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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
【新大陸へ】
211/237

魔人の村

「ただいま戻りました。」



 俺がそう声掛けたのはマイヤーさんにだ。

 暫く時間を置いてから俺達は村に戻ってきた。結局のところ山の方も探ってみたが特におかしな気配などはなかった。完全にブラフなんだろう。

 そして村に戻りマイヤーさんの家を見付け戸を叩き言ったんだ。



「これはこれは、よくお戻りになられました。心配しましたよ。」



 そう言ってマイヤーさんは笑顔で出迎えてくれた。



「すいません。特に成果と言う成果はないんですが。」



 俺は一応申し訳なさそうにそう言った。



「いきなりは無理ではないでしょうか。じっくり腰を据えて調査を行って頂ければよろしいかと思います。」



 マイヤーさんも少し申し訳なさそうな顔をしてそう返してきた。



「よろしければお入りください。お茶でもご用意しますよ。」



 そう言ってマイヤーさんは俺達の事を家に招き入れてくれた。

 失礼しますと言って俺達はぞろぞろとマイヤーさんの家にあがらせてもらうことにした。

 家に入るとそこそこの広さがあった。流石は村長をしているだけの事はあるってことなんだろうか。

 入ってすぐにリビングの様な部屋が広がっていた。村長の家だし普通の家よりもお客さんとかが来るからなんだろうか。



「どうぞおかけになって下さい。すぐに家内にお茶を入れる様に伝えます。」


「いえ、お構いなく。」


「いえいえ、是非に。大したものではありませんがこれぐらいはさせて下さい。」



 マイヤーさんはそう言って家の奥に消えていった。

 俺達は勧められたとおりにテーブルを囲み座った。俺達全員が座ってもテーブルにはまだ余裕があった。

 ほどなくしてマイヤーさんと女性が奥からお盆の様なものを両手に持ち出てきた。

 女性がマイヤーさんの奥さんなんだろう。が、本当の妻かどうかは怪しい所だが。



「マイヤーの妻ヘレンと申します。」



 女性がそう言って軽く会釈した。手に盆を持ってるからだろう。俺達もそれに合わせ会釈した。

 そしてヘレンさんは俺達の前に飲み物が入った器を置いて行く。一見すると紅茶の様だな。



「どうぞ。ここいらでのみ取れる薬草を煎じ、煮出したものです。お口に会うかはわかりませんが体にはいいんですのよ。」



 全員に飲み物を配り終えヘレンさんがそう言った。



「では折角ですのでいただきます。」



 俺はそう言って器を手に取り一気に煽る。



「独特の味がしますね。美味しいかと言われると何とも言えないんですが・・・。」



 俺は口にした飲み物の感想を素直に言った。正直本当に微妙な味なんだ。

 苦過ぎず、甘くもなく、もちろん辛い訳でもない。何種類かのお茶を足して少しえぐ味を加えた感じと言えばいいだろうか。

 仲間達も折角出されたものだからと一応は口を付けたみたいだが微妙な表情をしている。

 タタラさんは一応全部飲み干したみたいだが俺が渡したジュースみたいな感想は出てこないみたいだ。

 それにしても・・・。



「なんだか眠気が・・・。」



 俺はそう言ってあくびをした。



「やっぱり旅の疲れが出たんではないでしょうか?」



 マイヤーさんが優しくそう聞いてきた。



「そうかもしれませんが、こんな急に・・・。」



 瞼が重くてしょうがない。仲間達を見ると同様にうつらうつらとしている様だ。



「大丈夫ですよ。眠ってる間に全て終わりますから。」



 マイヤーさんのその言葉がどこか遠くの方で聞こえた。そこで意識が闇に落ちていき・・・。

 な訳ない。

 そう演技しているだけだ。

 そもそもこの村が魔人の村であることは事前にわかっているんだ。出されるものに警戒しない訳がない。当然ずっと【鑑定眼(アナライズ・アイ)】を使っている。

