プロローグ-反撃の狼煙-
※この物語に登場する人物・団体はフィクションです。実在する人物・団体等とは一切関係ありません。
――――鬨の声は上がり、反逆の時が来た。
今こそ立ち上がる時である。
土地は奪われた。栄誉は奪われた。
生命は奪われた。世界は奪われた。
残されたのは僅かな大地と、意志のみ。
この手にあるのは、その僅かのみ。
――――同胞達よ、顔を上げよ。
嵐は過ぎぬ。空は晴れぬ。
大地は芽吹かず、河は枯れ果てた。
寝食を共にした者は死に、語らった夢は永遠に訪れぬ。
我々はあらゆるものを失った。
何にも代えられぬものを失った。
故に問おう、我が同胞達よ。
これ以上何を失う。
これ以上何を、喪うのか。
我が同胞達。終わりなき戦いを生き延びた我が友よ。
誇り高き、戦士達よ。
歩みを止めるな。決して、俯いてはならぬ。
失う事に屈してはならぬ。悉くを、取り戻せ。
無くす事に臆してはならぬ。遍く、守り抜け。
希望を。復讐を。覚悟を。自尊を。
各々想いを胸に、今こそ戦火を灯せ。
鎧を纏え。剣を持て。槍を構えよ。盾を翳せ。弓を引け。
勇ましき英雄の誰より勇敢に、眼下の敵を討て。
燃え広がる地獄の炎より熾烈に、異形の者を狩れ。
共に戦場を駆け抜けし戦士達よ、絶望するな。
上げた顔の前には討つべき敵が。
剣振るう隣には友が。
背には志を共にした同胞がいる。
故に、再三繰り返す。
顔を上げよ、戦士達よ。
たとえここで討ち死のうとも、我らの戦いは無駄になることはない。
後に続く者が、いる。
必ず、現れる。
走れ、我が戦士達よ。
今が我らの番だ。
――――さて。駆け抜けるぞ、此度の戦場も。
たとえこの身が朽ちようとも。この国が落とされようとも。
我が血は絶えず続き、我が祈りが滅びることはない。
故に、真に滅びるものは何一つとてありはせん。
そうして、赤く染まった大地の中。
屍が磔にされた丘の先で、彼の将は空を見上げていた。
薄ら笑いを浮かべて、灰色の空の向こうを眺めていた。
そんな、夢を見た。