特訓
さてと色々と準備に取り掛からないといけない。
俺は成り行きだが魔法対戦トーナメントなるものに出なければいけなくなった。
しかもそれなりの結果を残さないといけないと言う事らしい。
そんな初めての事に下準備もなく挑むなんて無謀なことはしない。迷宮に挑んだ時も下準備は大事だと重々身を持って知った。
まずは1つ思いついたことがあるからそれから試してみようと思った。
それはとある魔法具を作るという事だ。それが成功したら大分俺達のチームの勝率も変わってくるだろうし。ただその魔法具を大会で使用できるかどうかなんだよな。それは話の持って行き方か。まずは作ってみてからプレゼンだな。でも今回のプレゼンはアリアに任せるしかないから打ち合わせをしてどう話をして貰うかをきっちりと決めておかないといけないな。
俺は作った魔法具をアリアに渡し、学園長に話を通して貰うように伝えた。
学園長からの返事を貰い無事魔法具を今回のトーナメントで使用できるようになった。
そうなったら後は特訓あるのみだな。
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「で、何でこんなところにいるんだ?俺達。」
ベックが文句を言いながら俺の後を付いてきている。
「そうだね、こんなところまで来て大丈夫なの?」
その隣にはアーサーもいる。
俺達は学園から出て、壁も抜け、都市の外まで出てきた。
「アリア・・・先生にはちゃんと許可取ってるから大丈夫。」
俺はそう2人に答えた。
今回は都市の外まで出てきたのには色々な理由はある。
まずは他の人に俺達のやってることを見られない様にと言う事だ。
そろそろトーナメントに出るつもりの学園生達が学園内で事前の練習やらを始める時期だ。
学園内で戦闘訓練などをしていたら他のチームに自分のチームの情報を与えるようなものだ。戦いになった時には自分の戦闘スタイルなんかを知られず、相手の戦闘スタイルを知っている方がかなり有利に戦いを進められる。正直俺にとっては学園内で戦闘訓練をする奴の気が知れない。
俺には【鑑定眼】があるから見るだけで相手の戦闘スタイルなんかは簡単に予測を付けることが出来る。だったら俺達の訓練を見られない様にするだけで十分だ。
それに今回のトーナメントは今までの様な内容とは大きく変わるはずだ。
「順番に説明していくけど、ここに来たのはトーナメントに出る他のチームに僕たちの戦闘訓練を見られない為かな。」
「そうなのか?なんで見られちゃ困るんだ?」
俺の台詞にベックが質問する。まぁ2人共戦闘経験なんてないもんな。
「僕たちがどういう風に戦うかを相手に知られていると対策が取られちゃうからだよ。」
「そんなもんか?」
「そういうものなの。それに今回はこれのおかげで今までのトーナメントとは大きく違った戦い方になるだろうしね。」
俺はそう言って2人に腕輪型の魔法具を見せた。
「何それ?」
魔法具を見たアーサーが俺に聞く。
「これは今回のトーナメントで皆付けることになる判定用の魔法具なんだ。」
俺はそう言って説明する。
この魔法具は俺が今回の魔法対戦トーナメント用に作った魔法具だ。腕輪の形をしていて、小さな魔石が付けられている。
魔石には【魔法の鎧】の魔法が封じ込められていて、一定の魔法と物理攻撃を防いでくれる。ただ一定以上の威力の魔法や物理攻撃を受けると腕輪に付いた魔石が壊れるという仕組みだ。蓄積型で弱い魔法でも何度か受けると壊れたりする。
俺はこれを今回のトーナメントで使用すればと学園長に提案したんだ。
今までのトーナメントでは単純に魔法を打ちあって、相手を戦闘不能まで追い込んだ方が勝ちいうシステムだった。そうなると怪我人が多数出るし、運が悪ければ死人も出る可能性がある。
この魔法具を使えば怪我からは守ってくれるから皆安心して実力を発揮できるだろう。それに俺達は初級クラスだ、流石に上のクラスの人と戦うにはハンデが欲しいという事だ。威力の低い魔法でも何度も当てればいいんだ。まぁそれはそれで難しいと思うがな。
そう言ったことをアリアから学園長に伝えて貰った。この魔法具は俺じゃなくて知り合いのドワーフに作って貰ったと言ってな。
学園長は生徒が安全に参加できるという事であればと承認してくれたみたいだ。
【玩具箱】の中で作った甲斐があった。
この魔法具があれば俺以外の2人でも怪我をすることはないだろう。俺も少し安心できる。
そんなことを2人に説明した。
「そうなんだ。良かった、今回のトーナメントは危なくないんだね。」
胸を撫で下ろしながらアーサーが言った。
「そうそう、でもそれ以外にも僕たちに有利になるようなことがあるんだ。」
俺はそう言って刃が木で出来たナイフを取り出した。
