迷宮攻略31
「そうだ、強いってことですけど、【火龍】と戦った時に皆が使っていた技とかって一体どういう事なんですか?」
俺はとりあえず話も一段落したので気になってたことを聞いてみた。
「ん?あぁ、あれか。」
バロンさんが返事してくれる。
「ガイとバロンさんは【闘気解放】って言ってましたし。他の皆は俺の見たことない魔法やスキルを使ってましたけど。」
「順番に話してやるよ。とりあえずこんなところで話すのもなんだし、一度中に入ろうぜ。」
バロンさんがそう言って休憩所を親指で指した。
「そうですね、少しゆっくり話をしましょう。」
俺は同意して皆と一緒に休憩所に戻った。
休憩所で円になって座ってからバロンさんが話し出した。
「とりあえず俺とガイが使ったのは気を使った戦い方の1つだな。」
「何となくそうかなっとは思ってました。ただあんな戦い方をどうやって編み出したんですか?」
「ん?いや、俺達が考えた訳じゃないぞ。元からあるのを学んだりアレンジしただけだ。」
「えっ?元々あんな戦い方があったんですか?」
「あぁ、そうだ。」
「それをどうやって学んだんですか?」
「それはな、俺を誰だと思ってる?一応元S級冒険者で、今はギルドマスターなんだぞ。
昔の仲間のつてとか、ギルドの繋がりがあるだろう。」
「そう言えばそうでしたね。」
「元々【気】を使ったスキルがあるんだ。誰かが使っててもおかしくないだろう?そして使っていたら色々と試したりするだろう。俺達の様に必殺技みたいな感じで。
だから昔の仲間とかに連絡を取って【気】を使った戦い方をする人間を知らないか聞いてみたりしたんだよ。後はそれ以外にそう言ったスキルを使った戦いを見たり聞いたりしたことないかってな。
そうしてある所でこういう戦い方があるって知ったんだよ。」
「そうだったんですね。でも【闘気解放】って何々の型とかいろいろあるみたいでしたけど。」
「そうだな。そこら辺は受け売りなんだがな。
結局は【気】に関しても生命エネルギーを使って魔素を動かしたりして体を強化したり、気を放ったりしてる訳だ。
だから使ってるエネルギーが違いこそすれども魔法なんかと本質的には変わらないってことだな。
そして魔法は詠唱だったりで、どんな魔法を使うか方向性を決めてる。
だったら【気】だってどういう風に使うかって言うのを魔法の様に決められるってことだ。」
「なるほど、何となくの理屈はわかります。」
俺はバロンさんが説明してくれたことを頭で整理する。
そう考えるとそうだよな。
MPを消費して使うのが魔法、HPを消費して使うのが気。そしてそれぞれ超常的な事を起こす。魔法に出来ることが気で出来ない訳はないよな。
魔法で火をおこしたり、風を操ったり出来るんだから、気でもやろうと思えばやれる訳だ。結局は魔素をどういうエネルギーを使って運用するかってことか。
魔法は詠唱だったりイメージでどういう現象を起こすかを決定する。
気は詠唱がない分イメージと、気の動かし方だったりするんだろう。しかしそうなると気の方が断然扱いづらい気がするけど。明確なイメージとその為の気の使い方を自分でコントロールしないといけない。でもこういうのって直感で出来る人もいるしな、ガイやバロンさんがそうなんだろう。多分俺には無理かもしれない、いまだに剣に気を乗せて飛ばすことが出来ないし。
「アレンジって言ったたのは、ガイの空の型とかバロンさんの砲の型とかですか?」
「おうっ、そうだ。良く分かったな。」
俺の質問に機嫌よくバロンさんが答えてくれる。
まぁ普通空を走ったり、気で作った龍がビームを出すなんて今まで誰かがやってたなんて考え付くとは思えないからな。
「俺達が聞いたのは気を一か所に集める方法だな。
拳に集めて攻撃力を上げたり、体の前面にだけ集中させて防御したり。
後は体の中心に集めて体を軽くしたり、重くしたりも出来るって聞いたな。
だったらと思って俺は剣に気を集中して一気に放つやり方を思いついた訳だ。
後は、どう気を練るかってことだな。」
「気の練り方ですか?」
