逃避
深層心理は謎だらけ
ベットにうつ伏せになって寝ている。髪がボサボサのダサい普段着の男がいる。因みにソックスは両方揃っていない、髪はスポーツ刈り、容姿は中の下といったところだろう、簡単に言うと不細工である。当然ワックスや髪を染めたことはない、だって不細工だから。
いくら頑張ったところで顔の整形でもしない限りオシャレをしても意味がないだろう?、つまり不細工がいくら着飾ろうと土台が不細工なのでキモいだけである。
「ジリジリジリジリ…」
いつものように7時15分にセットした目覚まし時計が俺の耳を無差別に攻撃してきた。さあ、反撃である、目覚まし時計を思いっきり上からはたいた。
「パチンッ」
すると忌々しいアラームはやんだ、そして5分後、やっとの思いで男は目を覚ました。今日も退屈な一日が始まるそんな気がした。そんなどうでもいいことを考えていると
「早く降りてきなさい!」
母がおっきな怒声で俺の思考を無理矢理、妨げた。
「うるさいよ!!!わかってんだよ、んなこた~よぉ~!毎朝毎朝、朝っぱらからキレるなよ、ばあさんが!」
俺も少しイライラしていたので、母と同じように怒声で返してしまった。因みに母は婆ではない45歳である。
そんないつものやり取りをしながら俺は重い腰を上げ階段を降り一階の座布団に腰を下ろした。すると…
「キャン!」
可愛すぎる家のチワワ(小太郎)が俺の膝の上に乗ってきた。
「お~よしよし」
あまりにも愛くるしいのでふわふわした毛をなでた。すると目を細めてますます、すり寄ってきた。
「可愛すぎる!!!!」
小太郎をなでながら、ふと机を見ると、カレーパンとメロンパンがあった。迷わずカレーパンを取った。メロンパンとか中の方味薄いし、あんまり好きじゃない。
めんどくさいが学校へ行かなくてはならないチワワを膝からしぶしぶどかし、そそくさと高校に行く用意をした。
「じゃあ行ってくるわ~………」
当然返事はない
うちは母子家庭だ。母が父と離婚したせいで、きれいでオシャレな家からボロアパートに引っ越した。なので、11月後半だというのに家と外の寒さの違いが分からない、因みに家にいるというのに白い息が出るくらいだ。最悪である。超寒い、早く独立して俺と小太郎だけで暖かい家に住みたい。…いつもそう思う。
鍵を開けて自転車に乗る、学校まで片道40分、…めんどくさいホントめんどくさい、そんなこと考えているとため息が出そうだ。というか出てしまった。
でも、俺はこんな平凡が大好きだ、愛してるといってもいいぐらいに好きだ。中学校の頃、告白して振られた子に「私と平凡どっちを選ぶの?」と言われても俺は瞬時に「平凡」と無表情で言うに違いない。
きっとそうだ。やばい思い出すんじゃなかった、涙が…
まあ、俺はそのくらい平凡を愛している。
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「カーンカーンカーンカーンカーン」
俺はいつものように踏切の信号に引っかかった。運がない。そして俺と同じように他校の生徒や会社へ行く大人もこの信号に引っかかっていた。皆、口から白い息が出ている。
後ろから車が走る音がしている、向かい側からも車が来ている。ただそれだけ。
だがその音はお互い何故か止まらない、止まらない!!!
