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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
【新大陸へ】
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帰郷

 結局の所ガイとタタラさんの話は堂々巡りの様なものだった。

 シータにしろガイにしろお互いを意識してるのは丸わかり。ただ今の所深い関係にはない。だがこれからはわからない。今の所はそう言う関係性なんだ。

 そこでタタラさんが何か言う事はないだろう。2人の問題なんだから。

 かなり遠回しにその件を伝え渋々タタラさんが納得した形だな。

 シータの年齢の事もあるし2人がこの後もっと深い関係になるのもまだ先の話だろう。とは思っている。シータの見た目はもう少女とは言えないがそこら辺はまぁスルーした方がいいだろう。


 とりあえず話を進めたい。

 タタラさんにはもう少し具体的なウィクルーアへの渡り方なんかのレクチャーを受けたいし。



「すいません、そろそろ本題に入りたいんですが。」


「それもそうだな。先程の件はまた後日でいいだろう。」



 後日まだするんだ。タタラさんの返答にうんざりした様子のガイ。その辺は勝手にやってくれって感じだ。



「えっと、また最初からの話になるんですけどウィクルーアへは俺が作った船で渡ろうと思ってるんですけど、タタラさんは船員と言うか船長と言うか船に関しての知識や技術を持ってる人が知り合いにいあるんですよね?」


「そうだな。一応そいつを紹介しようかとは思っている。

 ただ・・・、お前達と一緒に船に乗るかどうかはわからない。」


「まぁそうでしょうね。いきなり見ず知らずの人間と一緒に船旅をして欲しいと言われても難しいでしょうし。」


「それもそうだが、もっと別の問題もある。」


「別の問題?なんなんですか?」


「それは俺の口からはちょっとな。あまり他人の事情を話す訳にはいかないだろう。信用にもかかわる。」


「そうですね。ではその人とは紹介するから直接交渉しろってことですよね?」


「そうなるな。どうする?この後会いに行ってみるか?」


「いえ、先にエデバラって町に言って行商する人間を連れてこようと思います。一緒に船に乗ってウィクルーアへ渡るつもりなので。いきなり出航、ってことになる前に乗る人間は決めておいた方がいいでしょうし。」


「シロウと話してた件だな。分かった、ではそちらの準備が整い次第また声を掛けてくれ。その時に紹介するとしよう。」


「ありがとうございます。

 それと一応確認しておこうと思うんですが、タタラさんはどうされるつもりですか?」


「それは俺がお前達について行くというかどうかという事か?」


「えぇ。シータの事が心配でしょうし、そう思われてもおかしくないかなって思いまして。」


「大丈夫だ、自分の実力はわかっている。俺がお前達に付いて行っても足手纏いにしかならないだろう。その方がシータに危険が及ぶだろう。」



 俺が心配していたことがタタラさんにはわかっていたことだった。

 タタラさんも元Sランク冒険者だから実力はあるが俺達の足元にも及ばないだろう。もう今から奴隷契約なんかをしてレベルを上げてもそこまでスキルが上がるとは思えない。すでに上限を迎えてしまってるようなものだからな。