「なんだそれ?木で出来てるじゃないか。何の役に立つんだ?」
ベックが俺の手のナイフを見て言った。
「これをこうすると。」
そう言って俺は手に持った木のナイフを魔法具に軽く触れさせた。
するとパキッと言う軽い音を出して魔法具に付いてあった魔石が割れる。
「こうなるんだ。全チームにはこういったナイフとか杖とかが配られるんだ。このナイフとかには魔法具の魔石に反応して壊す力が備わってるんだ。だから相手を魔法で倒さなくても、近づいてこのナイフを魔法具に当てればいいんだよ。」
「そんなこと出来るのかよ?」
「それは作戦とかによるかな。でもこれでMPがなくなっても戦えるし、一発逆転もあり得るってこと。後は魔法を直接当てなくてもいいから補助的にも使えるってことだよ。相手を麻痺させたり、眠らせたりとかね。僕らみたいにMPが少なくてもやれることが増えるってことだよ。」
「そんなもんなのか。」
ベックはナイフと魔法具をしげしげ見ながらそう言った。
そうんなもんだよ。というかそうした方が俺が戦いやすいからだ。
今の姿では大した魔法も使えないことになっているからな。それだったら直接攻撃させてもらった方がよっぽどいい。普通魔法使いは直接的な攻撃をすることもされることもない。後衛職だからな。
だからいきなり直接攻撃されたらなかなか反応できないだろうと言うのが俺の考えだ。
魔法対戦と言うのに思いっきり物理で殴りに行こうって言うのはどうかと思うが、そこはそれ。魔法は目隠しなんかに使わせてもらおうかと思っている。
ただ正直言って本気を出せば魔法を唱えられる前に全員にナイフを当てることは出来るんだろうけどね。流石にそんなことをしたら怪しまれるだろう。
「一回試してみようか?」
俺はそう言って2人に腕輪型の魔法具とナイフをそれぞれ渡した。
そして俺も腕輪型の魔法具を腕にはめる。
「お前それどこで手に入れたんだ?」
「うん?アリア先生に貰ったよ。そろそろ他のチームにもいき渡ってるんじゃないかな?」
俺はしれっとそんな嘘を吐いた。まだ多分他のチームはこの魔法具の存在を知らない。後少ししたら全員分の魔法具を収めるという話にしている。それもあってこうした戦闘訓練を見られる訳にはいかなかったんだ。
「じゃあ2人対僕ね。作戦を決める時間あげてもいいけど、どうする?
ちなみに僕は土魔法の初級ぐらいの魔法しか使わないつもりだよ。」
「なんだと?」
「そっちは全力でいいからね。」
「俺達の事馬鹿にしてるな?いいぜ、アーサー俺達が強くなったとこ見せてやろうぜ。」
「馬鹿にはしてないよ。戦闘経験の差というものを見せてあげるよ。」
「えっ?えっ?ちょっと、ホントにやるの?」
「当たり前だよ、アーサー。何しにここまでやってきたと思ってるの?」
「そうだ、手を抜かないでちゃんとやれよ。」
ベックにも喝を入れられるアーサー。
「じゃあ戦闘開始ね。」
そう言って俺は2人に向き直った。
話している間に少しだけ距離を離している。15m位の距離だ。
さてどうしてくるか。
「一発で決めてやる。焼き尽くす炎よ。我が前の敵に炎の一撃を。【炎の槍】。」
ベックが魔法を唱え、目の前に炎の槍を生み出した。一応本気みたいだな。
「行け。」
ベックはそう言って俺に向かって炎の槍を放つ。だが甘い。
「大地よ、我に力を。我が前に深淵を覗かせよ。【奈落の穴】。」
俺はそう唱え自分の足元に穴を掘る。60cmぐらいの深さで、俺が両手を横に伸ばした位の直径の穴が出来る。俺はその穴で身を屈ませる。すると俺の頭上を炎の槍が通り過ぎて行った。それを見てから俺は立ち上がり穴から出る。
初級の土魔法で使える防御系の魔法ではベックの炎の槍は防げないかもしれない。しかし炎の槍は直線に飛ぶのでこうして簡単に避けることが出来る。
「穴掘って避けやがった。」
向こうでベックが叫んでる。俺はそのままベック達の方へ走る。口ではもう一度【奈落の穴】の魔法を詠唱している。
「だったら広範囲魔法だ。焼き尽くす炎よ。我が前の敵をその炎で飲み込め。【火炎流】。」
ベックが唱えた魔法は前方広範囲を炎で焼き尽くす魔法だ。落とし穴を掘ったところでその中まで炎が流れ込んでくる。だけど。
「甘いって。【奈落の穴】。」
俺はそう唱えて穴を掘る。
今度は俺の足元じゃなくて、ベックの足元にさっきと同じ直径と深さ2m位の奴だ。
ベックの姿が一瞬で消える。そう思った次の瞬間にその穴から炎が立ち上った。
あ~ぁ、自分の魔法でやられちゃったよ。まぁそう仕向けたんだけどね。
「だから魔法は使い方次第だって。」
それはそう言いながら穴のところまで行って中を覗いてみた。
穴の中ではベックが伸びていた。見た所怪我はないから魔法具が守ったんだろう。でも自分の炎に包まれてびっくりして気絶したパターンかな。俺でも目の前で【大爆発】が爆発した時には生きた心地がしなかったし。心の準備もなくそんな光景目にしたら気絶してもおかしくないな。
