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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
冒険への足掛かり
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初めての戦闘

この世界で初めての戦闘です。

 俺はこれからの戦いを前に準備する。


 とりあえず今付けてるスキルは戦闘向きじゃないから色々と変えていかないと。

 今回の戦闘は剣を主体に戦おうと思う。実のところMPが割と底を突きかけていた。


 さっきブル・ボアを見付ける時に使ったスキルはそれなりにMPを消耗する。そこまで使い込んでいる訳でもないし色々無駄にしてる部分もあるんだろう。


 だから少しMPも温存したいし今回は折角持ってる剣で戦おうと決めた。



 さてと、そう思って目を閉じて集中してスキルを付け替える。

 とりあえず【剣術 LV.10】と【体術 LV.10】、【反応速度アップ】くらい付けておけば闘いには問題ないか。どれもMPを使うものじゃないし。

 それと後は補助的にいくつかスキルを付けておくことにした。




 いざ尋常に、勝負!



 俺は木の陰から出て、ブル・ボアに近づいていった。

 俺との距離が10mくらいになったところでブル・ボアも俺の存在に気付いた様だ。顔を俺に向け、鼻をヒクヒクと動かしている。

 気付かれていない時に奇襲をかけても良かったが正面切って戦ってどれくらい俺が戦えるかをわかっておきたかった。



 俺は静かに剣を構えた。



 それを見たブル・ボアは俺を敵と認識したのか鼻息を荒くして睨みつけてきた。

 後ろ足でザッ、ザッと土を蹴る仕草をしたと思ったら一気に俺の方へ突進してきた。



 うおっ、いきなりかよ。

 心の準備はしていたつもりだったが、いきなり有無を言わさず突進してくるとは思わなかった。


 ちょー恐ぇー。

 バイクぐらいあるモンスターがいきなり突進してくる絵面は、今まで味わったことがないので結構ビビる。


 しかしそうも言っていられない。避けないと死ぬ、そう思い俺は回避行動に移る。


 スッと右足を横に伸ばし大地を踏みしめる。その足を起点に身体を半身に捻る。滑らかな動きで俺は立っていた位置から1m程横へ移動した。 スキルのおかげか全く無理のない動きで体の軸もぶれていない。


 突進をくらいかくらわないかのギリギリで動いたのでブル・ボアには消えたように見えただろう。


 そして俺持ってていた剣を横に構え、ブル・ボアに突き出した。ブル・ボアの突進に合わせる形で体の横の部分に剣を突き差す感じだ。

 上手くいけば突進の力を利用して横一文字にブル・ボアの体を切り裂けるかもしれない。


 剣がブル・ボアの体に刺さる。よしこのまま!と思ったが剣が持っていかれそうになる。


 ヤバいと思って俺は突き差した剣をブル・ボアの体に這わせるようにねかせた。微妙に力を調節しながらブル・ボアの体を切っていく。

 俺の横を走り抜けたブル・ボアの身体には深さ2cmくらいの傷が横一文字に付いていた。



 危なかった。剣を落とすところだった。相手の突進力を利用して斬るっていうのは良かったと思うがそもそも俺の持ってる力が足りてなかった。


 俺の持ってる剣は西洋で作られた剣の様で、刀の様に斬ることに特化した作りではない。その切れ味のよくない剣でスッパリ切り裂こうなんて無茶な話だ。

 ブル・ボアに剣を突き差したままの状態を維持出来たら突進の勢いがあるからもっと深く斬ることは出来たかもしれない。

 しかしながらそこまでの腕力は俺にない。

 剣術のスキルのおかげでどうすれば剣を落とさずブル・ボアを斬れるかと言うのが感覚的に分かったんだ。

 そしてそれを実行して俺の体と剣に無理が掛からないように、力の入れ方や刃の角度なんかをスキルが調節してくれた感じだ。



 少し思っていたのとは違った結果になった。

 【剣術 LV.10】をつけたらスパンと真っ二つにでも出来るのかと思った。実際にやってみないと分からないことはいっぱいある。



 おっと、今は戦闘中だった。



 ブル・ボアの方を見ると怒りに染まった顔で俺を見ていた。傷はそこまで深くないが広範囲に付けたので血も結構な量流れていた。



 とりあえず今度は俺の方から行くか。


 そう思い足に力を込めて一気に駆け出す。体を低くして間合いを詰める。

 地面スレスレの今にも倒れそうな体勢だが体術のスキルのおかげで、そんな体勢でも無理なく全速力で走ることが出来る。


 俺が狙うのは足だ。ブル・ボアは突進ぐらいしか攻撃手段を持たない。だから足を潰してしまえば大した攻撃もできなくなるだろう。



 ブル・ボアの方は俺の動きにどう対処するか分からないのかまだ動こうとしなかった。


 好機と見て俺はブル・ボアとすれ違う様に駆け抜ける。そして駆け抜ける瞬間に右の前足に剣を振るった。


 剣を振る前に俺はイメージをした。

 ブル・ボアの前足を斬る。

 ただ骨に剣が当たるとそこで剣が欠けたり、骨で止まって剣が持っていかれるかもしれない。だから骨に当たる寸前の肉までを切り裂く。


 そうイメージして剣を振った。すると先程よりもすんなりと剣はブル・ボアの足を切り裂いた。

 剣を振るタイミング、力加減、斬る角度全てがベストの状態で行われたように感じた。



 イメージが大事なのかもしれない。

 明確なビジョンを持ってスキルを使えば、その通りの結果へスキルの方がもって行ってくれるのかも。



 足を斬られたブル・ボアが前のめりに倒れる。片方の前足を斬られて体重を支えきれないんだろう。



 俺はブル・ボアに近づき横に回る。ブル・ボアは息を荒くして俺の事を威嚇していた。



 ごめんな。


 そう思いながら持っていた剣をブル・ボアの首に突き差した。突き差した剣を抜くと血がこれでもかって程溢れてきた。


 ゴブッ、ゴブッと湿った声を出しブル・ボアは横倒しになった。

そしてしばらくして鳴き声も止まった。



 覚悟はしていたがキツいな。元の世界では生き物の命を自分から望んで奪ったことはない。害虫を殺したり、食べ物だって生きている命を奪っていると言われたら仕方ないんだけど。


 自分の手で命を奪うっていう事がこんなにも心に影を落とすとは思わなかった。


 でも、俺は冒険者としてこれからやっていくことを決めたんだ。これからもこうやって他の命を奪うこともしていくだろう。

 自分を正当化することはないが、俺もこの世界で生きて行きたい。


 だからこの影も受け入れて生きて行こうと思った。

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