたんだ。」



 この女性はミラというらしい。



「俺の母は俺を生んですぐに亡くなった。だからミラが母親代わりだった。」


「いえ、そんな。」


「父も近衛兵をしていたが俺が成人する前にある任務で命を落としたんだ。俺には兄弟もいないから今家族と言えるのはミラぐらいだ。」


「その、ガイ様はそれは努力されたんですよ。お父様の後を継いで近衛兵団に入ることを目標に、毎日毎日剣の練習を飽きることなくしてついに国王に認められて近衛兵団に入ることが出来たんです。近衛兵になってからも腕を磨いてついに団長の地位になられたのです。その時はどれほど喜ばしいことだったか。今でも鮮明に思い出せますわ。」


「でもそんなのは束の間の夢だったんだ。今は俺はただの奴隷だ。」


「そんな・・・何とか、なりませんか?」



 ミラにそう言われる。

 何とかと言われてもなぁ、奴隷の契約はすぐにでも解除できることは出来る。



「じゃあ、もし俺がガイを自由にするって言ったら何をするつもりだ?」



「何って・・?」



 ガイが答える。



「いや、だからそのお前をハメたっていう副団長に復讐するのか?

 それともまた国王に直訴しに行くのか?俺は謀られたんだって。

 それでまた近衛兵団の団長に返り咲きたいのか?」



 俺はガイを真っすぐ見て言葉にする。



「復讐?いや、そんなことは・・・・団長・・・そんなの今更・・・・。」



 ガイは考え込んでいる。


 俺はガイの昔を聞いてガイがどうしたいのかが分からなかった。その副団長の事を殺したいぐらい恨んでいるような言葉はないし、国王には忠誠心があるようにも思えない。


 過去に起こったことだけをずっと話してただけだ、こんな事があって怒ってる。こんなことになって悲しい。過去に囚われてる。



「そう、過去は過去。もう一回ってやり直しもできないよ。

 辛いことがあったのは分かった。

 じゃあそこからガイが何をしたいかじゃないか?それが俺の納得できることであったら奴隷から解放してもいい。」



 俺の言ったことにガイは無言で俺のことを睨んでいる。



「俺だって今の立場は望んで手に入れてない。前の生活に戻れるならって思ったことはあった、でもそれは出来ない事だってことはわかってる。

 だから前を向く。やれることをやって、したいことをする。そうしようって決めたから。

 他人にこれをしなさいって決められてるみたいだけど、そんな事知ったことか。

 俺の生き方は俺が決める。


 ガイはどうだ?ほんとに近衛兵になりたかったのか?

 奴隷になってからも団長に戻りたかったのか?」



 俺もガイを睨む。

 

 ガイは引かれたレールをずっと走ってきて、そのレールに石を置かれて脱線した。

 レールに石を置かれたことに怒り、脱線したから道を見失った。そこに止まったままでもう一度走り出そうとしていない。そう思った。


 真面目に今までやってきたんだろう。

 不器用でもあったんだろう。

 真面目だから努力して、真面目だから上り詰めた。

 不器用だから周りから反感をかって、不器用だから周りに助けを求めない。

 

 俺はなんだか少しガイのことが分かった気がした。



「くそっ、なんで・・・俺は。

 若造にこんなこと言われて・・・なにも言い返せないんだ!」



 ガイは涙を貯め、悔しそうにつぶやく。

 俺は立ち上がって笑顔で言う。


「俺と一緒に旅に出よう。

 この世界は聞いてるだけでも広い。見たらもっと広いと思う。見たことないことやびっくりするようなことも沢山あると思う。命がけの危険もあるだろう。力を合わせて乗り越えて、その後で危なかったなと一緒に笑って話そう。

 

 そしたらガイのやりたいこともきっと見つかるよ。」



 俺はそう言ってガイに手を差し出す。



「あぁぁっ、クソッ!」



 ガイはそう言って天を仰ぐ。そのまま黙って上を向いていた。

 しばらく経って顔を戻し俺を見た時には笑っていた。



「こんな若造に言い負けるとは思わなかった。

 だが俺も後ろを向くのは止める。前を向く。

 お前が前を向いて進むなら一緒に行けば俺も前を向いて進める気がする。

 だから一緒に行こう。」



 ガイはそう言って俺の手をガッチリと握った。



(あるじ)、俺と一緒にじゃなくて俺達と一緒にじゃがな。」



 今まで黙って聞いていたブランが俺とガイの手に自分の手も合わせて言ってきた。

この話は二転三転しました。

ガイって最初考えてたのはCOOLでカッコいいキャラだったんですけどね。

なんか馬鹿真面目だけど主体性のない感じになってる。

でも一度挫折しても戻ってこれる人は強くなるとは思ってます。

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