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考えるべきこと

「結局、真紘は帰って来なかったな~」

 狼が起きたての身体を伸ばしながら、ホテルにある朝食会場でデンのメンバーや小世美と朝食を取っていた。

「どこ行っちゃったのかしらね?こんなこと初めてじゃない?」

 目を眇めながら根津がソーセージを口へと運んでいる。

「真紘の事だから、下手な事にはなってないけどね」

「これで、意外にも自分の家とかに帰ってたら笑えるよね」

「鳩子、笑い事じゃないから。しかも家に帰ったって意味ないだろ」

 冗談を言い、笑っている鳩子を狼が窘めると、名莉が視線をお皿から狼の目へと移して目を合わせてきた。

 そんな名莉の視線に狼は、一瞬ドキリとする。

「メイ、どうかした?」

「ううん。どうもしてない。ただ、今真紘が苦しんでるのは確か」

「・・・そうだよね」

 狼が名莉の言葉に頷いていると、再び鳩子が口を開いた。

「でも、やっぱ関係してるのはあの女の子なのかな?」

 その言葉に狼たちの視線が鳩子へと向かう。

「だって、あの子と熱く抱き合ってから変になったんだからさ」

 熱くかは少し違う気もするが、やはり皆の考えが行きつく所はそこだろう。皆が困った様に、真紘が可笑しなわけを考える中、季凛は無表情で朝食のパンケーキを頬張っている。それが逆に怖い気もするが、反論しないあたり季凛も同じ考えだろう。

「でも、私ね、真紘くんがあの女の子を好きっていうのは違うと思うよ」

 いきなりの小世美の発言に、全員の興味が集まった。

「どうして?」

 代表して狼が小世美に訊ねると、小世美は少し考える様な仕草を取っている。

「小世美、それは女の感って奴ですか~?」

 鳩子が半笑い気味で小世美を冷やかすと、小世美は腕を組み「うーん、感なのかな」と唸った。

「じゃあ、どんな風に小世美には見えたのよ?あたしは、恋愛事とか疎い方だから、何がそうで何が違うのかっていうのが分からないけど」

「あはっ、ネズミちゃん、それ本当に~?」

 朝食で初めて口を開いた季凛の言葉に、何故か根津が身をたじろぎしてから、狼をちらりと見た。

 何故根津に見られたのか分からない狼と目が合うと、またも慌てたように根津が下を向いてしまった。

「ネズミちゃんって・・・」

「・・・・・・・・・・・」

「あはは・・・・・・・・」

 呆れたような声で呟く鳩子と、沈黙を保つ名莉、そして小世美も少し困ったように乾いた笑い声を漏らしている。

「あはっ。ライバル多しって奴」

 季凛がそう笑いながら、狼の頭を殴ってきた。

「ちょっと、なんで僕が殴られたんだよ?まったく意味分からないんだけど」

「あはっ。ごーめん。なんだか季凛、最近情緒不安定で、狼くんの頭を見たら殴りたくなっちゃった」

 なんだよ?その理由!!理不尽すぎるだろ。

 狼が口を尖らせていると、名莉と目が合った。

 そういえば・・・メイって・・・

「ねぇ、やっぱりメイは心配だよね?真紘とメイって・・・その、婚約者なんだろ?何か、二人とも別々に行動してる事多いから、遂忘れちゃうけど」

 狼が少し乾いた笑いを漏らしながら、名莉に顔を向けると、名莉が目を見開いて驚いていた。

 そんな名莉の顔に、狼は一瞬息を呑んだ。

「メイ・・・?」

 狼が名莉に声を掛けるが、名莉はその場からすくっと立ち上がり、静かにその場から去ってしまった。

 去り際に見た名莉の横顔が悲しそうに見えた。

 え・・・・?

 名莉の予想外な表情に、狼が呆気に取られていると・・・ドスッ。

「うっ」

 季凛が横腹に拳を入れてきた。

「あはっ。狼くんって・・・本当にアホ過ぎて季凛ちゃん、ストレス溜まりそう」

「なっ」

「ちょっと、季凛殴ることないじゃない!?」

 根津が立ち上がって、狼の代わりに抗議すると、鳩子がその根津を宥めた。

「やめなって。確かに。狼は悪気ないかもしれないけど、ちょっとね・・・シビアかな」

「でも・・・」

 根津は少し渋るような顔をしているが、それ以上言葉は発さなかった。狼もそれで良いと思った。名莉がどんな不快感を感じたのか、まだよく分からないが、何にせよ傷つけてしまったのは確かだ。

「・・・うん、私もさっきのはオオちゃんが悪いと思う。でもね、オオちゃん。オオちゃんはどうしてメイちゃんを傷つけちゃったのか、それを理解しないで謝ったらいけないと思うの。もし、ただ謝るだけなら、そんなの謝ってないのと同じことだもん」

「うん。そうだね。僕もちゃんと考えてみるよ」

 狼は固く決意して、頷いた。

「あはっ。考えて答えが見つかった時に、それを見て見ぬフリをしないか心配だけどね」

「え?」

 季凛が小さい声で呟いた言葉を狼は聞き取ろうとするが、それは部屋の隅についているスピーカーから流れる、代表選手を召集かける為の、少しやりすぎとも思える大音量の音楽に掻き消されてしまった。

「さっき季凛が何か言ってたけど、何て言ったの?」

 音楽が静まってから、狼が季凛に聞き返したが、季凛はにこりとした笑顔で誤魔化してきた。

「あはっ。別に何でもないよ。ほら、召集が掛かってるんだから、早く行かないと会長たちに怒られちゃうよ?それに真紘くんも来るかもしれないし」

 それもそうだ。

 この召集は、補欠の選手も集まらないといけない物だから、どっちにしろ真紘も召集対象だ。

「・・・わかった。じゃあ、僕先に行くね」

「はいはい」

「オオちゃん頑張ってね」

「でも、張り切りすぎて無理はしないようにね」

「あはっ。真紘くんがいたら、いつでも連絡してね」

 そんな皆からの言葉に狼は頷いて、選手控室へと向かった。


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