魔王の四天王②
「『商法』様!我等は、商法様を応援致しておりますから!!!」
「あっ、あぁ、うん、ありがとう。」
『商法さん』と名付けられ生まれた、魔王の式神の一人。
魔王の国の整えられた石畳が敷き詰められている大通りを彼が歩いている時、通りの両脇に立ち並ぶ商店から多くの声が掛けられた。
それに、『商法さん』は戸惑いながら返事を返した。
どうして自分に優しい声を投げ掛けてくるのか。
商人である彼らを裁き、此処へ送ったのは『商法』である彼だった。
だというのに、どうして?
その応援が、つい先日から魔王の国中を巻き込んで論争を巻き起こしているものに関する事だとは、理解出来た。六法の内で最弱は誰か。詳しい内容は内密のことであるから広がりはしなかったが、ただ、その一言だけは面白可笑しく広がっていた。
それからというもの、『商法』は多くの商人達から声をかけられる毎日を送っていた。
それに『商法』は戸惑いが隠せない。
擬似生命体として生まれたばかりの彼には、まだまだ人間の細やかな心情というものを、理解出来ないでいた。
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罪人としてこの国に送り込まれてきた商人達の中には、その期間を終えると彰子に懇願する者が少ながらず居た。このまま、この国に住み込ませて貰いたい。そう願う商人達は、この新しくも秩序があり、これからの大きな可能性を秘めている国での新しい商売に、夢を見たのだ。彼らの元居た場所では、大きな繋がりを築いている大商人達が幅を効かせ、他の商人が大きく発展することを阻んでいた。だからこそ、彼らは罪に手を染めて、そして裁きを受けることになった。
裁きの期間を終えて、そんな場所に戻ったとしても、彼らはきっと商人という職にある以上は罪を犯すことになる。そうしなければ、生活を営むだけの利益を得ることは難しいのだ。
ならば、この真っ白なこれからに溢れている場所で、しかも『商法』を遵守していれば心強い味方にもなる、そんな秩序に守られている場所で再出発したい。此処ならば、彼らにも希望はあるのだ。
そして、これを考えることは許されないことかも知れないが。
魔王の支配がこの大陸以外にも広がったなら、と商人達は夢見ていた。
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