 ヘレンさんに出されたお茶みたいな飲み物は完全に人を眠りにつかす成分がふんだんに入っていた。

 恐らく今までの冒険者達もこうして一服盛られたんだろう。

 何故冒険者達は気付かなかったのか。

 そもそもそう言った鑑定系のスキルは商人やそれに付随する職業の人達が多く持ってるスキルだ。

 正直冒険者で鑑定系のスキルを持ってる人間なんてほとんどいやしない。だから出されたものが有害であるかどうかなんてそうそう判別つかないってことだ。

 この村から依頼が出ていて、その村の村長が冒険者に一服盛る、そんなこと予想しないだろう。

 味で有害かどうかなんてわかる人間も少ない。

 あったとしてスキルで【毒耐性】なんかの耐性スキルぐらいだろうが、今俺達が飲まされたものは耐性スキルぐらいでは抗えないタイプのものだ。

 俺に関してはスキルで【異常状態無効】のスキルがある。これを使えば睡眠なんかの異常状態になることはない。ただ今回のケースは完全に防げるかわからなかったからそもそも一口も飲んでない。飲んだ振りして【倉庫持ち(アイテムボックス)】に入れた。味に関しては【料理人】のスキルで見ただけでどんな味がするかすわかるだけだ。そしてどういう効果があるか分かっているので眠ったふりをしただけだ。



「ふん、他愛もない。Sランクの冒険者を目指している様だがこんなものか。」



 マイヤーさんが吐き捨てるようにそう言った。口調や声のトーンも先程度は違っている。



「まぁいい。とりあえず運ぶか。」



 ヘレンさんが先程とは違う声でそう言った。

 運ぶ?どこかに連れて行かれるのか。しばらく様子を見るか。

 俺はこのまま寝たふりを続けることにした。【偽装(イミテーション)】のスキルを使っているから俺が本当は起きているってことには気付かないだろう。

 いつの間にか俺達の周りには別の者が増えていた。気配では奥に何人かいたのは気付いていた。それが俺達が眠ったのが分かったので出てきたんだろう。

 俺達はそれぞれの魔人達に肩に担がれ揺られ、運ばれる。

 よくガイやブランも担げるな、かなり体重ある筈なんだが。そこはやはり人とは違うという事だろう。

 

 暫く揺られると前方に掘っ立て小屋の様なものが見えてきた。この村の倉庫か何かなんだろうか。

 その小屋の前には既に魔人の姿が見える。俺達が近づくのを見てドアを開けた。そして開いたドアからぞろぞろと中に入って行く。狭い小屋に入ってどうするのかと思ったが入るとすぐに地下に向かう階段が見えた。

 なるほど地下に何かあるってことか。

 俺達は担がれたまま地下への階段を下っていく。結構深いところまで続くみたいだ。

 正直担がれたまま階段を下りて行かれるのはしんどい。上下にかなり揺さぶられる。向こうはこっちが眠ってると思ってるから気にもしないんだろうが。早く目的地についてくれないものか。

 そう思った矢先に廊下の様な所に出た。廊下と言うか昔潜った迷宮の通路みたいな感じだな。土をくり抜いただけの簡素な通路って感じだ。

 その廊下を進む。どこまでこの地下空間が存在しているんだろうか。まぁこの世界魔法がある分地下に空間を作りやすいと言えばそうなんだろうが。元々地上で場所がないのならそうした方がいいだろう。しかしまだまだ開発されていない土地が多くあるこの世界でわざわざ地下に空間を作る必要性がない。それが必要という事は人に見られたくないものを隠す時なんかに限られてくる。今の場合は完全にそうだろうがな。

 しばらく進むと大きな空間に出た。そうか、迷宮と言うよりもここは【アーミーインセクト】の巣に似ているのかもしれない。そしてここは女王がいた場所の様な雰囲気だ。

 天井も高く広く何もない場所にかなりの数の気配がある。俺は肩に担がれているので目線を上げることが出来ない。ある程度の気配だけで判断している。【索敵(レーダ―)】のスキルを使えば下を向いたままでもこの空間の詳細な情報を得ることが出来るだろう。しかし相手にそれなりの使い手がいれば魔素の動きなどでバレる可能性がある。今暫くはこのまま眠ったふりをしている方がいいだろう。動く気になればすぐにでも動けるんだし。