さてと。
「後はアーサーだけか。」
俺はそう言ってアーサーに向き直って、手に持ったナイフをちらつかせる。
「えっ?やだやだ。止めてよ。」
「そういう訳にはいかないな~。」
「やだ、止めてよ。そんな・・・。」
「ふっふっふっ。」
「駄目~っ。」
なんだろう、凄く悪いことしている気になるんだけど。それと共にちょっと楽しんでる俺がいるんだけど。
「えいっ。」
俺はそう言って、へたり込み顔の前で手をクロスしたアーサーの腕輪目掛けナイフを振るう。
ナイフが魔法具に当たって魔石が割れる。
「はい、終了。」
俺はそう言ってアーサーの頭に手を置いた。
「えっ?あぁ、ホントだ。」
アーサーは自分の腕の魔法具を見てそう言った。
「アーサー駄目だよ。最後まで諦めちゃ。」
「だって・・・。」
「もしかしたらこういう状況になるかも知れないんだ。
アーサーは回復と支援がメインだから僕達の方が先にやられて1人残る可能性があるだよ。
そう言う場合でも最後までどうすれば相手を倒せるか考えないと。
考えるのを止めたらそこでお終いだよ。でも考え続けたらもしかしたら逆転できる可能性はあるかも知れない。
さっきの状況でも支援魔法で壁作ってナイフを防ぐとか出来はずだよ。」
「そんなことが出来たの?」
「うん、このナイフは魔法具の魔石は壊せるけどそれ以外の力はないもん。」
「そうだったんだ。」
「知ってる、知らないでも大分差が出るでしょ。だからそれを踏まえて作戦や戦い方を考えないとね。」
「そうだねぇ。」
「とりあえずベックを起こして反省会とこれからの事を話そう。」
俺はそう言ってベックの所へ歩いた。
「ともかく、これで分かっただろ?魔法はただ使うだけじゃないってことが。」
「まぁな。」
若干不満気味のベックが答えた。
「じゃあ、これからどうするんだよ?」
「う~ん、とりあえずさっきみたいな実戦形式の対戦したリ、後は魔法も作っていこうかな。それに連携も取れるようにならないといけないな。」
「やることいっぱいだね。」
「あぁ、それとモンスターとも戦わないとね。」
「「えっ?」」
俺の言葉にベックとアーサーがハモリながら驚く。
都市の外に出てきたのはその目的もある。
「いや、実戦経験にもなるしレベルも上がるしね。使えるMPが増えたり、スキルレベルが上がれば出来ることもどんどん増えるから。」
「いや、そういうことじゃなくモンスターと戦うとか言ったか?」
「うん、そう言ったよ。あっ、もちろんこの間みたいな魔獣とは流石に戦わないけどね。」
「当たり前だよ。そんなの無茶過ぎるよ。」
アーサーが泣きそうな声で言った。
「大丈夫、ここら辺のモンスターだったら2人でも余裕で勝てるって。」
「2人?」
「うん、僕は参加しないよ。2人で戦ってもらうから。」
「無理だよそんなの。」
「無理じゃないって。それに今まで僕が言ったことで無理だったことってあった?」
「それは・・・。」
「僕はちゃんと2人が出来る事しか言ってないよ。」
「そうだな、俺はやるぜ。」
「ベック・・・。」
「このチームでトーナメントに出るって約束したんだ。俺は足を引っ張るような奴にはなりたくない。」
「そう、だね。僕もそんなの嫌だな。出来る限り頑張るよ。」
「うん、2人共ありがとう。2人共きっと強くなるから。
で、ちなみにモンスターが近づいて来てみてる様だからさっそくだね。」
「「えっ?」」
2人でまたそうして声を合わせて驚く。向こうからはモンスターの鳴き声も聞こえてきた。
頑張って貰おう。
そんな感じで俺達の戦闘訓練は幕を開けた。
都市の外に出ては対戦訓練や、戦術の組み立て方。俺が【魔法作成】で新しい魔法を作ったりもした。
それからモンスターを狩ったりもした。
最初の頃2人共ギャーギャー言いながらモンスターと戦っていた。
一応俺は【鑑定眼】で見たモンスターの情報なんかを2人に伝えて、どう戦うかを考えさせたりした。
本当にヤバそうな時は俺も参戦なんかしたりしたけど補助的な事しかしていない。
この辺のモンスターなんてふつうはEランクとかDランクぐらいのモンスターしかいない。
2人も戦闘の回数を重ねれば重ねる程落ち着いて戦えるようにはなっていった。人間なんでも経験ってことだ。行動も相手を含め何手先かも読めるようになってきた。
2人に鬼に様だと言われた。いや、こんなの甘い方だと思う。ガイやブランの方がよっぽど鬼の様な鍛え方をするぞ。と言ってもまだ2人共子供だしな。
お読み頂きありがとうございます。
少し仕事なんかで忙しくなってきたので更新ペースが落ちます。すいません。
恐らく週に1回、もしくは2回ぐらいになりそうです。




