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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
【ウィクルーア】編
230/237

イルカ

 俺は次に【影法師(シャドウサーヴァント)】で少し大きなネズミを模した物を何体か作る。

 そう言えば【探索鼠(サーチングラット)】も影で作っていたっけ。今回のネズミは主に運搬用だけど。俺は作ったネズミの体にさっきイルカが作った注射器を何本か埋め込み自分の影に入れる。町に分散している仲間に配る為だ。皆の位置はわかっているからそれぞれの影に【影移動(シャドウムーブ)】を繋げるぐらいは簡単だ。そしてそのまま皆に【念話(テレパス)】で内容を伝える。ネズミがそのまま相手に薬を注射するので肉塊が離れてから攻撃するようにと。その時に近くにいると乗り移られる可能性があるから遠距離で倒せと、敵自体動きも素早い訳でもなく特殊な攻撃手段がある訳でもないみたいだからこれで問題ないだろう。

 そして俺も動き出す。皆が相対していない敵の場所へと【影移動(シャドウムーブ)】で飛ぶ。後は皆と変わらない、敵の動きを止め薬を打って肉塊を倒す。それを繰り返すだけだ。ほどなくして町にはびこっていた肉塊の一団は俺達の手によって全て消滅した。

 それにしたって何だったんだ。どういう意図でこんなことを・・・。いや、考えるよりも先にやることは色々ある。仮死状態になった町の人も元に戻さないといけないし。それも手分けして何とかするか。俺は【念話(テレパス)】で肉塊が全ていなくなった旨とブランとアリアでそれぞれ倒れている町の人を連れて来て欲しいことを伝えた。ブランは土人形(ゴーレム)でアリアも同じように水の馬でも作れば連れてきやすいだろう。ガイとシータは先にドグマ船長の所に行って貰うようにした。そしてこれまでの経緯を説明してきてもらう。あっちには【念話(テレパス)】を使える人がいないからな。誰とも奴隷契約はしていないし。

 そこからは一か所に集めた肉塊に自由を奪われていた住人たちにイルカが作った別の薬を与えた。それで仮死状態が解けるらしい。目を覚ました住人達は一様に疲れた様子をしていたがそれ以外には問題はないみたいだ。だから少し話を聞いてみたが肉塊がくっついていた間の記憶はないみたいで、肉塊に取り付かれえる前も記憶は曖昧みたいだった。誰か一人が起点になって広がったのであればその一人に話を聞ければその肉塊を広めた親玉ってのが分かるかも知れなかったんだが。そう簡単ではないみたいだ。いや、それが分かったとしても今どこにいるのかもわからないし、追っかけてって言うのもな。とりあえずは皆無事だったってことで良しとするか。

 町の人達にどういう事があったのかを説明をするのも大変だったが、俺達もよくわかっていないから説明できることって言うのも限られていた。なんかそう言う生物に寄生されたから剥がしてやっつけた。それぐらいしか言えない。それがどういう生物で、これからもこういうことが起きないかどうかって言うのもわからない。それを俺達がどうのこうの言える立場でもないしな。どう対策するかはこの町の問題だ。だからそう伝えた。俺達にもやることはあるし、ずっとこの町でこういうことが起きない様に護衛して欲しいって言われても受けれる話ではない。

 その話を終えてから俺達も話をすることにした。主要メンバーで大和の食堂に集まった。俺とタイザンのメンバー、ドグマ船長とエミリオ、エリックの面子だ。



「結局ありゃ何だったんだ?」



 席について初めに質問してきたのはドグマ船長だった。



「え~っと、しょうがない。あいつに説明させます。」



 俺はそう言ってイルカを呼び出した。



「みなさん初めまして~。」



 イルカが現れて俺の頭の上でクルッと前転して手を開いてピタッと止まる。



「なんだそいつは?」



 聞いてきたのはドグマ船長。タイザンのメンバーは慣れたものか初めて見せた割に反応はない。



「えっと俺がスキルで作った俺のいた世界のイルカって生き物なんです。俺の分身みたいなもので俺とは別で色々と考えて行動するんで役に立つんです。ちなみに実体はないので触ったりは出来ないです。

 俺が持ってるスキルをそのまま使うことが出来るので今回の件についても色々と調べたりしているのでこの中では一番詳しいと思います。」


「そうなのか?」


「せやで~。よろしくなおっちゃん。」


「あぁ、まぁその、よろしくな。」


「挨拶は後でしたらいいからさっさと今回の話をするぞ。あいつの事を調べたんだろ?」


「まぁな。【倉庫持ち(アイテムボックス)】に入れたあのけったいな肉の塊について調べてみたけどさっき言った情報以上のもんはたいしてないな~。」


「さっきお前モンスターじゃないって言ってたけど、じゃあなんだ?」


「さっきも言うたけどあんなモンスターおってもしょうがないやろ。人に寄生するだけの生きもんそうそうおるわけやない。調べてみたけどあいつらは一代限りの生きもんや。これまでに生きて来た、進化なりしてきたってのがないんやな。そんな生きもんが偶発的に発生したなんてことは考えられんわ。99%モンスターではないな。それだけの為に生み出されたもんや。」


