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血の女王と伝説王

 グラウンドに通じるゲートからは、両国の代表選手が入場してきた。

 まずゲートから入場してきたのは、ロシアの代表選手だ。華やかなウェーブを棚引かせた豪華絢爛さを醸し出した女性でロシアの大将、エカチェリーナ・ニコライが登場してきた。

「こんな無意味な試合なんて、すぐ終わらせましょう。祖国の栄光と勝利のために」

「「「「祖国の栄光と勝利のために」」」」

 エカテリーナの言葉を残りの四人が復唱する。

 復唱した四人は、右からヴァルヴァラ・ブルシロフスキー、リリア・ベクマン=シチェルビナの女子二人と、リナト・バイルシュタイン、サーシャ・キーロフ男子二人だ。

「なんか、凄い息が合いすぎてて気迫あるね」

 狼がロシアの代表選手から出る凄みに驚いていると、鳩子が情報端末の画面を出してきた。

「ロシアは前回三位だからね。今回は優勝狙いなんじゃない?」

 絶対にそうだろうな。

 グラウンドにいるロシアの代表生を見ながら、狼は思った。

 しかも今回は、強国の一つであるアメリカがもういない。ロシアからしてみたら、残る強敵はドイツという事になっているのだろう。

「でも、イギリスだって前回四位だよ?けっこうキツイんじゃない?」

 鳩子が首を軽く動かして、ロシアと対峙しているイギリス代表生の方を見ている。

 イギリスの代表生は見るからに英国紳士さを醸し出したアーサー・ガウェイン率いるメンバーで強者揃いと騒がれているメンバーだ。

 男女女男という順番で立っているイギリス軍勢は、左からセドリック・パース、ジュリー・ボガード、イーニアス・ベイト、レヴィン・アシュモア。

 その五人がロシア選手の前に立ち並ぶ。

「随分と我々英国も侮られたものだな。だが、我々はどんな強敵が現れても絶対に勝つ。・・・だが、貴族としての誇りを忘れないようにな」

 そう言って、アーサーが仲間にウィンクをし、メンバーがそれに笑顔で頷く。

 それからすぐに試合開始のホイッスルが鳴り、選手たちがグラウンド内に、それぞれが決めた位置にばらける。

 けれど両国の大将はグラウンドの中央に立ち止まったまま動かない。

「ニコライ家の末裔である私の前に、堂々と立っているなんて、身の程知らずめ」

「失礼。だが私は貴方に敬意を払う必要はないと思っているからね」

「愚か者が・・・」

 エカチェリーナは手を前に出しながら、杖型のBRVを復元した。その杖にはBRVとは思えない程、豪華な装飾が施されている。

 その杖をエカチェリーナが地面に突き刺すと、それを発端に地面が割れそこから、ありとあらゆる武器が飛び出してきた。

 皇歴幻技 ビスカニエーチナシチ サクロヴィシシェ

 地面から突き出された武器たちが、一気に地面から離れイギリス選手に矛先を向けた。

「今回も出て来たぞ。ニコライ選手の大技でもあり、敵を幾度となく一掃してきた技だ!!その為、「血の女王」二つ名をニコライ選手に与えた技でもある、この無限とも思える程の武器たちをガウェイン選手率いるイギリス選手は、どう切り抜けるのか!?」

「今からここの名は、赤の広場となるのよ」

 ニヤッとした笑みをエカチェリーナが浮かべながら、地面に突き立てた杖をアーサー達の方に振った。

 それを合図かのように一斉に様々な武器たちが、物凄い速度でイギリス選手たちに襲い掛かる。

「この技の恐ろしさなら、十分に知っている。この技で前回は敗退したような物だからな。だが・・・同じ轍を何度も我々が踏むと思うか?セドリック!!」

「イエス、マイ、ロード」

 アーサーに答えたセドリックが、アーサーの横をすり抜け、前に出る。

「セット・アップ」

 復元言語を言い放つと、セドリックの全身が堅い鎧に覆われる。そんなセドリックを気にも止めず、エカチェリーナの放った武器たちはイギリス選手の頭上に襲い掛かる。

 だがその武器たちは、一定の空間で次々と起爆していく。

「なにをっ!」

 自身の攻撃が破られると思っていなかっただけに、エカチェリーナの声に動揺が走る。

「そういえば、セドリックは今年初めての参加だったな・・・」

 皮肉を交えつつ、アーサーがニヤッと笑った。

 そのアーサーにエカチェリーナが睨みを効かせながら、舌打ちをした。

「ついでに、さっき赤の広場とかなんとか言っていたが、それは虚言だ。なぜなら、この戦いはカムランの戦いにさせてもらう」

 すでにアーサーの手には復元された槍が持たれていた。そしてその槍を構え、エカチェリーナに疾駆する。

「図に乗るな!」

 リリアがサーベルを構えながら、槍を持つアーサーの前に立ち阻む。その二人を包囲するように、リナトがドラグノフの銃口から弾ではなく、超圧縮された風圧弾が放たれる。

 アーサーがその風圧弾を薙ぎ払うが、その風圧弾はバットで打たれた野球ボールのように様々な方へと飛ばされただけだ。その一弾がアリーナの天井へと衝突し、天井の一部が抜けおちる。

 一部悲鳴も聞こえたが、それもすぐに静まった。

 突然の出来事に不意を突かれ、驚いたものの皆がそれぞれの対処をすばやく行っている。はっきり言って、瓦礫が落ちてくることなど日常茶飯事だからだ。

 それはアストライヤーに携わる者なら世界共通だろう。

「うむ。楽しくなってきたな。・・・では、これから伝説の剣の復活祭といこうじゃないか」

「ベラベラとよくしゃべる男だ」

 リリアがサーベルを素早く揮う。だがそれを受け止めたのはアーサーの槍ではなく、真摯な表情を浮かべたレヴィンの二双剣だ。

「邪魔などさせるものか」

 そこで激しい剣戟戦が始まる。

 小回りを利かせたレヴィンの動きに、リリアが翻弄されている。

「完全にロシアが押されてるね」

「あれは完全に勝ちに拘りすぎて、焦ったわね」

 狼と根津がそんな会話を交わしながら、グランドから視線を外すしていると、その間で物凄い光がグランド内を包み込んだ。


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