 なんてことを考えていると体が浮く。ブンと体を掴まれて投げられたみたいだ。無茶な事をするもんだ。しかし狸寝入りをしているのがバレても困るので動けない。スキルで【物理攻撃耐性】を付ける。

 ドサッと体が地面に落ちた。この空間が部屋と呼べるのかわからないがその中央の方へ投げ飛ばされた様だ。周りでドサドサ音が聞こえるので仲間達も放り投げられたみたいだな。

 俺達は全員この空間の丁度真ん中あたりに固められた。さてこの後どうなるかだな。



「村に新しく来た冒険者共です。」



 声からするとマイヤーさんか。誰かに説明したみたいだが。



「そうか。なかなかと早かったものだ。」


「えぇ、一応Sランクを目指す冒険者だからでしょう。」



 マイヤーさんの言葉に答える誰か。あれか、俺達が前の冒険者が来たよりも短い間隔でやってきたことについて聞いたんだろう。トレーラーハウスぶっ飛ばしてきたからな。



「Sランクを目指しているから使えるかはわからない。」


「それはそうでしょうが、すぐに試しますか?」


「あぁ、このまま置いておいてもしかたあるまい。結局やることは一緒なのだから。」


「わかりました。ではその様に。」



 2人の会話は打ち切られた。そしてすこぶる嫌な予感しかしない。

 動くならココだな。

 俺は無言で立ち上がり、北斗を抜き構える。



「これはどういうことだ?」



 1人が俺を見てそうマイヤーさんに聞いた。



「そんなはずは・・・。」



 マイヤーさんが顔を青ざめそう呟く。

 俺は冷静に状況を確認する。

 この空間は半球状の部屋の様だ。天井までの距離、壁までの距離がほぼ一緒なので綺麗に半球の空間をくり抜いたみたいな感じになっている。ただ天井の一番高いところまでは30m位ある。となると出口の方も30m位先になる。

 そこにかなりの人の数。30人弱ってところか。それが俺達を取り囲んでいる。

 目の前のマイヤーさんとその隣にいる者へを目を向ける。そこにはどう見ても人ではない者が腕を組んでこちらを睨んでいた。


 その姿はリザードマンに似ていた。しかし頭が2つあった。双頭のリザードマン、この世界には亜人としてはいないはずだ。【鑑定眼(アナライズ・アイ)】で確認する。



名前:アカラサ-

種族:魔族

性別:男


スキル:

【闇魔法 LV.8】

【体術 LV.3】

【影魔法 LV.3】

【闇走り】

【MP高速回復 LV.2】

【気配察知 LV.2】

【スキル習得度アップ LV.2】

【毒生成 LV.5】

【毒粘液】

【毒ブレス】

【毒耐性】

【麻痺耐性】

【睡眠耐性】



 思った通り魔族だったってことだな。予想していたパターンの1つだ。

 魔族が今回の首謀者、裏で操っているってことだ。しかし毒系のスキルと闇魔法系のスキル持ちか。

 そう思ってアカラサーを見る。蛇の様な鱗に覆われていて、服は司祭と言うか僧侶と言うか。鎧ではなくゆったりとした服に身を包んでいる。ぱっと見リザードマンかと思うが違いは鱗の色と双頭ってところだろうか。鱗は紫と黒が入り混じったような色をしていた。4つの目が俺の事をじっと見ている。



「ここは一体?俺達に何をした?」



 俺は声を少し荒げた風にしてそう言った。何も知らないふりして引き出せるだけ情報を引き出してやる。



「答える必要はない。」



 アカラサーは冷たくそう言った。



「お前は、リザードマン?双頭のリザードマンがいるなんて聞いたことない。

 皆眠らされてるのか。残念だったな、俺には【睡眠耐性】のスキルがあるんだ!」



 俺は周りを見回し力強くそう言った。耐性ぐらいでどうにかなったかわからないが個人差もあるし。ステータス見て魔族だってことは知ってるが、こちらがが弱い冒険者だと思ってくれる方が色々と話してくれる可能性が高い。