「あぁ、ガイの剣に赤い気が宿ることがあったのは見たか?」
「あれですか、そう言えば剣で斬る時の気に色がついてましたね。」
「そうだ、俺で言うと龍から放った気もそうなんだがな。
単純に言うと攻撃に適した気だったり、防御に適した気があったりするってことだ。
ここら辺から難しくなっちまうんだけどな。
剣で斬る時に剣を気で覆うとするぞ。
だとしたら、どういう気だったら剣を強くすることが出来る?」
「ん~、何となくですけど。鋭く切れ味が上がるような気とでも言うんですかね。
そういうものですか?」
「そうだ、そんな感じだ。
防御するときに盾に覆うといいのは、固く頑丈な気ってことになるな。そうすると防御力が上がるだろう?」
「なるほど。それぞれ気にも適性があるってことですね。」
「そうだな、そう考えてもいいと思う。ただ俺達も感覚でそうしているからどう説明していいかはわからない。」
「俺は空を駆ける時には周りの魔素と反発するような気を纏うとイメージしてるんだ。」
そこでガイが俺達の話に入ってきた。
「反発?ってことは周りにある魔素を踏み台にして空を走ってるってことか?」
「そうだな、そんな感じだ。主に足とかに纏うようにしてるがな。」
「俺の【龍撃砲】はどこまでも貫いて進む気をイメージしてるな。」
「しかし、そう言うのは2人が考えたオリジナルなんでしょう?今までにそう言う事が出来てるとは思いませんが、どうやって思いついたんですか?それにどうやって会得したんですか?」
「そうだな。やっぱりそこまで詳しい【気】の使い方を知ってる奴って言うのはいなかったからな。いや、いるにはいるんだろうがそう簡単に教えてくれないだろう。」
「それはどういう・・・?」
「あぁ、【気功術】ってのは【宗教国 フランドベルド】の一部の奴が好んで使うスキルらしい。スキルに頼らずに鍛えると憶えたりするみたいだな。そしてそういうのが集まった親衛隊があるみたいだぜ。
だからあんまりその国から情報が外部に漏れないみたいだ。俺も昔フランベルトにいたという奴から話を聞いたからな。」
「そんなことがあるんですね。」
「だからある程度の知識だけを聞いて、後は俺とガイで色々と試した訳だ。
正直どんなことが出来るかなんてわからなかったから、適当に色々試しただけなんだがな。ただお前が考えそうな事を試してみただけだ。」
「俺ですか?」
バロンさんに言われて思わず聞き返した。
「そうそう。お前って色んな事考え付くだろ。それこそ師弟契約だったり、魔法具とかもだ。だからなんでも出来そうな気がしてだな、色々と試したんだ。ガイもそうだと思うぞ。俺も空を走るなんて思いつかなかったがな。」
「あれはだ、ダイゴだったら剣士でどうやって空の敵と戦うかを考えてみただけだ。気を飛ばしても避けられるんだったら直接どう近づくかを考えた。空を走れるようになる為には何を気を使って踏めばいいかを考えただけだ。」
バロンさんに言われたガイが説明する。
う~ん、俺の考えか。どうなんだろう、そう言えばそう考えるか。普通だったら風の壁でも作って踏み台にしてって考えるけど、それを気だけでどうにかするとなるとどこにでもある魔素を踏み台にしたらいいとは思いつくかもしれないけど、でもそこまで思いつくかな~。
と言うか思いついても出来ないとあっさり却下しそうだけど。
「俺達も思いついたのを試して使えそうなのを修行したに過ぎないぞ。」
「修行したって言っても並大抵の事じゃないと思います。」
「流石にこれからもお前1人だけに戦わせるって訳にもいかないだろ。
俺達も肩を並べられるくらいには強くならないとな。」
俺の言葉にガイが答える。最近のボス戦ほとんど俺1人が倒して行ってるのに思う所があったのかな。
「まぁ俺達の【闘気解放】って言うのはそう言う事だ。
それぞれ用途に合わせた気を練って使う技術ってとこだな。それによって今まで漠然と気を使っていた時と異なり、用途に合わせた気を使う事によって何倍もの威力や、特質性を持たせたってことだ。」
バロンさんがそう締めくくった。