「魔族がらみか?」


「せやろな。人族やエルフ、獣人があんなの作るってのは出来そうはないやろうけど難しいわな。特殊なスキルか何かで生み出されたってのが一番しっくりくるかな。そうなると魔族が一番可能性が高いっちゅうことや。87%の可能性で魔族が生み出したもんやな。」


「大本がいるって言ってたな?」


「せや、あいつらが持ってる情報を解析するとそうなるな。自発的に考えて行動するような器官は無い割に統率された行動してたさかい。それぞれが他の個体と何かやり取りをしてってこともなかったみたいやし、作られる時に命令を埋め込まれたってことやろうな。」


「その大本って言うのを探すことは出来ないのか?」


「ん~、難しいな。何かパスみたいなのがあってその都度命令でもしているんやったら、それを逆探知みたいにして場所はわかるかも知れんけどそう言うのではないからな。近くにおれば他のとの違いで分かるやろうけど、そういう状況になるかやな。」


「そう言えば今回の件は一体何が目的だったんだ?」


「そりゃわしでもわからんわ。推測位やな。行動目的からしてこの町の人間全部あの肉の塊くっつけて支配下に置くってとこやろか。」


「支配下?その大本が戻ってくるってことか?」


「さぁ。別に支配下って言いうのが町の住人がみなあんなんになることかもしれんし。それでも支配下ってことになるんちゃうか。」


「それって意味あるのかよ。」


「まぁあるわな。この町としての機能はなくなるからな。アルメデから船が渡って来ても同じことになるやろうし。ウィクルーア唯一といってええこの港が使えなくなったら色々と面倒ちゃうか。」


「なるほど、そう言う事か。この港が使えなくなったらアルメデからウィクルーアに来れなくなるかもしれないか。分断と言うか孤立と言うかそう言うのが目的ってことか。でもだったら大規模の魔法とかでこの港を吹き飛ばしたらいいんじゃないのか?」


「それも全部推測やけど、そうしたらいらんとこに目を付けられるかもしれんからちゃうか。エルフやったり獣人やったりな。大規模に吹っ飛ばしたら周りにも被害が出るやろうし、そんなやつをほっとかれへんってことになるかも知れん。今回みたいにやったら静かに町を制圧できるやろな。」


「ん~。そこまで考えるってことはやっぱり魔族でしかも結構上の方か。そこまで知恵が回るとなると魔王とかの可能性も出てくるか。」


「まぁな。そう考えるのが一番しっくりくるわな。」


「となるとまた襲撃ってあるのかどうかってのは。」


「ん~、どやろな。様子を見に帰ってくるかもしれんし、計画が失敗したから近づいてこーへんかもしれんな。五分五分ってとこやろか。」


「俺達も目的があるからここに留まることは出来ないし。」


「後はこのボン達に任せるしかないんちゃうかな。」


「エミリオ達に?」


「せや、あいつらの詳細解析したから薬の効果も上がってるし船にいっぱい置いといたら対処できるやろ。」


「なるほどな。万が一大本が来たらどうするんだ?」


「五分五分って言うたけどその可能性は低いんちゃうかな。子分おいてどっか行ったってことは自分の身の安全を優先したってことやろうし。子分達がやられたんならそこには近づかんのちゃうかな。戦うのに自信があったら残ってたと思うわ。

 ただ自分じゃ敵わないってことで仲間連れてくるかもしれんけどな。それも推測やけど可能性は低いやろうな。この町を占拠したいと思ってたんやったら最初から連れて来てるやろうしな。

 だから様子を見に来るってことはあるかも知れんけどそれ以上の事はないやろうってとこや。」


「じゃあとりあえず今回の件についてはあの肉塊をどうにかする薬を作って渡して、俺達はエルフの里に向かうってことか。」


「せやな、それぐらいしかないやろうな。後はボンとおっちゃん達に任せるわ。」


「えっ、はい。わかりました。」


「不安があるだろうけどまた魔法具は置いて行くから何かあったら呼んでくれ。すぐに駆け付けるから。」


「すいません。」


 エミリオ達が俺の言葉に申し訳なさそうに言った。



「いや、早い対応だったから何とかなったのかもしれない。もしもっと時間がかかっていたら本当に町の人間全員があの肉塊に捕まってたかもしれない。やっぱり色々と面倒ごとが起きてくるな。」


「結局俺達はいつ出発するんだ?」



 ガイが聞いてきた。



「なんや、ガイ坊は消化不良かいな。今回出番なかったもんな。」



 イルカがガイの所に行って頭の上をクルクル回ってそう言う。

 ガイが俺の方をジト目で見てくる。いや、俺にそんな目を向けられても・・・。俺が言った訳じゃないし。俺の分身体だけど考えとかは一応別なんだけど。ただまぁ俺もそうは思った。今回に関してはガイも敵と戦った感はないだろう。地面に転がった肉塊を何体か斬ったぐらいだ。しかし余計な事を言うなイルカよ。