「スキルのせいで眠りが浅かったのかもしれません。」



 アカラサーの隣でマイヤーさんがそう言った。



「なるほどねぇ。大人しく眠っていれば怖い思いをしなくても済んだのにねぇ。」



 アカラサーが目を細め楽しそうにそう言った。今話したは先程話していた頭とは別の頭だった。性格が違うのか?それはどっちでもいいけど。



「怖い思いだと?まさか今まで冒険者が返ってこないって言うのもお前の仕業なのか?」


「だとしたら?」


「お前を倒して皆を助けるまでだ?」


「助けるだって?笑わせてくれる。お前達。」



 アカラサーがそう言って傍にいた一団に目で合図をした。数人の人物が立っていたところから数歩前に出る。



「助けるってどうやって?お前達見せておやり。」



 アカラサーの1つの首がそう告げる。先程前に出た数人の肌の色が変わる。人の肌から鱗へ変貌する。その色はアカラサーの鱗と同じだった。



「何が起こって・・・。これは一体どう言う事なんだ・・・。」



 俺は呆気にとられた様な声を出す。言っておいてなんだが今は大体の予想は着いている。



「そいつらはお前が助けるって言った冒険者達の成れの果てだよ。さぁお前はそいつらをどうやって助けるって言うんだね。」



 アカラサーは嬉々として俺にそう言った。

 あぁ、とっくの昔にわかっていたさ。俺達より前に来た冒険者達がすでに魔人に変えられてるってな。

 俺も以前の調査に来た冒険者の情報はタタラさんから聞いている。冒険者の捜索も必要だったから名前や顔の感じ、その他諸々聞いてある。生きている死んでいる共わからなかったからな。

 【鑑定眼(アナライズ・アイ)】で目の前にいる者達のステータスの名前を見て行方不明になっている者達だってわかっている。そして種族も【魔人】になっていたことも確認済だ。



「そんな、何がどうなって・・・。人じゃなくなってるのか?そんなことがあるなんて・・・。」



 俺は混乱している感じを出した。ここまでは予想している範囲内だ。ただその先の事が知りたいんだ。



「お前ら一体何をしたんだ?まさかマイヤーさん達も?」


「当たり前じゃない。ここには人間なんてあんた達しかいないわよ。」


「人が人じゃなくなる・・・、そんなのリザードマンに出来る訳が・・・。もしかしてお前魔族なのか?」


「ご名答。正解したご褒美にあんたもあいつらと同じにしてあげるわ。」


「なんだと?俺に何するつもりだ?」


「さぁ?なんだと思う?分かりっこないと思うけどね。」


「もしかしてお前は人を人じゃない何かにすることが出来るってことなのか?」


「あらあら、あんまり賢いのも褒められた物じゃないわよ。恐怖が大きくなるだけだから。まぁ私はそれが楽しいのだけれども。」


「あまり話すな。」



 アカラサーのもう一つの頭がそう(たしな)める。1つの頭が冷静な男でもう1つが高圧的な女性の様な印象を受ける。



「あら、あなただったあいつの慌てふためく姿を楽しんでいるのでしょう?あなたは私と同じもの、それぐらいわかるわよ。」


「だとしてもそれ以上詳しく話す必要はあるまい。」


「どうせあいつもこいつらと一緒になるか、死ぬだけでしょ。良いじゃない、少しぐらい楽しませてもらっても。」


「舐めるなよ!簡単にやられてたまるか。」



 俺が吠える。【偽装(イミテーション)】を使っているから俺の演技はちゃんと通じてる様だ。具体的な話を聞きたいがそこまでは難しそうだ。今にも元冒険者組は襲い掛かってこようとしている。

 まずは相手をしてみてからか。

 そう思い俺は北斗を構え直した。

お読みいただきありがとうございます。

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