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迷宮内

 ジャキ。

 カチャ。

 二つのBRVが奏でる音が重なり合う。

 怪訝そうに眉を潜めているイレブンスが何故かびしょ濡れ姿で、狼たちに向けアサルトライフルの銃口を向けてきていた。

 それに対抗するように、真紘もイザナミを構えて居合を取っていた。

「もう一度訊く。なんでおまえらがこんなとこにいるんだ?」

「それはこちらの問答だ。何故貴様がここにいる?」

「はっ。おまえらなんかに言うわけないだろ。馬鹿か」

「なんだと?貴様のような無粋な者に言われる筋合いはない」

「「はああああああああああああああああああああああああああああ!!」」

 二人の咆哮が上がり、二人が肉薄する。

「ちょっと、二人ともやめろよ!!」

 狼も慌ててイザナギを持ち、二人の間に入り込む。そして三つのBRVがぶつかり合う寸前。

 ゴトッ。

 という音が鳴り、床がパックリと口を開けた。

「はっ?」

「なっ?」

「え?」

 三人は短い声を漏らしながら、気持ち悪い浮遊感と共に更なる床の底へと落ちて行く。

 しかも床の底は深いらしく、落下速度もどんどん上がって行く。

 どれだけ深いんだ?

 狼は見えない次なる床へと視線を向けた。

「くそっ!こんな罠に何度も何度も引っかかってたまるかよ!!」

 そう叫んでいるイレブンスは瞬時に細いワイヤーを出すと、それを頭上に投げ、狼たちが蹴破った扉へと引っ掛け、落下を止める。

 宙ぶらりとなったイレブンスを横に、狼と真紘の落下は止まらない。

「自分だけズルくない?」

「バーカ。俺はおまえらと違って用意周到なんだよ。そんじゃ、あばよ」

 意地悪な笑みを浮かべながら、イレブンスが狼と真紘に手を振りワイヤーを伝って行く。

 だが、そんなイレブンスに不運がやってきた。

 ワイヤーを伝って上へと向かうイレブンスの前にさきほど、狼たちが見た日本人形がうえから勢いよく振ってきて、上を向いていたイレブンスの顔面に直撃した。

 日本人形は螺子が入ったからくり人形の為、その重量は意外に重い。その為、それが勢いよく顔面にクリンヒットしたイレブンスは顔面を片手で押さえながら悶絶している。

 あんな痛そうなのを顔面に当たっても、ワイヤーにぶら下がり続ける根性、すごい。

 そこだけは感心してしまう狼だが、それでも。

「自分だけ助かろうとするから、罰があたったんだよ・・・」

 狼が呟いた横で、物凄い暴風が起こり、狼はその風の影響で上ではなく、暗闇の中にある壁へと押され、イレブンスと同様に顔面を強打した。

「ぐへっ」

 左右にある壁へと激突し、あべし状態になりながら未だに落下を続ける狼の横で、華麗に上へと上がって行く人影が、暗闇に馴れた目で捉えることが出来た。

 上と上がり、頭上にある床へと綺麗に着地した真紘は、満足そうに頷いている。

「人に迷惑掛けておいて、一人で納得するなよ!!」

 狼はヒリヒリと痛む顔を押さえながら、真紘に向かって叫ぶ。

「てめぇぇぇ。ふざけた真似しやがってーーー!」

 そう叫んだのはさっきワイヤーに掴まっていたはずのイレブンスが、下へと落下しながら怒鳴っていた。きっと、真紘が起こした風で細いワイヤーの糸が切れたのだろう。そんなイレブンスに狼は同情の念が沸き起こった。