「ホンマ戦闘馬鹿には今回いいとこなしやろうし、ブランはんやアリ助の方が役に立つわ。」



 イルカの言葉にガイの額に血管が浮くのが見えた。武器にも手を伸ばしてるし。いや、実体無いからガイでも斬れないよ。



「お前そのぐらいにしておけ。」



 俺はイルカをたしなめる。自分の分身にそんなことを言うのってなんだかなって思う。。



「えっと、アリ助って?」


「なにゆうとる、あんさんの事でっせ。」



 アリアが冷たい目をして聞くのに対してイルカはのんきに答える。



「胸がない上に気もまわらんのか?ガイ坊に続きいいとこなしやな。」



 イルカの一言にアリアの額にも血管が浮いた。と思ったら腰に差したアプサラスに手を掛ける。



「えっと、実体がないってことでしたらダイゴ様をどうにかしたらよろしいんですよね?」


「いやいやいやいやいやいや、そういう事ではないよ。ゴメン、すいません。俺が代わりに謝るから。」


「それ、どうにかして下さいね。」


「いや、まぁどうにかできなくはないんだけど変更すると今までやってきた記録とかがリセットされちゃうので・・・。」


「どうにかして下さい・・・ね。」


「あっ、はい。」



 笑ってない目をして口は笑みを称えたアリアにはそう言答えるしかなかった。言動のロックとかって出来たっけなぁ。でもしないと俺の命にかかわりそうなので何とかするしかない。性格とかって別にこうとか設定した訳じゃないんだけど。なんでこんなに口が悪いんだろうか。いや、まぁさっきの台詞俺も心の中でちょっとは思ったことある気がするけど流石に口にできるようなことじゃないのはわかってるよ。

 言った様にイルカの設定をいじるとどうなるかわからないんだよな。下手すると今までの作ったスキルとかもなくなる可能性がある。言葉使いを変えるだけにしておかないと。と言うか内容だな。

 


「いや、まぁとりあえず出発は早めにするよ。ここにいても先に進めないんだから。」



 俺がそう言うが反応がない。空気が冷たい。イルカは俺以外いる時にはなるべく出さないでおこう。タイザンのマスコットキャラになるかと思ったんだけど。それには程遠いな。これだったらティグの方が良いのかもな。俺が自分用に作ったスキルだから他者とのコミュニケーションの取り方が上手いこといかないのかもしれない。それも教えていったら成長するんだろうか。今後の課題だな。やっぱり頭の中でだけ話したらいいんだろうか。使える奴ではあるが使いどころが難しいってとこか。関西弁にしたからそう言う性格になったとか。俺の中でのイメージもあるのかもしれない。口が悪そうだって。いや、こんな事考えてたら怒られるな。でもスキルに関してもイメージだったりの部分が大きいしあながち間違いでもないかもしれない。だったらもっと博多弁とか京都弁とかにした方が良かったのか。ただ俺も知識がないから適当になりそうだし。勝手なイメージだが博多弁を話すイルカってのがいまいち。イメージとしては熊とかが可愛いような気がする。「~たい」とか。京都弁は・・・、はんなりするのか?いや、何となく直接的ではなく歪曲的に責めそうだからそれもどうかと思う。俺がそんなこと考えていたら絶対にそのイメージ通りのイルカが出来上がってただろう。

 仕方がない、可及的速やかにこの問題に対処しよう。それまでは皆の前では出さないでおこう。俺の命にかかわる。


 その後にドグマ船長とも話をした。大和はシェルター代わりに役に立ったようだ。大和のまだ使ってなかった装置なんかが役に立ったみたいだ。

 大和にもまだまだ色々な仕掛けがしてある。敵に船に攻め込まれた時用にと準備してあった。『防衛兵(ガーディアン)システム』と言うのがある。非常時に船に搭載されている人形(ゴーレム)起動して船を守るというものだ。俺とブランが作ったゴーレムなので一体でもAランク位の魔獣であれば相手取れるだろうと言った強さを持っている。大和からの魔素の供給システムを持っているので長時間の戦闘にも耐えられる。自動修復機能も持っているしな。ただまぁ大和からそう離れることが出来ないんだが。元々防衛の為に置いているのでそこは問題ではない。それが何体か配置ているので仮に魔族が攻めてこようがある程度の奴なら相手出来るだろう。今回の様に町の人が襲われてとかになるとどうしようもない。あくまでドグマ船長や船員、大和を守る為のものだから。俺達が戻ってこなかったら恐らくは肉塊に寄生された町の人間全て倒してドグマ船長達を守っただろう。その事についてはドグマ船長には伝えている。あくまで仲間を守る為のものだって。

 だから俺も大和に残る皆は安全だと思っている。ただ今回の件で人を操ってという事だと少し違ってくる。もしエミリオ達、もしくは船員達の誰かに今回の肉塊が取り付いたのであれば俺達が戻ってこなければ切り捨てるしかなかっただろう。俺が来た時にはエミリオ達は町中にいた。自分達で何とか出来ないか、住人を救えないか考えたんだろうが俺達が来なかったら最悪エミリオ達が寄生されていた可能性もある。その点は言っておかないといけないな。これからも何が起きるかわからない、出来ることは限られている。その判断を見誤れば自分だけでなく仲間も危険になるという事を。

お読み頂きありがとうございます

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