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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
【商業国家 エルバドス】編
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クレタ

 俺達は次の日にルドルさんの所に魔石を受け取りに行った。ルドルさんは結構な数の魔石を俺達に用意してくれていた。

 話に聞くと鉱山は問題なさそうだという事だ。【アンデットカースドラゴン】を倒してしまったせいでもう魔素がなくなって魔石などが取れなくなってしまったかと思ったが問題ないみたいだ。【ガイアドラゴン】の死骸もほとんど傷付けることなかったしな。一安心ってところだ。


 魔石を受け取ってから俺達はゾランさんに会いに行った。

 今回お世話になったし、この町から出発する前に挨拶しておきたかったんだ。



「お世話になりました。それからこれ俺が店のを使ってしまった分に充てて下さい。」



 俺はそう言ってルドルさんから貰った魔石をゾランさんに渡した。ゾランさんの店にあった魔石をいくつか使ってしまっていたのでお返ししておきたかったんだ。



「こんなにもらえませんよ。」



 ゾランさんがそう言った。



「いや、これから一緒に研究したことを試したりするのに魔石は必要でしょうし使ってください。

 いい魔法具が出来たらまた作り方教えてくださいね。」



 俺はそう言った。ゾランさんには魔法を封じ込めた魔石の作り方や他の事も教えている。多分これから研究して新しい魔法具も作ったりするだろう。そうしたら魔石が結構必要になるだろうしな。



「ありがとうございます。そう言う事でしたらありがたく頂戴します。そして今までになかった魔法具をきっと作ってみせます。」


「期待してますね。」


「それと兄貴の事よろしくお願いします。」


「お主に言われることではないわ。」



 ブランがそう言った。今回ゾランさんには俺達がこれからどうするかは簡単には伝えた。迷宮に挑むことぐらいだけど。ブランはキースの時みたいにこの町に残るように言われるのかと心配していたみたいだ。流石にそれはないと伝えるとホッとしていたようだ。冒険者歴が長いブランには一緒にいて貰った方がいいだろうし、これから武器も作って貰わないといけない。



「でも迷宮を攻略したら一度この町に戻ってきて俺達の武器を作ろうと思ってるんです。

 だからどれぐらいの時間がかかるかわからないですがこの町には戻ってきますのでその時はまたご挨拶に来ますね。」


「そうなんですか。わかりました。その時を楽しみにしています。」



 俺はゾランさんにそう告げて別れた。



---------------------



「それでその迷宮がある町ってどんなところなんだ?」



 その迷宮がある町に向かう道のりで俺がブランに聞いた。

 ゾランさんにお別れを告げて俺達はそのままザールを出た。馬車で向かおうかと思ったんだけど町中がバタバタしていたから歩いて向かう事にした。鉱山での採掘が出来るようになって町は大変な騒ぎになっていた、他の町へその事を伝達したり忙しそうだったしな。

 焦る理由もないしまたゆっくりと歩いて迷宮まで向かう事にした。



「町の名前はクレタと言いますじゃ。わしも行ったことはありませんので詳しいことはわかりません。

 ただ冒険者の間ではそれなりに有名な町ですな。迷宮攻略を主とした冒険者もおるそうです。」


「そうなんだ?」


「えぇ、迷宮を攻略して出てきた武器を売って生計を立ててるらしいですぞ。普通のモンスターと比べて出てくるモンスターが決まってるから対処がしやすいみたいですな。」


「へぇ~、それでも生活できるんだ。やっぱり神が作った武器だったら結構な値で売れるのかねぇ。」


「そうでしょうな、わしも別の町でその迷宮から取れたという武器を見たことがありますが、かなりな値がついていた覚えがありますわい。」


「キュクロさんは適当に作ったとか言ってたのにね。」


「神からしたらそうした武器を作るのも(たわむ)れなのかもしれませんな。」


「だね、町の事はついてからの楽しみにしておこうか。」



 俺達はそう言ってクレタの町までの道を歩いた。

 行程は順調だった。特にモンスターが現れる訳でもなく、俺達の進むスピードもかなり速い。2日程離れていると言われていたが俺達なら1日ぐらいで到着しそうだ。

 途中宿を求めて村や町に立ち寄るのも面倒だったので今回も野宿をすることにした。野宿と言っても前回と同じように土魔法を使って簡易の家みたいなものは作った。野宿することをに拒否反応を示していたアリアもその家を見て安心したみたいだ。今回はちゃんと女子部屋も作った。

