表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/493

Dog’s

「俺もまだまだ未熟だな」

 真紘は一人、保管庫の二階を歩きながら、そうぼやいた。

 さきほどの光景を思い出してだ。

「まさか、黒樹の存在を忘れていたとは・・・」

 仕掛けられた罠から抜け出すのと、トゥレイターであり一人で抜け出そうとしていたイレブンスを仕留めたのだが、そのことに集中しすぎて狼のことを忘れていたのだ。

 そのせいで狼まで罠に掛けてしまった。

 それは予想外の失態だ。

「俺が黒樹の分まで、頑張らなければいけないな」

 そう決意し、木の板で続いている廊下を歩く。

 それにしても、何故トゥレイターであるイレブンスがこの場にいるのか。しかも・・・

「・・・似ている」

 以前学園を奇襲した際は、仮面を被っていて顔を見たことがなかったが、ついさっきその顔を見た。そして内心で驚愕していたのだ。

 真紘が内心で驚いたイレブンスの素顔は、公家の一つである九条彰啓に似ていたのだ。

 ただ単に似ているだけなのか。ただの邪推なのか。

 だが邪推だと拭いされないほど、二人は似ている。

 もしあのトゥレイターである男が九条の家と何らかの関係があるとしたら、何故その者がトゥレイターにいるのか?そんな疑問と共に、その事を九条の者である綾芽は知っているのか?という二つ事柄が思い浮かぶ。

「そこは後に確かめるしかないな。今はここにあるBRVを探し出す」

 真紘は二階の部屋を一つ一つ探しながら、進んで行く。

 だがどの部屋を探してもBRVらしい物は見当たらない。

 まだまだ、この保管庫には上の階がある。それを虱潰しに探していくしか今は方法がない。それはかなりの時間を要することだ。

 しかも窓から空を見ると、すでに日が落ち始めていた。

 このままでは、夜になってしまう。

「どうするか?」

 一人考え込む真紘の傍らに、甲高い声が聞こえてきた。いや、声ではなく鳴き声だ。

 キャン、キャン。

「この肌を逆撫でるような鳴き声・・・」

 真紘は鳴き声がする方へ反射てきに振り向く。

 そして悪い予感という物は、よく当たってしまうものだ。

 振り向いた先には、立ちくらみを引き起こしそうなほどに、大量に押し寄せてくる小型犬。

 大量の小型犬が舌を出しながら、円らな瞳で真紘に迫ってくる。

「やはりか。こんなトラップも存在していたとはな」

 引き攣り顔で真紘が後ずさるが、犬たちはお構いなしに後を追う。

 まるで追いかけっこだ。

 真紘自身は必死だが、犬たちはただジャレているようにしか思っていないだろう。犬たちの高揚感は最初の頃よりも、確実に上がっている。

そしてその内、廊下の端へと追い込まれ、犬の群集に行く手を完全に塞がれてしまった。

「くっ」

 真紘は思わず苦渋の声を漏らしてしまう。

 俺には、この犬たちを蹴散らすことなど出来やしない。

 自分に向かってくる敵は容赦なく屠る。

 そう決めている。

 だがしかし・・・・

 目の前にいる犬たちは、自分の牙を剝きだしにすることもなく、ただ愛くるしい顔で見つめてくるだけだ。そんな犬を斬ることは出来ない。

 そう刃を向けるにしては

「か弱すぎる」

 真紘は一言そう呟きながら、頭を振った。

 そんな真紘を見守るかのように犬たちは、首を上に向け真紘を見つめている。

 少しの風を起こして蹴散らすか?

 いや、ダメだ。

 変に転がって、傷つけてしまっては・・・。

 では、自分があの犬の群集を跳躍して、抜けるか。

「よし、そうしよう」

 決意し、足に力を込めた、丁度その時。

 犬たちが方向転換をし始め、真後ろに一直線に駆けて行く。

「なんだ?いきなり?」

 真紘は犬たちと少しの間隔を開けながら、追って行く。そして犬たちが一斉に足を止めたと思ったら、下から吹き抜けとなっているフロアの方に向け、咆哮を上げていた。

 そしてその吹き抜けとなったフロアの下から、犬たちの咆哮とは違った音が聞こえてくる。

「今度は一体なんだ?」

 真紘は吹き抜けとなった場所から、下を覗き込み、聴覚を研ぎ澄ませた。

 すると、何か者が動くような音がしたと思ったら、まるで花火でも上がるような、風を切る音と共に、下からすごい勢いで

「嘘だろーーーー!!」

 という狼の驚愕の声と共に、イレブンスと狼が上へと昇って行ってしまった。

「なっ」

 真紘はそんな二人を見ながら口を、ぼかんと開いた。

 どういうことだ?あれは・・・・。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