最終戦
さて次でとりあえず最後だ。最後の相手はスミス・スパイダーだったっけ。
俺はスキルを付け替えて3度目になる索敵をした。
大分この索敵も慣れてきたので【気配察知】はブランに聞いたスミス・スパイダーの形っぽいものを探すイメージで使う。
【千里眼】は見付けた場所の全ての光景をいちいち見ることなく見付けた気配の影というかシルエットくらいを見るぐらいに止めた。
【鑑定眼】も名前だけ分かればいいやと思って使っている。
俺中心に直径1キロの地図に赤い点がいくつもあり、点滅している点に集中すると大体の姿形と名前が表示される。
そんなレーダーみたいな使い方が出来た。こうすることで使用するMPも大分抑えることが出来た。何でもやってみるもんだな。
そうするとすぐに見つかる。
結構こっから近いな、と思ったらこっちに向かってくる?ゴブリンの血の匂いに引き寄せられたんだろうか。
「スミス・スパイダーがこっちに向かってくるみたいだ、今回は魔法を使って倒そうと思う。」
2人に急いで伝えて俺はスキルを付け替える。
魔法での戦闘も試してみたかったし、遠距離戦闘もどんな感じになるか知っておきたかったからだ。
ガサッと音がして現れたのは想像してた見た目と違ったスミス・スパイダーだった。
索敵の時に見たシルエットもなんか違うな~と思ってたけど実際に見てみたらかなり異様な姿だった。
頭は蟻の様な感じで横に開く鋭い口で、腹は頭に比べてかなりデカい。頭が野球のボール位の大きさなら腹はラグビーのボールの様な比率だ。尻はあるのか?胴体が大きくてそこまで見えない。足は硬そうな毛が生えていて長い。腹の両方からくの字に見える様に生えている。雰囲気は昆虫の足の様だ。
想像したより全体的にデカかった。体長2mぐらいあるんじゃないか。
いや~、無理だわこれ。
生理的に受け付けない。
当のスミス・スパイダーは触角の様な物をしきりに動かして様子を探っている様だった。
とりあえず匂いに釣られてやってきたものの、俺達の姿を見てどうしようか悩んでいるって感じかな。
と思ったら長い足をシャカシャカ動かして俺達の方に向かってきた。
獲物と認識された?
しかし迫ってくる姿が超気持ち悪い。プチパニックになりそうだ。
「【岩の槍】」
俺は叫びながら右足を大きく振り上げ、ドンっと音がする位に大地を踏む。
するとスミス・スパイダーの下から岩の槍が天に向かって突き出した。鋭く伸びた岩の槍がスミス・スパイダーの腹を串刺しにする。
岩の槍はそのまま伸びスミス・スパイダーの身体が宙に持ち上がる。背中から岩の槍が見えていて胴体を貫通したみたいだ。
スミス・スパイダーはキシャーッと叫びながら足をバタつかせて暴れたが宙に浮いている為岩の槍が抜けることはない。
追い打ちをかけようかと思ったが足のバタつきが止まり、頭もくたっと力を無くしたので事切れたんだろう。
は~っ、びっくりした。
心臓に悪い。
急に来るとか、心の準備ってもんがあるだろ。
もしかしたらこんな感じで襲われることもあるかも知れないから、良い経験をしたと思っておこう。
しかしとっさだったけどちゃんと魔法使えてよかった。
森の中なんで火の魔法は燃え移ったりしたら困るし、水の魔法は水ないところでどれくらいの威力になるかわからなかったし、風の魔法も木々に遮られたりして使えないかもしれないから土の魔法選んだけど上手くいったみたいだ。
外装が硬くて岩の槍が効かなかったらヤバかったけど大丈夫みたいだったな。
「結構驚いたけどなんとかなったな。」
俺は魔力を操作しながら突き出た岩の槍を地面に戻しながら言った。
岩の槍が完全に地面の中に戻り地面にスミス・スパイダーの死骸が横たわる。
「そうですな。気付いた時にはスミス・スパイダーが宙に浮いていてびっくりしましたわい。」
斧を構えていたブランが背中に斧を直しながら言った。
「あそこまで早くて鋭い岩の槍を作れて、しかも動いてる相手に正確に当てれるとは思わんかったわい。」
ブランも土魔法を使えるんだよな。
俺の場合は単に持ってるスキルのおかげだろうけど。
他の人が魔法を使って攻撃しているのを見たことないから凄いんだか何だか自分ではわからないんだけどね。
「とりあえず尻を回収せんとな。」
そう言ってブランはスミス・スパイダーの方へ行った。そう言えば持って帰る部位って尻の部分だったっけ。
戻ってきたブランの手にはバレーボールくらいの塊があった。
これがスミス・スパイダーの尻の部分なのか。こっから糸を出すんだっけ?
「そいえばスミス・スパイダーって普通はどうやって討伐するんだ?」
気になったので聞いてみた。
「普通じゃったらエサで誘き寄せて弓で射たり、魔法で仕留めたりするかの。
貪欲に何でも食べるからすぐに寄ってくるが、食べだすと食べることに集中して周りをあまり気にしなくなりおるからな。
外側はそこまで硬くないから剣とかも通るが近づくと糸を出してこちらの動きを止めてくるからの。」
ブランが丁寧に説明してくれた。やっぱり遠距離で戦ってよかったのかも。
さてと依頼も達成したようだから街に戻ろうか。
「やること終わったし街に戻ろうか。」
俺がそう言うと2人共なんだか納得していないような顔をしていた。
「どうしたの?何かあった?」
「いや、俺達戦ってもいないけどいいのかなって。
特に俺は突っ立ってただけでホントに何もしてないしな。」
ガイが答えるとブランも深く頷いていた。
「今回は俺が色々とやりたいことがあったから仕方ないという事で。
次からは多分一緒に戦ってもらうと思うからよろしくね。」
そう言って俺は街へと歩き出した。