 タタラさんがシータが心配だからついて行くとか言ったらどうしようと思ったがそれは杞憂だったようだ。前回の依頼で俺達の実力も実際に見ているからそう思ったのだろう。



「申し訳ありません。シータは必ず守りますので。」


「それはそれでおかしいだろう。お前は勇者なのだから周りの人間がお前を守るのだろう。

 だがおかしなことだろうが娘を頼む。俺にはそれしか言えない。」


「はい、わかりました。」



 今後の方針も決定したしさっさと行動に移そう。いつまで時間があるかわからないんだから。


------------


「さてと。」


「どこなんだ?ここは。」



 声を掛けてきたのはガイだった。



「えっとどっかの倉庫かな。」



 そう俺達は今薄暗い倉庫の中にいた。俺は前に来たので知ってるがガイとブランは知らない場所だからだろう。



「人気のないとこに置いておいてと言ってたからこうなったんだろうけどね。」



 俺は分身体を倉庫の外に作って鍵を開けさせる。分身体に【解錠術(キーマスター)】を持たせれば倉庫の鍵なんて一瞬で開けることが出来る。

 倉庫の鍵を開け外に出る。

 とりあえずは一番最初に行くのはあそこかな。そう思い俺は知っている道を歩き出した。



「兄貴~っ!」



 道を歩いていると向こうから凄い勢いで走ってくる奴がいた。俺の事と兄貴を呼ぶのは1人しかいない。

 その人物が俺達の前まで来て立ち止まり息を整える。



「お久し振りっす、皆さん。」



 前と変わらぬ笑顔であいさつしたのはキースだった。

 俺達は【転移の門(ポータルゲート)】でエデバラの町へ来たんだ。



「今回は来たの分かったんだ?」


「そりゃ俺も進歩しますよ。ちゃんといつも【気配察知(サインシーカー)】で周りの様子を確認するようにしてますから。」


「そっか。」


「久し振りだな。」



 そう声を掛けたのはガイだった。アリアとシータは一応この間あったがガイとブランはかなりの久し振りの再会になるはずだ。



「あぁ~っ、ガイさん。お久し振りっす。なんか雰囲気変わりましたね。カッコのせいだけじゃないと思うんすけど、なんかこう凛々しくなったというか。」


「そりゃお前と一緒にいたことに比べれば格段に強くなったからな。」


「ほへ~っ、そうなんすね。」


「久し振りじゃな。」



 今度声を掛けたのはブランだった。



「ブランさんもお久し振りっす。なんか装備が凄くなってるっすね。」


「まぁのう。皆の装備もわしが作っておるし。神に教えて貰えばこれぐらい造作もないという事じゃ。」


「神様にですか!?いいな~っ、俺も作って欲しいっす。」


「時間があればな。ただお主もあまり鎧は着んじゃろ?服に関してはわしよりも適任がおるわい。」


「そうなんっすね。じゃあ無理っすね。」


「ん~、まぁあの人なら喜んで作ってくれると思うけどね。キースの見た目なら・・・。」


「どういうことっすか?」


「いや、何でもない。機会があったら会わせてあげるから。」


「そうっすか、お願いするっす。」



 2人の会話に俺が割って入る。

 キースも弓使いで基本的には遠距離戦をして鎧なんかは着ていない。胸当てぐらいだろう。だったら服でいいものを仕立てた方がいいだろう。

 しかし俺達の服を作っているのはあのベティーさんだ間違いなくキースであれば作ってくれそうな気がする。採寸したリしたいだろう。流石にベティーさんも既婚者相手であれば自重するか・・、いやわからない。だからあんまり紹介したくはないんだけど。いっそのこと俺の方で作るとするか。俺だって自分の服を作ったりしたし【玩具箱(トイボックス)】もあるんだから作れるはずだしな。そうすると採寸しなければならない。【魔裁師(マジックテーラー)】のスキルの中には目で見ただけで相手の体のサイズが分かるという能力もある。その為メジャーで体を測ったりする必要はない。

 だが俺には必要だ。そう俺だから必要なのだ。よしこの線だ。この線を押していけばいいだろう。目の保養位はさせて貰ってもバチは当たらないはずだ。



「そう言えば・・・。」


「あれ?こちらの可愛い子は誰っすか?」



 俺が提案しようと思って口を開いた瞬間にキースが発言した。

 キースの目線の先にはシータがいる。そうか、シータがこの姿になったのはキースは知らないんだった。



「お久し振りです。一度お会いしています。」



 シータがそう答えた。



「えぇ~っ!こんなに可愛い子と会ったことがあったら絶対に忘れてないっすよ。」


「まぁお会いしたころに比べれば大分背も伸びましたから。」


「ん~っ、背が伸びた?あれ、でも兄貴のパーティーってガイさんとブランさん、でそちらのアリアちゃんと後1人シータって子がいたっすよね?その子の姿が見えないっすけど。