なるほど、俺だったら考え付かなかった戦い方だろう。そう考えると他の人に聞くって言うのも必要なことかもしれない。今までは全部俺が考えてやってきただけだ。俺1人で考え付くのには限度もある。しかし聞きたくても伝手なんてこの世界にはまだないし。バロンさんは今まで得た人脈なんかを使って必要な情報をかき集めたんだろう。俺には出来ない事だ。そう考えるとさっきのしてくれた話といい、俺達の仲間になってくれて本当に良かった。本当に凄い人だったんだな。
「そう言えばブランとアリアが使ってた魔法を俺は知らなかったんだけど。」
俺はガイ達の戦い方を聞けたので、今度はブラン達の事を聞こうと質問した。
「あぁ、あれですわね。私の方は【魔法作成】のスキルが使えるようになったので作っただけですわ。」
アリアが答えた。
「あの魔法を自分で考えたの?」
「えぇ、まぁそうですわね。ダイゴ様に以前教わったように魔法は具体的なイメージがあれば色々な事が出来ると仰ってたので。」
アリアがそう言った。
そう言えば水魔法を教えた時にそんな話をしたっけ。
【水の駆け馬】とか俺が勝手に作った魔法を教える時にそんな話をした。
「ですから【水の女王】を元にして作ってみたんです。
何本もの水の鞭で相手を拘束するというのを思いついたのですが、そのイメージがなかなか難しかったのです。そこでダイゴ様が水の蛇を作ったことがあったのでこれだと思った訳ですわ。
昔伝承か何かで聞いたことのある8本の首の大蛇が思いついたので、それを魔法にしてみただけですわ。」
「【八岐大蛇】ってことの世界にいるんだ?」
「私も実際に目にした訳でもありませんが、確か魔獣か幻獣の類でいたと思いますわ。
後は私の出来る事をやったまでです。いくら相手を拘束しても引きずり倒すとかは出来ませんからね。
適材適所を実行したまですわ。」
アリアはすました顔で言った。
アリアは戦闘経験が少なくてほとんど俺の指示で戦っていた。だが自分の出来る事だけをして、出来ない事は他の人に任せる。そうした自分で考えで戦うってことが出来るようになってってことだろう。
「わしも昔聞いた話を思い出したのです。」
ブランがそう言った。
「ドワーフ族は土魔法に秀でていて、特に人形を作ることに関しては他の種族の上をいっておると。そしてその昔とてつもない人形を作る者がおったらしいのですじゃ。
その者が作った人形はまるで巨人と思わせる風貌をしており、その力はどんな人形より強く、その体はどんな攻撃にも傷一つ付かないと言われておりました。ならわしにも作れるはず。主から貰ったスキルもある、その者に作れてわしに作れぬはずはないと思い試行錯誤を繰り返したのです。
そうして作り上げたのが【岩の巨人】なのですじゃ。まだまだ改善の余地はありますがそんじょそこらのモンスターには遅れは取らんと思いますわい。」
ブランはそう語った。
2人も魔法に対して具体的なイメージを持って作ったってことか。そうだよな、俺も新しい魔法とか作る時そうしてるし。それの方が上手くいくことが多い。
「そう言えばシータは?」
「何が?」
「いや、あの【影分身】ってスキル。いつの間に憶えたんだ?」
「ん~、わかんない。勝手に使えるようになってた。」
「そうか・・・。」
シータだけは良くわからないな。直感とかで戦ってる感じだしな。あれこれ考えて戦ってるようには見えないから自然と動きに合わせたスキルとかを憶えていってるんだろう。ふと【鑑定眼】でシータのスキルを確認すると、いつの間にか色々スキルが増えていた。
1人で迷宮潜って他の冒険者を助けたりしてたんだもんな、そりゃ色々と強くなるか。
改めて皆の強さが分かった気がする。
俺だけが強いって訳じゃなかったんだ。当然だよな、一緒に旅をして俺が宿屋に籠っていた時も修行したりしてたんだもんな。今だったら俺抜きでも白虎や玄武と戦っても皆だけで勝てそうだけどな。
これからは一緒に戦っていこう。俺が気にしないといけないほど皆弱い訳じゃない。
お読み頂きありがとうございます。




