聡明生徒会長 2
・・・あれ?
数日後、生徒会室に行こうと歩いていると、
またも入り口を誰かが塞いでいた。
誰かというか、また伊達先輩と飛島さんなんだけど。
ところで、飛島さんは言ったのだろうか。
『次来たら、予算の相談なら俺にしろって言え』
・・・言ってなさそうだ。
それなら、僕が言わなきゃ。
僕は二人に近づいていった。
「ん?ああ悪い。また塞いでたな」
「それはかまいませんが、伊達先輩」
「お?」
「部費の話なら飛島さんではなく、会計の武山さんにお願いできますか」
少し強めに言うと、伊達先輩は苦笑いをしながら言う。
「あー武山ね。俺、あいつちょっと苦手なんだよなぁ。なんか冬眠明けの熊みたいでよ」
「わかります」
「だよな!なんであんなに血の気が多いんだ?あいつ」
「まったくです。・・・ではなくて!」
「それに、部費の話はもう終わってる」
「え?」
見ると、伊達先輩は飛島さんを見つめていた。
「つーか部費の話なんて、口実だったし」
「「え?」」
予想外の答えに驚く、僕と飛島さん。
「可愛いから話したかったんだよね。飛島さんと」
「え・・・ええっ!」
伊達先輩はニヤリと笑う。
それなら尚のこと、二人を近づけるわけにはいかない。
「だ、だめです!」
「なんで?ひょっとしてお前、飛島さんの彼氏?」
「ち、違いますよ!」
「なら人の恋路を邪魔するんじゃねぇよ。馬に蹴られて死ぬぞ」
「う・・・」
どうしよう。
どう言い返せばいいのだろう。
まさか本人に向かって「あなた軟派なのでダメです」とは言えないし・・・
「飛島さん」
「は、はい!」
「俺、マジだから。考えといて」
そう言い残して、伊達先輩は去ってしまった。
「すみません。飛島さん。僕、お役に立てなくて・・・」
「い、いえ。それよりも、私は何を考えておけばいいのでしょう?」
「それは・・・」
「桜ちゃん今、愛の告白されたんだよ」
お気楽な声がしたので後ろを振り返ると、
会長がニコニコしながら立っていた。
「こ、こく・・・はく?」
「そ。やっぱり伊達、桜ちゃん狙いだったんだね」
「私はどうすればいいのでしょう」
「それは・・・桜ちゃんが決めることだよ」
会長が僕の肩をポンポン、と叩く。
「俺たちには何も言う権利はないからね」
「・・・でも会長、数日前に伊達先輩のこと」
「うん。良くは思ってないし、評判も良くないことは話したね」
「だったら・・・」
「それを踏まえて、決めるのは桜ちゃんなんだよ。
だってそれでも桜ちゃんが伊達を好きだっていうなら、仕方ないじゃない」
・・・あまりに正論過ぎて、返す言葉もない。
そう、決めるのは僕たちじゃない。
飛島さんなんだ。
「わ、私・・・」
「じっくり考えたほうがいいよ。あ、あとこの話はタケにはしないようにね。
絶対反対!ってうるさくなるから」
「わかりました」
いったい、伊達先輩は何を考えているのだろうか。
本当に飛島さんに惚れたのならいいけど、
遊び相手にするつもりなら、許せない。
同じ生徒会役員として、飛島さんを守らなきゃ。
「・・・何してんだ?部屋、鍵かかってんのか?」
武山さんがやってきてしまったので、
その話はそこで終わってしまった。