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聡明生徒会長 3

「あ、お疲れ様です」


生徒会室に入ると、飛島さん一人だった。

飛島さんは僕を見て、安堵したような様子を見せる。


どうかしたんだろうか。


「お疲れ様です。あの、森本さん。お願いがあるんですが・・・」

「はい」


「一緒に、軽音部の部室へ行っていただけますか?」

「軽音部の部室?」


軽音部にはたしか、伊達先輩が所属している。

飛島さん、もしかして告白を受ける気なんじゃ・・・


「じ、実は、あれから3日間ほど考えまして、伊達先輩にお返事をしたんです」

「・・・なんて?」

「今はどなたともお付き合いする気がないので、ごめんなさいって」


そうか、よかった。

飛島さん、断ったんだ。


「そうしたら、もう近づかない代わりに、1時間だけお話がしたいって」

「なるほど、それで軽音部へ?」

「はい。今もうすでに待っているそうです」

「・・・それ、僕も一緒に行って問題ないんですか?」

「はい。というか、会長たちのお話を聞いて、少し怖くなって・・・

 それに、二人きりでとおっしゃっていなかったので、いいかな?と思って」



なるほど。

おそらく伊達先輩は飛島さんが一人で来ると思ってるんだろうけど、

確かに二人きりにさせるのは、心配だ。


「わかりました。じゃあ行きましょう」

「ありがとうございます」


荷物を持って部屋を出ようとした僕と飛島さん、

そこに、運悪く会長が入ってきてしまった。



「おっと、お疲れ様。2人でおでかけ?」

「あ、は、はい」

「どこ行くのかな?」

「ちょっと軽音部へ」


「軽音部だぁ!?」



しまった。

会長の後ろに、武山さんもいたようだ。

軽音部と聞いただけで、おもいきり眉を吊り上げた。


「・・・飛島、先週だっけか?俺は忠告したよな」

「え、は、はい・・・」

「なのに軽音部に行くとはどういうことだ?」

「そ、それは・・・」


武山さんに迫られて怯える飛島さん。

まるでオオカミに怯えるウサギのようだ。


ここは僕が助けなきゃ。

そう思ったのに、先に会長が口を開いた。



「何するの?告白の返事?」

「告白!?」



烈火のごとく、怒り出す武山さん。


な、なんで言うんだ!

会長が言うなって言ったのに。


だって会長が

『この話はタケにはしないようにね。絶対反対!ってうるさくなるから』

って・・・


あ、まさか、

武山さんをうるさくするために、わざと言ったんじゃ。



「飛島!お前告白されたのか?なんで言わねぇんだよ」

「す、すみません、その・・・」


飛島さんが泣きそうだ。

見ていられない。


「飛島さんはちゃんと断りました!」


僕が怒鳴ると、武山さんの睨みが飛島さんから僕に移る。

そして再び、飛島さんへ戻った。


「・・・本当か?」

「は、はい!」

「本当です。でも伊達先輩は、諦める代わりに話がしたいと言ったそうなんです。

 だから軽音部に行くんです」

「・・・諦める?」

「会長、武山さん、どいてください。少し話をすれば終わりますから。

 それで、伊達先輩は飛島さんに近づかなくなりますから」


僕は飛島さんの腕を掴んで行こうとする。

だけど、二人はどいてくれなかった。


「臣。伊達の言うこと、信じてるのか?」

「え?」

「話をすれば諦める、本気でそう思ってるのか?」

「それは、もちろん――」

「タケの言うとおりだよ、臣ちゃん」


会長が僕の肩に手を置く。


「伊達の今までの行動から考えて、それだけで済むと思えない」

「会長・・・」

「危険だってわかっているのに、行かせられないよ」


なんで?

どうして、二人とも邪魔するんだ。


飛島さんが一人で行くというのなら、反対するのは仕方ない。

だけど僕も一緒に行くって言ってるのに。



「・・・そんなに僕は、信用がありませんか」

「臣ちゃん?」

「っ!」


会長の手を振りほどく。

会長も武山さんも、驚いていた。


「だって行かなきゃ、伊達先輩は飛島さんを諦めないんですよ!

 いざとなったら僕が守るのに・・・

 僕がついているのに、どうして反対するんですか!」


飛島さんの腕をグッと引っ張る。


「きゃっ」

「行きましょう、飛島さん」


僕は二人に体当たりするかのような勢いでぶつかり、

そのまま歩き続けた。


後ろを、振り返らずに。

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