 朝を迎えて片付けをしてから俺達は歩き出した。このままのペースだと夕方前にはクレタの町に着くだろう。町に着いてからは情報収集かな。そんなことを考えながら進んだ。こういう時ってまた何かしらのイベントが起きたりするんだろうかと頭をよぎったが今回は本当に何もなく普通にクレタの町に到着した。


 クレタの町の外観は他の町とそう大差はなかった。迷宮があるって聞いてたから山の中にあったり、神殿みたいな感じかと想像したりしていたがいたって普通の感じだった。今まで訪れたことのある町の様に外周を壁で覆われて門が付いていた。

 いつものように冒険者用の入口に行くと結構な列があった。普通の町だったら冒険者用の入口が混むことなんてないんだけどな。少し並んで町の中に入ると今まで行った街とは違う雰囲気だった。

 まず思ったのが冒険者の数がやたらと多い。町中で目に付くのはほとんどが冒険者風の人だった。他の町とは比率が逆ではないかと思うぐらいに冒険者が溢れていた。

 俺達はとりあえず拠点になる宿探しをした。しかしこの町は物凄く宿屋の数が多い。これだけの冒険者がいるんだから当然と言えば当然なんだろうけど。かなりの数の宿屋があるんだったら、どこも大体同じような感じなんだろうと思って適当に大き目の宿屋に入った。値段を聞いたが一般的な値段設定だった。

 宿も決めた俺達はとりあえず町の中を散策してみようと決めた。迷宮がどの辺りにあってどういう所かも分かればいいかなっと思ったからだ。



「この町に迷宮があるって聞いたんですけど、どこにあるかご存知ですか?」



 一応知っているのかと思って宿の人に聞いてみた。



「えぇ、迷宮でしたら町の中心にありますよ。」



 えっ?町のど真ん中に迷宮なんてあるの?店の人から帰ってきた答えを聞いて俺はそう思った。

 どういうことかとは思ったけど店の人にお礼を言って俺達は宿を出た。そしてそのまま町の中心に向かって歩いて行った。



 町の中心に着くと俺達は言葉を失くして立ち尽くした。

 そこには冒険者ギルドの様な建物があって看板にはでかでかと【クレタの迷宮】と割とポップな字で書かれてあった。

 え~っと、ホントにここが神の試練の場なのか。何がどうなってこういうことになってるんだろう。

 俺達はとりあえず建物の中に入ることにした。中に入るとそこは他の町でも見た冒険者ギルドの様な場所だった。半分ほどが酒場になっていて、半分はカウンターがあり受付っぽい人が立っている。しかし冒険者の数がかなり多い。今まで行った冒険者ギルドよりも多くの冒険者のパーティがいるだろう。

 とりあえず俺達は受付っぽいカウンターに行ってみた。



「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件ですか?」



 受付の女性が俺達に聞いてくる。こういう場合はなんて答えるのが正解だろうか。



「えっと、ここに迷宮があるんですか?」


「えぇ、ございますよ。」



 俺が質問すると当たり前のように答えが返ってきた。



「ここは冒険者ギルド兼クレタの迷宮の受付になっています。」



 迷宮に入るのに受付を済まさないといけないのか?迷宮ってそんな感じだっけ?