あまりの出来事に俺は横を見て目を見開いた。目の前で起きていることが信じられないからだ。だってそうだろお互い交通事故を自分からしようとしているのだから。
「はぁ!?」
あまりのことに思わず変な声が出た。そして…
「ガシャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン」
やはり車は踏切を突っ切り正面衝突した。わけがわからない。
車がぶつかった衝撃でガラスが割れ、俺や周りの人の方へ飛んでいった、ガラスは俺の耳を掠める。
「何で?」
自分の足がバイブのように震えた。よほど怖いのだろう、周りから「きゃあ!」や「うわぁあ!」という悲鳴が聞こえる。どうやら、皆無事なようだ。
皆と同じように怖かったが俺は悲鳴ではなかった。不思議だからだ。普通ありえない、まるでおかしな夢を見ている気分だ。
目の前の二台の車は、片方が踏切の真ん中に、もう片方はぶつかった衝撃で道路に、はじき出されていた。因みに周りの人は被害を受けて無いようだ。
俺はすぐにでもこの場から逃げ出したかった。みんな同じ考えだろう、だけど足が震えて動かなかった。
そんなことより気がかりなのが踏切の真ん中にいる車である。後15秒もすれば電車に轢かれてしまうからだ。でも、俺はこの時、自分のことしか考えていなかった。
「……た…すぅ……けて…………たす…けて………こど……も…かぁい…る………のぉ…た……すけ…て」
その声が何故か妙にはっきりと聞こえた。どうやら「助けて子供がいるの助けて」と言っているようだ。
その声に気づいたとき、やっと我に帰ることができた。
この時、俺の考えは(逃げる、助けに行く)の二択だった。今行けば、最大1人は助けられるかもしれない、そんな甘すぎる考えが頭によぎった。
だが、それと同時に俺が行かなくても誰かほかの人が行ってくれるだろうという考えが浮かんだ。つまり、人に任せて、自分は安全なところで傍観しているという考えだ。
人任せな考えだったが俺は瞬時にこの考えでいくことを頭の中で選択した。
そう、これこそが当たり前な普通の人間の考えである。人間という生き物は、所詮自分が一番可愛い、人のために自分を賭けるのが怖い、だから見て見ぬふりをする。そうだろう?みんな誰しも目を背けない限り知っていることだ。
ビクビクしながら周りの人の反応を伺う………
「なんで………」
皆横を見たり、下を見たりしていた。つまり、現実から目を背けていた。
俺はその反応を見て
なんで!なんで誰も助けようとしない!!!助けないと轢かれて死んでしまうのになんで!?とおもわず思ってしまった。自分にも当てはまるのにだ。
人間という生き物は、所詮自分が一番可愛い、人のために自分を賭けるのが怖い、だから見て見ぬふりをする。
その言葉が頭をよぎった。途端に心臓が痛いほど激しくなった。
痛みのせいか俺は何故か雲が覆っている真っ白な空を仰いだ。
「はぁ…」
白い息が出る。
…俺は………これで…これでいいのか………このまま見て見ぬふりをしてていいのか?
俺は心の中で自問自答した。
「あぁ」
……………あの時と同じだ、一番大切な友人がいじめられているのに、怖いから、自分も同じことをされるのが怖いから見て見ぬふりをするのか?
「そうだよ」
でも…そうだよな、それが普通の人間の考え。所詮自分が一番可愛い、人のために自分を賭けるのが怖い、だから見て見ぬふりをするものだろう。
…………………………ん?
昔の俺は自分が可愛くて仕方が無かった。今の俺は……………?
「……………あれ?」
よく考えたら、自分なんて可愛くなんかなかった。
自分なんて!大嫌いだった。
地獄に落ちて死んでしまえばいい。
この世から消えて無くなってしまえばいい、いつもそう思ってたじゃないか!
だったら!!!
ならさぁ!!!俺みたいなクズなんかよりも目の前の人が生きていたほうがきっと後悔しないだろう…なら決まりだ。
「助けるか…」
「キィーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
電車がブレーキをかけている。が止まる気配は微塵もない
もう電車がはっきりよく見える所まで迫っていた。もう車が轢かれるまで残り10秒もないだろう。
この時、何故か足の震えは何故か完全に止まっていた。急いで踏切の真ん中にあるボロボロの車に向かう、運転手側のドアは衝突でへしゃげていたが本気で引いたらなんとか開けることができた。運がいい。
運転手の女性の体には大きいガラスが何本も刺さって、苦しい顔をしている。
運転手の女性の肩を掴んで持ち上げようとした時、運転手の口が微かに動いた。
「さえ…り……を…」
かすれた声で聞き取りにくかったが、女性の言いたいことがすぐに理解できた。「さえりを」と言っているようだ。たぶん助手席にいる赤ん坊のことを言っているのだろう。女性の気持ちを考えればもしかすると「自分より赤ん坊のことを助けて欲しい」そういう意味なのかと思った。この時、俺は勝手に自己解釈していたのかもしれない。
「それで…良いんだな」
この時、女性の顔は心なしか、苦しそうじゃなかった。生きることを諦めているのだろうか?
すぐに車の反対側へ回った。回る瞬間、
…電車が見えた。
今ならまだ…引き返せる、俺は少なくとも助かる
そんな考えは浮かばなかった。
電車は残り20mぐらいまで迫っていた。
「はぁーふぅーはぁーふぅー」
あまりの怖さに息が切れた。幸い助手席の窓は割れていたので、そこから赤ん坊を取り出すことが出来た。赤ん坊の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。
「キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ
この時、目ではなく音で理解してしまった。電車のブレーキ音が近すぎることに
………………………………………この時俺は生きることから逃げて諦めた。
俺は
振り向くと同時に赤ん坊を本気で踏切の外へ投げた。
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁ
次の瞬間、周りから悲鳴が聞こえた。
俺はきっとこのことを後悔をしないだろう
俺の行動は正しかったのだろうか?
何故運転手は正面衝突したのだろうか?