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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
【魔法大国 スラグスル】編
180/237

初戦

「じゃあ作戦だけど、今回はプランCかな。」



 俺達が今いるのは闘技場に入る前の通路だと思ってもらえばいい。

 闘技場には北と南にそれぞれ中に入る為の通路が設置されている。扉もついていてまだ闘技場は見えない。

 そこで最終的な打ち合わせなんかが出来る。恐らく向こうのチームもこうしてどうやって戦うかなんてことを話しているのかもしれない。

 しかし決定的に違うであろう点は俺達には相手チームがどうやって戦うかが予想出来ている点だ。

 正確に言うと俺にはってことだけど。

 開会式で選手全員が集まった時に俺は当然の様に【鑑定眼(アナライズ・アイ)】で全員のステータスなんかを確認している。【完全記憶(パーフェクトメモリー)】のスキルも使っているから誰がどんなスキルを持っているかもちゃんと全員分頭に入っている。

 その上で今回はプランCで戦おうと2人に伝えているんだ。



「お前がそう言うんだったら構わないんだけど。それでホントに大丈夫なのか?」



 ベックが俺にそう言った。



「うん、大丈夫だと思う。プランCは応用が利くからもし駄目でも次の作戦に移れるし。」



 俺は笑顔でそう言った。



「僕なんだか緊張してきたな・・・。」



 アーサーが不安そうな顔でそう言った。



「大丈夫だよ。多分あっという間の事だろうしね。」


「お前がそう言うとホントの事になりそうだよな。」


「多分ホントの事だと思うよ。紹介されてる時間の方が試合時間より長いんじゃないかな?」


「そうなのかな・・・。」


「そうそう、気楽に構えて大丈夫だよ。多分特訓の方が大変だったかもしれないし。」


「「それはそうだと思う。」」



 そうベックとアーサーがハモって言った。

 そんなことを話していると俺達の前の扉が開いた。いよいよ入場の時間になったみたいだ。

 とりあえず俺を先頭にベックとアーサーが続いて闘技場の中へ入って行く。

 会場からは声援と拍手なんかが聞こえてくる。

 正面を見ると相手チームの面子も俺達と同じように入場して来ていた。



「さぁ、第2試合ですね。

 まずは北口から入場してきたのはチーム【橙の土竜】。対しますは今回初出場となる初級クラスチーム、【円卓騎士団】です。」



 フィリップ先生が俺達と相手チームの紹介をしている。

 ちなみにわかると思うが俺達の方が【円卓騎士団】だ。メンバーの中にアーサーって名前の子がいるし、俺も今はナイトだからという理由でつけた。魔法使いなのに騎士団なのかってことだが名前なんてなんでもいいし。ベックもそれにちなんだ名前だったらよかったんだけどな。ランスロットとか、モードレットとか。2人には何のことだかわからないだろう。俺の世界での話だし。

 フィリップ先生はそのまま俺達と相手チームの1人1人の名前や得意魔法を紹介していっている。

 向こうのチームは全員がチーム名からも推測できるように土魔法の使い手だ。専門クラスでチームを組んだんだろう。

 俺は事前にわかってた。だから戦闘プランも簡単に決めることが出来たんだけど。

 俺達の事も紹介されている。

 ベックは火魔法を中級程度まで使えると紹介されて会場がどよめいた。そうなろうと思ったらスキルレベルもそれなりに必要だ。初級クラスでは使える奴はいない。普通であればね。だけど俺が教えたんだ、それなりの時間がかかったが。

 アーサーは支援と回復魔法が使えると紹介されていた。その通りで間違いない。他の魔法も教えようと思ってけど、下手に色々やるよりも1つを突き詰めていった方が今はいいだろうと思って支援と回復魔法だけに絞って教えた。

 俺の紹介は土魔法と水魔法、その中でもオリジナルの魔法を使うと紹介された。そこでまた会場がどよめいた。そりゃそうだろう。たとえ【魔法作成(マジッククリエイト)】のスキルを持っていたってそうそう簡単に新しい魔法なんて作れるわけがない。

