聡明生徒会長 11
ズカズカと歩いてきた会長は、
僕の前で止まる。
「臣ちゃん!」
「は、はい」
「胸。今だけ時間無制限でタダで貸すけど」
胸を・・・貸す?
僕は会長の言う意味が理解できなくて、どうしたらいいかわからなくなる。
「俺、言わなかったっけ?俺の胸は安心感抜群だって。泣くのにはちょうどいいと思うよ」
「・・・っ」
会長、気づいていたんだ。
僕が泣くのを、我慢していること。
だけど・・・
「・・・だめ、です」
「なんで?」
「こ、これ以上、会長に・・・っ、めい、わく・・・」
迷惑をかけられない。
そう言っているそばから、勝手に涙がこぼれていく。
せっかく、我慢していたのに。
「お借りしたい、け・・・ど、っ・・・こ、これ以上、会長に嫌われたく・・・ない、から――」
やっと言い終えたその瞬間、ふわっと、
身体が温かく包まれた。
会長が・・・抱きしめてくれていた。
「本当に臣ちゃんは甘えるのが下手だよね」
「っ!・・・す、すみま・・・」
「いいよ、謝らなくて」
あ・・・
会長の声が、いつもと同じ。
いや、いつもより・・・優しくて温かい。
「ほっぺ叩いちゃったお詫びに、臣ちゃんのこと・・・いっぱい慰めるから」
「か・・・いちょ・・・」
「いっぱい・・・甘えて」
大きな手で、優しく頭を撫でられる。
もう、我慢できない。
「うっ・・・く、あああああああっ」
僕は声を上げて泣いた。、
力いっぱい、会長にしがみついて。
大粒の涙で、会長のシャツを濡らして。
「あああっ・・・、か、会長、ぼ、僕・・・ぅっ」
「うん」
「こわ、かった・・・、殴られ、て、お、犯す・・・とか、いわれて・・・っ」
「・・・うん」
「とび、しまさん、を・・・まも、守らなきゃ、って、怖がってる場合、じゃない・・・って」
「うん」
僕の体の震えを抑えるように、
会長が強く抱きしめてくれる。
「怖かったよね。それなのに・・・よく頑張ったね」
―頑張ったね。
その言葉が、胸の奥まで沁みて、
涙が・・・止まらなくなる。
「ふ・・・っ、う、ぅ・・・」
「臣ちゃん・・・いいよ。いっぱい、泣いて」
会長が頭を撫でてくれる。
会長が抱きしめてくれる。
僕は、安心感に包まれながら、
震えが止まるまで、ひたすら泣き続けた。