聡明生徒会長 1
生徒会室に向かうと、入り口を誰かがふさいでいた。
誰だろう。
近づいていって、ようやくわかる。
飛島さんと、誰かわからないけど先輩だ。
なにやら親しげに話している。
もしかして、親密な関係なのだろうか。
しばらく見ていると、飛島さんが僕に気がついた。
「お疲れ様です。森本さん」
「お疲れ様、です」
「ん?おっと悪い。道塞いでたな。じゃあ飛島さん、例の件よろしく」
「はい」
先輩は飛島さんに手を振って、去っていく。
爽やかでかっこいい人だ。
「あの方、どなたでしたっけ?」
「あ、あの方は――」
「軽音部の伊達だ」
室内から声がする。
中に入ると、武山さんが座っていた。
「お疲れ様です。武山さん」
「お疲れ」
「軽音部の伊達さんが、飛島さんに何の用なんですか?」
「その、部の予算を上げて欲しいって」
「予算だぁ!?」
武山さんがドンと机を叩く。
なぜかわからないけど、怒っているようだ。
「それならなんで俺に言わねぇんだよ!会計は俺だろ?」
「そ、そうなんですけど・・・」
「武山さん、飛島さんに怒鳴らないでください」
「おつかれー」
ドアが開いて、会長が部屋に入ってきた。
と思ったら、武山さんがすぐに会長を呼んだ。
「おい隼人!どうすんだよ」
「・・・何が?」
「伊達だ伊達!あいつが飛島に手出してるんだよ」
「ええっ、手なんて出されてないです!」
「落ち着けタケ。・・・ごめんね桜ちゃん。ちょっと説明してほしいかな」
怒る武山さん。
困る飛島さん。
キョトン顔の会長。
これは、僕の出番だ。
「軽音部の伊達先輩が、部予算の相談を飛島さんにしていたんです」
「桜ちゃんに?タケじゃなくて?」
「だよな!おかしいよな!」
「うーん・・・」
会長が飛島さんの前に立って、いきなり
「桜ちゃん」
「きゃあっ!」
飛島さんの手をぎゅっと握った。
「伊達はね、ちょっと軟派というか・・・女たらしで有名なんだよ」
「そ、そうなんですか?」
「だから他の男子生徒なら、桜ちゃんのファンなのかな~?ですむんだけど、
伊達が桜ちゃんに近づくのは裏があるんじゃ、って疑っちゃうんだよね。俺もタケも」
「なるほど」
武山さんが怒っていたのは、それが理由か。
頭に血が上りやすい人ではあるけど、
こんなに早く着火したのは、飛島さんを心配してのことなんだ。
「ヤった女の数は3桁だとか自慢するようなバカだから、気をつけろよ、飛島」
「ヤっ・・・た?」
「とにかく!次来たら、予算の相談なら俺にしろって言え」
「は、はい」
飛島さんの気迫に押され、了承する飛島さん。
でも内気な飛島さんの性格なら、おそらく言えないだろう。
そのときは僕が助けなきゃ。
だって僕は、副会長なんだから。
あ、そうだ、忘れてた。
「会長、手、離してあげてください。セクハラですよ」