 俺の紹介を聞いて相手チームが驚いた顔をしていた。向こうとしては初級クラスのチームと当たってラッキーとでも思ってたのかもしれないな。

 残念だがとっとと勝ってゆっくりさせてもらおうか。



 全員の紹介が終わってアリアが【闘技場(コロッセオ)】の魔法も発動した。

 もう戦闘が始まる。俺は2人の顔を見る。ベックは笑みを浮かべていたが、アーサーはまだ緊張しているみたいで表情が険しかった。

 そんなに心配しなくてもいいのに。



「では、第2試合、開始です。」



 フィリップ先生がそう宣言した。



「清き水よ、我に力を。その力で彼の者より我が身を隠せ。【深淵の霧(ディープミスト)】。」



 俺は速攻で詠唱して魔法を発動させる。相手チームは詠唱の半分も終わっていない。

 俺の手から放たれた霧が相手チームを包む。



「おーっと、これは一体!?」



 フィリップ先生の声が響く。



「ナイト君のオリジナルの魔法ですね。霧を生み出し、相手の視界を奪う魔法です。」



 アリアが冷静に俺の魔法を会場にいる観客に説明する。



「おい、何も見えないぞ。」

「どこに魔法打てばいいんだ?」



 相手チームの声が聞こえる。

 だろうな、【深淵の霧(ディープミスト)】に包まれれば10cm先すら見えなくなる。



「燃え盛る炎よ。我が前の敵に・・・。」



 そこにベックの魔法を詠唱する声が響く。ベックはわざと大きな声で詠唱している。これ見よがしに相手に聞こえるようにだ。



「まずいぞ、こんな状態で魔法を放たれたらどこから飛んでくるかわからない。」



 相手チームの1人がそう叫ぶ。



「取り合えず、壁を作るぞ。」



 別の声が聞こえ全員が同じ詠唱を始める。



「「「【土の壁(アースウォール)】」」」



 相手チーム3人の声が重なる。そして相手チームの周りを囲むように土の壁が出来上がる。

 全方位に壁を作って魔法を防ぐつもりで3人共同じ魔法を使ったんだろう。

 しかし見えない為か壁の位置も適当だし、辺に干渉してデコボコとした壁になっている。俺は【索敵(レーダ―)】で相手の位置もわかるし、出来た土の壁の位置もわかる。

 一応3人は自分達の声を頼りに手が届く位の位置に集まったみたいだ。

 しかしそれがこちらの狙いなんだけどね。



「大地よ、我に力を。我が前に塔を築け。【土の塔(アースタワー)】。」



 俺は適当に詠唱する。正直無詠唱で魔法を使えるが一応詠唱しているというのをみせとかないといけないし。

 俺が今使った魔法は単純に土を使い、塔の様に上に伸ばしていくという魔法だ。高い所とかに上る為に使う魔法だ。普通だったら自分の足元の土を指定して、そこの部分を高くしていくんだが今回は違う。

 指定したのは一塊になっている相手チームの足元だ。



「なんだ!?」



 相手チームの驚いた声が聞こえる。

 そりゃそうだろう。急にエレベーターに乗って上昇するような感覚に襲われたんだ。それが視界の利かない中だったらびっくりするだろう。しかし俺は魔法の発動を止めない。ぐんぐんと3人を乗せた足場は高さを増していく。



「いったい何が起きているんでしょう?」



 霧で何も見えないフィリップ先生がそう言った。

 すぐにわかると思うよ。

 俺がそう思ったら相手チームの3人が霧から出てきた。しかし上の部分からだ。



「おーっと、どういうことだ!?【橙の土竜】の3人が霧から出てきた。しかし上からだとは?もしかして霧から逃れる為に上に避難したのか?」



 解説席は少し高い位置にあった為3人が霧から出てきたのは見えたんだろう。そして足元には土の足場が見える。となると本人がその魔法を使ったと思っても仕方がないだろう。

 しかしそんな事したら完全に悪手だと思うけどな。


 3人を乗せた足場は既に10m以上の高さになっている。闘技場の天井が高くて良かった。霧自体は高さについては3mもなかった。霧から出てもその高さまで普通は足場を伸ばさないと思う。

 後は仕上げかな。

 俺はそう思ってベックの方を見た。ベックは頷き言葉を発する。



「【火炎弾(フレアボム)】」



 ベックの右手から直径1m程の火の玉が発射される。そして狙い通り真っすぐ進み、目の前の土の塔にぶつかり爆発する。

 俺が作った土の塔の耐久力は大してない。3人が作った土の壁の半分以下の強度だろう。

 だからベックの魔法が当たったらどうなるかなんて簡単に想像がつく。



「「「うわぁ~~~。」」」



 相手チームの3人の叫び声が重なって響く。

 ベックの魔法を受けた土の塔が崩れ落ちたんだ。当然上に乗っていた3人もその倒壊に巻き込まれて真っ逆さまに地面に落ちていく。

 ドンっと言う大きな音が響く。

 土の塔が崩れたために大量の土煙が上がり霧も相まって全く何も見えない状態だ。



「おっと、【橙の土竜】全員の魔法具が壊れた模様です。」



 フィリップ先生の声が響く。その声を聞いてアリアが【闘技場(コロッセオ)】を解除する。霧は消えたが土埃は魔法の効果ではないのでそのまま残っていた。風魔法を使える別の先生が闘技場の中に風を入れて、全ての土埃を一か所にかためた。