 もしかして・・・?」


「はい、そのシータです。」


「うそ~~~っ、マジで!?こんなに可愛くなるの!?あの時もっとちゃんと話しておけばよかった~っ!」



 キースが絶叫する。

 おい待て、あの時既に結婚して奥さんも身重だっただろうが。ってチラリとガイを見るとちょっと怒ってるっぽい。う~ん、顔には出さない様にしてるけど気配が刺々しい。

 これ以上キースを放っておくと大変な事になりそうだ。



「えっと、色々と話したいことがあるからここへ来たんだ。とりあえず現状を説明したいからどこか落ち着ける所に行かないか?」


「そうっすね。じゃあまた俺ん家に来て下さい。兄貴の家でもあるんっすから。」


「えっ?あぁ、うん。ありがとう。」



 俺はそう返事をした。

 そして俺達はキースの家まで行った。そして以前と同じ部屋に通された。



「そうだ兄貴ちょっと待ってくださいね。」



 キースはそう言って俺達を部屋に残し出て行った。

 戻ってきたキースの傍らにはアマンダさんが。そしてその腕には赤ん坊が抱えられていた。それも左右にだ。



「えっ!?もしかして!?」



 俺がそれを見て驚いて聞いた。



「そうっす、俺の子供っす。双子だったんっすよ。」



 アマンダさんに抱えられた赤ん坊は俺達の声に驚いた様子もなくスヤスヤと眠っていた。

 それにしても色々と言いたい事聞きたいことがあるもんだ。アマンダさんも軽々と両腕に赤ちゃんをそれぞれ抱えているし、パワフルだな。



「それにしても双子だったとはね。」


「はい、俺もびっくりしたっす。しかもまた珍しいことに男と女の双子なんです。」


「えっ!そうなんだ?」


「はい、だから2人の名前はアポロとアルテミスにしました。どっちも使えて良かったっす。」



 キースは満面の笑みでそう言った。

 以前キースに生まれてくる子供の名付け親になって欲しいと頼まれていた。だから俺は1人でニルヴァースに行く前にもう一度ここへきて考えた子供の名前を伝えていたんだ。

 男の子だったらアポロ、女の子だったらアルテミスと。

 どちらも俺の世界の神様の名前だからどうかなって。そう言うとキースは喜んでその名前を付けさせてもらうっすと言っていた。

 しかしホントにそのまま名付けるとは思わなかった。



「いや、ホントに良かったの?自分達で考えなくて。」


「モチロンっすよ。俺達だったら良くある名前ぐらいしか思いつかなかったっすからね。流石にこの世界の神様の名前を頂く訳にもいかなっすから。」


「それはそうかもしれないけど・・・。」


「折角なんで抱いてやってください。」



 そう言ってきたのはアマンダさんだった。

 アマンダさんは俺の所に来て右腕に抱えた子を差し出した。正直今まで子供、それも赤ん坊を抱いたことなんて一度もない。ドギマギしながらそれでも俺は両手を伸ばしゆっくりと赤ちゃんを受け取った。