 そんな二人を上で見ていた真紘が一言。

「すまない、先に行く。では、また後で」

 軽く手を振りながら、真紘はくるりと踵を返してしまった。

 そんな真紘を落下しながら見送った狼とイレブンスは、足掻く術もなくそのまま深い床へと落ちた。

 ドン。

「ぐっ・・・」

 短い呻き声を出しながら落ちた狼だが・・・・

「なんか、思ってたほど痛くない・・・・」

 そう呟いた狼だが、すぐにはっとして自分が落ちた場所を見ると、狼の下敷きとなったイレブンスの姿があった。

「ああ!!」

 そう言いながら、狼がすぐにイレブンス退くと、イレブンスは咽ながら、ギロッと狼を睨んできた。

「おい、おまえ、スゲーコミカルな事してくれんじゃねぇーか。人をクッション替わりにするなんてなぁ・・・」

 低い声で、顔を引き攣らせながら狼を睨むイレブンス。

「いや~、別にやりたくてやったわけじゃなくて・・・これは事故というかさ。僕の意思とはまったく無関係っていうか・・・・あはは。ごめん」

「ごめんじゃねーよ。ふざけんな!!なにが『ぐへっ』だよ?舐めてんのか?」

「ほらほら、ここで争っても意味ないって。まずは上に行こうよ。まずはそれからということで。ねっ」

 怒りの炎を燃やすイレブンスを狼は必至で宥める。

「何自分の都合の良い方に話進めてんだよ!!」

「はは。そんな~、まったくそんなこと考えてなんかいな・・・」

 狼の言葉が途中で切れ、狼の表情があんぐりとしたまま固まった。

 嘘だろ・・・。

 イレブンスの後ろで、巨大な鋏を持ったこれまた巨大なテディベア―が暗闇の中、微笑みながら立っている。しかもそのベアーがゆっくりと狼達の方に近づいてきている。

「おい、いきなりなんだよ?」

 そのことに気づいていないのか、狼を訝しみながらイレブンスが目を眇めている。

 狼はそんなイレブンスの質問に答えないまま、後ろの方を指差す。

「後ろになんか、あるのか?」

 ぼやきながらイレブンスが後ろを振り向いた。そして一瞬絶句した。

「おい、なんだ?あの子供に悪影響を及ぼしそうな熊・・・」

「僕に訊かれてもわかるはずないだろ。どうする?」

「どうするって、やられる前にやれだろ」

「えっ、あれと戦うの?」

「もち」

 そんな会話をするイレブンスと狼の前でテディベア―が立ち止まり、鋏を持っていない方の手で自分の胸を押すような仕草を見せた。

すると、子供をあやす様なメロディーが流れた後

「はぁーい。僕はジョン。君の友達さ。さっそく僕と遊ぼうよ!」

 という甲高い機械声でそう言ってきた。

 そんな意味が分からないテディベア―の行動に、思わず狼は絶句してしまう。

「何が遊ぼうよ!だ。今どきおまえみたいなブサイクなクマと遊ぶ、夢のあるガキなんているわけないだろ。誘うんだったら、もっとまともな口説き文句つかいな」

 と何故かテディベア―に説教しているイレブンス。

「そんな呑気な事言ってる場合じゃないだろ!!」

「いや、あまりにも古い手だからな。ついノッただけだ」

「変な所でノルなよ」

「おまえも細かい奴だな。そんな小言ばっか言ってると、早死にするぞ?」

「ほっとけよ!!」

 目の前にいる巨大なテディベア―をそっちの気にしていると、いきなりと言っていいほどのタイミングで、テディベア―が所持している鋏が狼とイレブンスの間の床に突き刺さった。

 狼とイレブンスはぐるりとテディベア―の方を向く。

 視線を合わせたテディベア―は、少し首を傾け立っているだけだったが、狼たちと目が合った瞬間、テディベア―特有の楕円形の手を下に素早く動かし、死ねのポーズを取ってきた。

