聡明生徒会長 10
生徒会室に戻ると、
武山さんの言うとおり、会長が座っていた。
もう、いつもの会長だろうか。
ドアを開けると、ゆっくりと会長が僕を見る。
だけど、いつもの笑顔は無かった。
「・・・・・・お疲れ様です」
「お疲れ様」
この会長の冷たい声も、笑顔がないのも、
全部、僕のせいなんだ。
「・・・か、会長」
「なに?」
僕はゆっくりと会長の前に行き、頭を下げた。
「申し訳ありませんでした。
僕が力不足で、僕のせいで飛島さんに怖い思いをさせて、みなさんに迷惑をかけて」
「・・・うん」
「会長が来てくれなかったら、飛島さんは・・・。本当に、すみませんでした!」
「・・・それはいいんだけどさ、顔、上げてくれる?」
「え・・・」
その言葉に従って、勢いよく顔を上げる。
すると、頬に柔らかいものが触れた。
「痛かったら、言って」
呆気にとられている僕の頬に、
会長は大きな絆創膏のようなものをピッと貼った。
「あ・・・」
「痛くない?」
「少し、沁みますが・・・大丈夫です」
「そう」
会長は立ち上がって、歩き出す。
「俺もう帰るけど、送っていった方がいい?」
「・・・い、いえ」
「そう。じゃあ、また明日」
会長が歩いていく。
明日になっても、この会長のままだったら・・・
でも、僕のせいで会長は冷たくなった。
きっと軽率な僕に愛想を尽かしたんだ。
だけど、僕のせいだってわかってるけど・・・
「会長!」
ドアの開く音が聞こえて、僕は咄嗟に叫んでいた。
音が、止まる。
「なに?」
返ってくるのは、やはり冷たい声。
どうしよう、どうすればいいんだろう。
「・・・あ・・・・・・」
何を言っていいのかわからなくて、会長を見つめる。
会長は無表情のまま、僕を見ていた。
僕は、手に力を込めて、声を絞り出す。
「・・・お、お疲れ様、でした」
やっぱりだめだ。
元凶である僕は、何も言う資格なんてない。
また涙が出そうになって、ぎゅっと目を瞑る。
「ああもう、どうしてかなぁ!」
会長の怒鳴る声と、ドアの閉まる音がする。
だけど、会長は部屋から出てはいなかった。
だって力強い足音が、徐々に近づいていたから。
僕は会長を、
完全に怒らせてしまったんだ。
――また殴られる。
そう察知した僕は、歯を食いしばった。