聡明生徒会長 8
どうしたらいいのか必死に考えていると、
花沢先生がため息をついた。
「・・・遅いわね」
「はい?」
「なんでもない。じゃあ、森本くんはともかく、飛島さんは返してもらうわよ」
「どーぞどーぞ。彼女はもう結構ですよ・・・森本くんに付き合ってもらうんで」
伊達先輩がちらっと僕の方を見る。
このままだと、さっきの続きをされてしまう。
辛うじて残っているこの下着も脱がされて・・・
考えただけで怖くて震えそうになる。
・・・嫌だ!
「お・ま・た・せー」
明るい声が部屋に響き渡る。
そして、人影が素早く視界に飛び込んでくる。
「まったく、遅いわよ。伊波くん」
「ごめんね、奈津美ちゃん。国府津先生がなかなか来てくれなくって」
「国府津!?」
伊達先輩と、軽音部の人たちが明らかに動揺する。
国府津先生は、生徒指導の先生だ。
そして会長の後ろから、その国府津先生が現れた。
「そりゃいきなり呼ばれても、急には動けんだろ・・・ところで伊達」
「は、はい!」
「この生徒会長サマが、お前たちが後輩を強姦しようとしているというのだが・・・本当か?」
「え?い、いやーその、ラ、ライブでのパフォーマンスを考えていたんです」
「パフォーマンス?」
「はい!だから強姦なんかじゃありません」
「・・・そうか」
動揺した伊達先輩に言われ、納得する国府津先生。
その二人を無視して、会長は僕の方へ歩いてくる。
軽音部の人が、僕を抑える力が強くなった。
・・・痛い。
「あー大丈夫。臣ちゃんに用があるわけじゃないから」
そう言って、会長は脱がされた僕の制服を漁る。
いったい、何を・・・
「生徒会長サマの勘違いってところか。まったく、紛らわしいことするんじゃないぞ!」
「はい。すみませんでした」
「じゃあな。花沢先生も、さっさと戻りま―ー」
『俺、バージンも好きだけど。チェリーボーイも好きなんだ』
その瞬間、周りが、特に伊達先輩が凍りついた。
会長の携帯電話から流れた音声を聞いて。
『お前を犯してやるって言ってんの』
流れ続けるのは、明らかに
この部屋にいた人たちの会話。
「携帯なくして焦ってたんだ。臣ちゃんのズボンのポケットにあったんだね」
いつもと同じ、飄々とした声で会長が言う。
その声に、先生たちが我に返った。
「おい、伊達。今のはどういうことだ?」
「え、い、いや、その何かの間違い・・・」
「伊波くん、それ、録音された時間はわかる?」
「今日の16時41分・・・さっきだね」
「伊達もお前らも、職員室に来い!こんなことしやがって・・・わかってんだろうな」
国府津先生に怒鳴られて、大人しくついていく伊達先輩。
飛島さんを押さえつけていた人も、僕の上に乗っていた人も、伊達先輩の後に続いた。
ずっと押さえつけられていたせいで、身体に力が入らない。
それは飛島さんも同じで、崩れ落ちそうなところを武山さんに支えられていた。
「大丈夫か!飛島」
「・・・は、はい」
飛島さんの安心したような声。
よかった。本当に・・・
そう思っていると、突然身体を起こされる。
・・・会長だった。
「・・・・・か、い・・・ちょ・・・」
必死に声を絞り出す。
またしても会長に助けられた。
僕たちがここに来る前に、会長が僕のズボンに携帯を入れてくれなかったら、
証拠不十分で伊達先輩たちは連れて行かれなかった。
きっと僕は伊達先輩に犯されていた。
だから、どうしても会長にお礼が言いたかった。
なのに息を吸い込んだ次の瞬間、
乾いた音がした。
殴られて赤く染まっていた頬が、さらに赤くなる。
数秒経って、ようやく理解した。
・・・会長に、殴られたんだってことを。