「すいません、あまり迷宮の事なんかに詳しくないもので、説明して頂いても良いですか?」


「そうなんですね、かしこまりました。では簡単に説明させていただきますね。

 こちらはクレタの町の冒険者ギルドになっています。まずは冒険者ギルドの説明ですが、このギルドにいらっしゃる冒険者の方はほぼクレタの迷宮が目当てで来られますので通常のギルド運営とは少し変わっています。

 一般的なモンスターの討伐の依頼などは行っておりません。こちらで受付しますのは迷宮に潜る際の申し込み、迷宮内で手に入れた物品の買取、迷宮内の情報提供などを行っております。」


「申し込みしないと迷宮には入れないんですか?」


「えぇ、決まりですので。一度迷宮に入られる度にお1人様銀貨1枚を頂いております。」


「お金とられるんですか?」


「はい、その頂いたお金などで当ギルドは運営しております。」


「そうなんですね、物品の買取って言うのは?」


「この迷宮は10階進むごとに魔獣が出てくる部屋があり、その魔獣を倒すと色々な武器などが手に入ります。その武器を買い取ったりさせて頂いてます。」


「モンスターを倒して部位なんかを持ち帰った時も買い取ってくれるんですか?」


「いえ、この迷宮内で倒したモンスターは時間が経てば復活しますが、倒すとその時点で消えてしまいます。」


「消える?」


「はい、すぅっと。その為死骸から特定の部位を剥ぎ取って持って帰ることは出来ません。」



 そんな設定にしてるのかキュクロさんは。ずっと楽な階で部位を剥ぎ取って売ってお金を稼ぐとかは出来ないんだ。



「その為お金での話になると最低20階以上は潜らないと損になってしまいますね。ちなみに10階に出る魔獣を倒した時に出る物は銀貨1枚での買取です。

 ただモンスターを倒した際の経験値は入るのでレベルアップは出来ます。

 モンスターを必死に探して見つけて倒すよりは、レベルアップだけを見た場合には迷宮の方が早くレベルアップできると思います。モンスターはそれなりに配置されていますので。」



 配置って言った?どう考えてもゲームに出てくるダンジョンだよね。でも経験値だけなのか、お金になりそうなのは魔獣倒していかないといけないんだよな。



「しかし多くの冒険者が迷宮攻略してるんじゃないんですか。

 魔獣を倒しても取りつくしちゃって武器が出ない事ってないんですか?」


「それはありません。ちゃんと補充されていますから。どうやって補充されるかは謎とされています。」



 すいません、その謎の答え知ってます。ってかキュクロさんここのギルドと絶対に裏でつながってるだろ。入場料も一部キュクロさんに回ってるんじゃないか?これで稼いでそうだよな絶対に。確実にアトラクション化してやってるっぽいな。本当にこれが神の試練なのかなぁ。



「迷宮内の情報提供って何ですか?」


「それは迷宮内の地図であったり、どんなモンスターや魔獣が出るかの情報です。

 それがあるのとないのでは攻略の難易度に大きく差が出る事になりますからね。そう言ったものを料金を頂いてお伝えしております。」


「なるほど。」


「万が一今まで誰も踏み入ったことのない階層に行かれた場合は、その階の情報をギルドで買い取ったりもいたします。」


「そうなんですね、ちなみに今までで一番深い階層ってどこなんですか?」


「昔の勇者が70ぐらいまで行ったことがあるらしいですね。ただ話が伝わっているだけで確かな話ではないんです。しっかりとした記録であれば62階層が一番深く攻略した階層ですね。」


「それはやっぱりSランクの冒険者パーティとかですか?」


「そうですね、Sランクの冒険者パーティが3組ぐらいで組んで攻略されたとのことです。

 そうそう、それからこちらのギルドでも一時的なパーティ募集は出来ます。ダンジョンに入って外に出るまでの間という限定的なパーティ募集なども出来ます。結構多くの冒険者さんが利用されていますね。レベルアップ目的の人を募集するとか、何階層まで行ったことがある人を募集するとかですね。」



 そうか、Sランクでもその程度しか攻略できないのか。だからと言ってパーティメンバーを募集しようとは思えないな。正直俺達レベルの冒険者がそうそういるとは思えないしな。

お読み頂きありがとうございます。

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