 視界がクリアになった状態の闘技場を見ると【橙の土竜】の3人が仲良く一緒にのびていた。

 運のいいことに土の塔の残骸は上には降りかからなかったみたいだな。

 まぁあれぐらいの高さから落ちただけなら怪我1つしていないだろう。

 俺が作った魔法具だ、耐久度はどれぐらいあるか把握している。ちゃんと土の塔の高さも計算して作ったんだ。



「それにしてもどういうことだったんでしょうか?」



 解説役のフィリップ先生も今の俺達の戦闘についてよくわかっていないみたいだ。

 仕方がない。俺はそう思ってアリアに【念話(テレパス)】で話しかける。



「それはですね、私が解説いたしますわ。」



 アリアはそう言って俺の教えた通りの内容を話し始める。



「まずはナイト君がオリジナルの魔法を使い霧を発生させ、相手の視界を奪ったんです。

 視界を奪われてしまうとどの方向へ魔法を放てばいいのかわからなくなり【橙の土竜】のチームは混乱したのでしょう。

 その後ベック君がこれ見よがしに大きな声で威力の高い魔法を唱えだしました。

 その詠唱を聞いた【橙の土竜】チームはどこから魔法が飛んでくるかもわからない状態に陥ったのです。その為、3人が1つの所にかたまり周りを土の壁で覆って防御しようとしました。

 ナイト君はそこを狙い【橙の土竜】のチームの人の足元に土の塔を作ったのです。そしてその上に乗った3人はそのまま持ち上げられて高い位置へ移動させられました。

 そこへベック君が爆発系の炎の魔法を土の塔へ向けて放ちました。

 【橙の土竜】の皆さんは土魔法しか使えません。今近くにある魔法の材料となる土は足元の土の塔しかありませんでした。防御にその土を使ってしまっても土の塔は崩れてしまいますし、ベック君の魔法が当たっても崩れ落ちる。そう言う状況に追い込まれてしまったんです。ここで使える魔法が水魔法だったなら水でクッションを作り飛び降りたりすることは出来たかもしれません。後は風魔法であればそのまま風で壁を作れたかもしれませんわね。」


「その状況を【円卓騎士団】の、初級クラスの子供達が作り出したという事ですか?」



 フィリップ先生が驚いてアリアに聞く。



「えぇ、相手の使える魔法の種類を考え、有効な攻撃方法を考えたということですわね。

 魔法を攻撃に使うと言うのは何も直接魔法をを当てるという訳ではないという事です。ナイト君が使った魔法はどちらも攻撃魔法に属するものではありませんからね。」


「なるほど、そう言った考えもあるんですね。」



 フィリップ先生がう~んと唸りながらそう言った。



「それにしても、あの若さでどうすればあのような魔法の使い方を思いつくんでしょうか。」


「それは・・・、色々な経験をしたとしか言えませんわね。」



 アリアが濁して答える。



「しかし会場はかなり驚いている様子ですね。この会場にいた殆どの人は【橙の土竜】が勝つと思っていたんではないでしょうか?」



 フィリップ先生が周りを見回しながらそう言った。確かに会場中がざわざわしている。お偉いさん方も近くの従者みたいな人と何やら話してるみたいだ。まぁ俺には関係ないだけどね。



「そう言えば忘れておりましたが勝者は【円卓騎士団】チームです。

 闘技場を準備するので担当者はすぐに会場の整備をお願いします。」



 フィリップ先生がそう言ったので俺達はそのまま元来た扉の方へ歩いて行った。

 闘技場の中をかなり滅茶苦茶にしてしまったしな。元に戻すには土魔法を使ってってことなんだろうけど時間は少しかかりそうだ。

 フィリップ先生が宣言してから会場からは拍手が聞こえた。その拍手を聞きながら俺達は通路まで戻ってきた。



「何とか勝てたね。」



 アーサーがそう言った。



「何とか?言った通りあっという間だったでしょ?完全に思った通りの成果だし。」



 俺が答える。



「あぁ、そうだな。あんなに上手くいくとは思わなかったぜ。」



 ベックが答える。



「まぁでも今回の試合を別のチームも見てただろうから、次からはそうそう簡単にはいけないかもしれないけどね。」


「そうなの?」



 アーサーが心配そうに聞いてくる。



「でも大丈夫。戦う手段はいくらでもあるんだから。また後のチームも見ていって対策を練ったらいいだろうしね。」


「おうっ、これなら俺達も優勝できそうな気がするぜ。」


「出来そうじゃなくてするんだよ。折角特訓をしたんだしね。」


「そうだな、それぐらいのご褒美がないとあの地獄の苦しみとは釣り合わないな。」



 ベックがそう言った。

 正直優勝する以外考えてないし。優勝する方法なんていくらでもあるしね。視界さえ塞げば何でもありとか。俺もそこまで鬼ではないのでそんなことするつもりはないけどね。

 とりあえず次の試合まで結構時間ありそうだしゆっくりさせてもらうとするか。

お読み頂きありがとうございます。



やっぱり週一の更新ですら怪しくなってます。

すいません、やっぱり完全に不定期更新になりそうです。

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