外でご飯
晩飯でもどこかで食べて帰るか。
そう思ってどこかに良い飯屋がないか探してみる。今泊まっている宿は飯が付いていなかった。1階には食堂兼酒場はあったけど宿屋ついてるのってそれなりなんだよな。なんか美味い店はないだろうか。
そう言えばガイって一応ここの国の近衛兵団の団長やってたんだし、国のお膝元の街のこと知ってるんじゃないか。そう思って聞いてみる。
「ガイってこの街でどっか飯の美味しい店知らない?」
「なぜ俺に聞く?」
「いや、何となく。知らないんだったら別にいいけど。」
「心当たりがなくはない。」
「んじゃ晩飯そこで食べよう。案内してもらってもいい?」
「あぁ、こっちだ。」
今から美味しいものを食べに行くような顔じゃないな。
ガイの先導で街を進む。
街の中心からは少し外れる様だ。特に迷う様子もなく進んでいく。
しばらく歩いてある1軒の店の前に到着した。特に大きな店でも看板も出ていないこじんまりとした店だった。
ガイが扉を開けて入っていくのでそれに続く。
店に入るとテーブルと椅子のセットが6つだけある小さな店だった。
俺達の他に客はいないみたいだった。
「いらっしゃいませ。」
店の奥から女性の声がして、女性がこちらにやってくる。
奥から姿を現したのはそこそこ年齢のいった女性だった。
少し白髪の交じった深い緑色のような髪を後ろで束ねていた。顔は昔は綺麗だったんだろうなと思う。エプロンをしていたがよく似合っていた。
「ガイ・・・様?」
その女性が俺達の姿を見て声を上げた。
知り合いか?
「3人だ。」
ガイは気にする様でもなく女性に告げる。
「はい、どうぞおかけ下さい。水をお持ちします。」
女性はそう言って店の奥に戻っていった。ガイは近くのテーブルに着いた、俺達もそれにならって席に着いた。
そうすると奥から女性が水を持って現れて俺達の前に並べていく。
「あの、今はどうされて・・・・。」
女性が思いつめた表情をしてガイに聞いてきた。
「今はそいつの奴隷だ。」
ガイは俺のことを顎でクイっと指して言った。
すると女性は俺の顔をじっと見つめてきた。
いーや、いやいやいやいやいや。おかしいだろ、ガイ。
何この空気。
いや、間違ってない。間違ってないよ、奴隷契約はしてるし。
でもなんかこう、色々と言い方とかあるでしょ。
居た堪れなくなって俺は会釈した。しかし女性からのリアクションはなかった。
あうちっ。
ホントマジに勘弁してほしいんだけど。
なに?これは何か正解があるの?どう考えてもフラグなんだけど。どう回収しろと?
2人は知り合いだったんですか、とか昔の話に触れていいの?
それともここは何も聞かない方がいいのか?
飯食いに来たのにかなり面倒なことになってるんだけど。
「ここは何がお勧めなんじゃ?」
ブランが周りをキョロキョロして聞いた。
グッジョブ!いい仕事するよ。そう言えば天然の称号持ってたよね。ブラン愛してる。
「そう・・ですね。うちはパイとかが人気あります。」
「じゃあそれを適当にお願いします、後別にお勧めがあればそれも合わせてお願いします。」
「かしこまりました。」
何とか不穏な空気を打破して注文を済ませた。女性は注文を受け奥に戻っていった。
いやまぁとりあえずだね。
「昔に何があったか聞いた方がいい?」
俺はガイに聞いた。
「聞きたいのか?」
質問を質問で返された。え~ん、面倒臭いよ~。
「これから旅を一緒にするんだったら聞いておきたいかな、気になるし。」
そう伝える。
「飯を食ったら話してやる。」
うん、ご飯食べたらお話ししてくれるみたいです。嬉しいなー(棒読み)。はぁとっとと料理もってきてくれないかな。
15分位して料理が出揃った。目の前にはお勧めのパイや煮込み料理が並んでいる。家庭料理っぽい感じだな。いただきますと言って料理に手を付けた。料理はほっこりとした感じでどこか懐かしさを感じる味だった。箸が進む、隣ではブランが酒を片手にパイを食べていた。さっきのご褒美に酒を頼んだ。酒好きだったはずだしと思ったらかなり喜んでいた。
ご飯も食べ終わり、皿がテーブルから片づけられてからガイが口を開いた。
「俺は元はこの国の近衛兵団の団長をしていたんだ。」
うん、知ってるよ。あれ?ここは驚いた方がいいとこか?でももうなんか面倒だし。
「そうなのか?だったら何で奴隷なんかになってたんだ?」
一応話を合わせて驚いた風に聞いた。
「それは俺が罠にはめられたんだ。」
なんだってー、次週に続く。
そんな感じのリアクション取ったらいいんだろうか?すまんけどそこまでのテンションじゃないし。
「罠?」
「あぁ、俺が団長をしている時にとある貴族が盗賊に襲われるという事があった。そして奪われたものを取り返してほしいと王に直訴したんだ。普通そんな話近衛兵団に回ってくるはずもないが、その貴族が近衛兵を貸してくれと言った。王もその貴族を懇意にしていたから了承された。」
なんだそれ、おかしいとか思って止めるだろ。
「仕方なく、俺と副団長、後何人かの兵を連れて盗賊のアジトに踏み込んで成敗した。しかしアジトのどこを探しても貴族が奪われたものは出てこなかった。それを城に報告しに戻ったらその奪われたものが俺の部屋から発見されたと言われた。
当然何かの間違いだと王に申し上げたがこともあろうか副団長が盗賊と俺が裏で通じていたと報告したんだ。
盗賊を使って貴族から盗み出し、取り返してほしいと依頼があるとこれ幸いと口封じに盗賊を皆殺しにした、盗賊の頭がアジトで殺されるときに俺のことを裏切ったなとか叫んでいたなんてことを王に吹聴したんだ。王はそれを信じ、俺の団長としての役職を剥奪して奴隷にしたんだ。」
副団長の奴が俺をはめたんだ。」
ガイは激昂して言った。