 俺の腕に抱かれてもその子は起きる様子もなく眠っていた。思わず【鑑定眼(アナライズ・アイ)】で名前を確認してしまう。

 俺の腕に抱かれているのはアポロだった。

 温かみのあるアポロを抱いているだけで癒された気持ちになる。



「じゃあこっちの子も。」



 アマンダさんはそう言ってアルテミスも差し出す。俺はゆっくりとアポロをアマンダさんの空いている右腕に戻し左腕のアルテミスを受け取る。

 アルテミスもアポロ同様に目を閉じ眠っている。2人共これだけの人がいたりするのに目が覚めたりしないんだな。もう肝が据わってるって感じがする。

 アマンダさんもスッと2人を受け取り抱くのに躊躇がないというかそんな抱き方でいいのかと思ったりするがこの子達もそれに慣れてるからか。

 アルテミスを見るがアポロとの違いが分からない。双子と言うか生まれてそんな経ってないからだろうか。



「ありがとうございます。」



 俺はそう言ってアマンダさんにアルテミスを返す。

 なんかいい体験をさせて貰ったというか、今までにない体験だったな。

 2人にはすくすく成長して幸せになって貰いたいもんだ。



「すいません、慣れていないものでどう抱いてもいいかわかりませんで。」


「えっ?はははっ、そんなこと気にされたんですか?大丈夫ですよ。うちの子はそんなにやわじゃないですから。」



 アマンダさんが笑いながら答えた。

 そうかもしれないけど何かあったら怖いし。



「それにしてもキースもお父さんになったのか~。」



 俺はしみじみとそう言った。



「はい、だからこいつらの分も頑張るっすよ。」


「はいはい、よろしく頼みますよ旦那様。」



 キースとアマンダさんが笑い合いながらそう言った。なんかいいな~、そう言うの。



「そう言えば兄貴って何か話が合って来たんすよね?すいません、こっちの話ばっかりで。」


「いやいや、そこまで急ぎの用事でもなかったから大丈夫。それにやっぱりタイタン商会に関係することだからケビンさんとかと一緒に話した方がいいかもしれないし。そっちへ出向いてから話しようかな。」


「そうだったんっすね。了解っす。んじゃ、俺また出てくるから。」


「はいはい、外で迷惑事起こさない様にね。」


「兄貴達と一緒にいるんだからそんなことする訳ないだろ。」


「一緒にいない時にも気を付けて貰わないとね、お父さんなんだから。」



 アマンダさんの方が一枚上手なんだろうな。手綱を握っているって感じだな。

 俺達はアマンダさんとアポロ、アルテミスに挨拶してキースの家を後にした。

 あの2人に会いに来ただけになったけどそれでもよかったな。


 それにしても。



「町の規模がまたデカくなった?」



 俺はこの町に来てから気になっていたことをキースに聞いた。

 以前に来た時よりも町の大きさが変わっている様だ。人の数も家の数も、壁に囲まれた範囲も広がっている。



「当然っすよ。兄貴が新しくくれた花の蜜だったり香辛料だったりを育てたらこうなるのは当たり前っすよ。全然行商とかも追いついてないっす。危険を冒してこの町まで買いに来る奴もいる見たいっすよ。」


「あぁ、そう言えばそんなの渡したな。」


「兄貴にとってはその程度なんすね。兄貴のお陰で美味いもの一杯食わせてもらってるっすよ。

 甘いお菓子なんて今まで食ったことなかったっすもん。」


「あぁ、そっか。果実とかはあったけど甘いお菓子とかってなかったもんね。

 そう言うののレシピとかも商会に渡したら普及してくれるかな。」


「当然すよ。まだまだ試行錯誤でやってて大変だってケビンさんとか言ってましたもん。」


「ケビンさんが?」


「はい、ケビンさんはこの町の長の1人だから町の人間からの相談とかも受けたりしてますもん。」


「あぁ、そうか。ヒューイさんとかは商業ギルドの人だし、ロイドさんも冒険者ギルドの人か。町の人の相談とかはケビンさんの所に行くか。」


「そうっすね。タイタン商会が蜜を売ってるってことなんでどう使ったらいいかとかよく聞かれるみたいっすよ。」


「それはそうだね。そこまで考えておけばよかった。塩は皆使い方分るだろうけど蜜とかはあんまり出回ってないもんね。だったら香辛料の方もなにかレシピを伝えておこうか。」


「それはものすげぇ喜ばれると思うっすよ。」



 そんな話をしながら俺達はタイタン商会へ向かった。

 

お読みいただきありがとうございます。

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