「なんか、すごい怒ってるけど・・・」

「チッ、熊の癖に生意気だ。そっちがその気ならやってやるよ」

 イレブンスはすぐさまアサルトライフル型のBRVを復元し、銃弾をテディベア―に向け乱射した。

 イレブンスが放った銃弾がクマに命中し、呆気なくテディベア―の表面が破かれ、綿が飛び出てくる。

「ただの雑魚が」

 そう言い放ったイレブンスの前で、再びテディベア―に異変が起きた。

 飛び散る綿が治まったと思った瞬間、引き裂かれたテディベア―の引き裂かれた布がうごめきだし、そこから這い出てくる様に、大量の小さいテディベア―が現れ始めた。

「うわっ、あいつGじゃあるまいし、子供産みやがった」

「気持ち悪いこと言うなよ。少し想像しちゃっただろ!!」

「やべー、なんかあの熊の群集が、Gの群集に見えてきた・・・」

「うげっ。だからそんな事言うの、やめろよ」

 イレブンスが余計な事を言ってきたため、狼の目にも見る見る小クマの群集が、黒光りする物体に見えてきた。

 僕の目、やばいかも。

「おい、すぐに片付けるぞ」

「わかった」

 狼とイレブンスは二つに割る様にして、小クマの群集を払っていく。だが、その小さなクマからも更に小さなクマが出てきて、まるでマトリョウシカのようだ。

「どんだけ増えんだよ!!これじゃあ、限がない。一旦退くぞ」

 イレブンスにそう言われ、狼も動きを止めた。

 そしてそのままクマに背を向けるように狼とイレブンスは疾走した。

 大分長い廊下を疾走し続け、T字に別れる道まで来たところで、二人は足を止めた。

「ここまでは、追ってこなさそうだ」

「ああ、そうみたいだな」

「それにしても、なんでここ、こんなふざけた仕掛けが多いんだ?」

 壁に寄り掛かりながら、狼がぼやく。

「知るかよ。俺よりお前の方が詳しいだろ?元はおまえらの学校の物だろ?」

「そうだけど。僕たちも知り合いの人から聞いて、それで来ただけだから・・・よくは知らないんだ」

「へぇー。そいつの話は信用できんのか?」

「出来るよ。なんせ、真紘の懐刀をやっている人だし」

「・・・・・もしかして、左京が発信源じゃないだろうな?」

「えっ、ああ、まぁそうだけど。というか、左京さんのこと知ってるの?」

 狼が言い終わる前に、イレブンスは脱力したように床へと手をつけていた。

「どうしたの?」

 いきなりテンションが下がったイレブンスを、狼が驚きの視線で見る。

 イレブンスは何故か悔しそうに、手で地団太を踏んでいる。

「左京が情報源なんて・・・くそっ!やられた。すごいBRVがあるなんて、絶対ないだろ。いや、そもそもヴァレンティーネの奴が持ってきた情報に踊らされた俺が馬鹿だったんだ」

 となにか、溜息混じりに呟いていると思いきや、むくっと立ち上がり・・・

「俺、帰るわ」

「はぁああああ。なんでいきなりそうなるんだよ?」

「だって左京のアホが言ってた情報だろ?そんなの俺は信用できないね」

「信用できないって・・・そんな事言えるほど、イレブンスは左京さんのこと知ってるの?」

「まぁな。あのアホのことは、昔から知ってるんだよ」

 腕を上に伸ばしながら、歩き出したイレブンスに並ぶように狼も歩き始めた。

 幸い、この薄暗くて長い廊下にはふざけた仕掛けもなさそうだ。そのため、二人の会話も進んで行く。

「でも意外だったな。左京さんと知り合いなんて。じゃあ、誠さんのことも?」

「・・・・まぁな」

 そう言うイレブンスの表情は微妙に渋るような、顔を作ったような気がした。はっきりとした表情は、部屋の薄暗さでよく見えない。それを疑問に思いながらも狼はあえて口にはしなかった。

 なんとなくだが、触れて欲しくないような空気を感じ取ったからだ。

「ってことは、真紘の事も知ってたんじゃないの?」

「ああ、知ってた」

「じゃあ、なんであんな他人みたいな態度取ってたんだよ?・・・やっぱり敵だから?」

 ついさっきの真紘とイレブンスのやり取りを思い浮かべながら、狼がイレブンスに訊ねた。

「敵とかそういう前に、俺はあいつが気に入らない。そして、あいつは俺を知らない。だったら当然の反応だ」

「・・・なんか、それって変じゃないか?」

「何が?」

「だって、真紘が知らないってことは、話したのはさっきが初めてだろ?そんな相手を気に入らないって、変じゃないか。相手のこともよく知らないのに」

 そんな狼の言葉を、イレブンスが少し気怠そうに聞いていた。その様子は本当に真紘の事が気に入らないっていうのを体現しているかのようだ。

「・・・そんな嫌いなんだ。でも、真紘は良い人だよ」

 狼がこれまでに、真紘に助けられた場面を考えながら頷く。

 だがそんな狼に反論するように、イレブンスが首を横に動かした。

「いいや。あのバカ殿が良い奴なわけないだろ。さっきだって、俺のワイヤーを切ったのは、わざとだとして、おまえの事完全に忘れてたぞ」

「いや、まさか。真紘の事だから何か考えがあってかもしれないじゃないか。僕にまた後でって言ってきたし」

「たく、これだから素人の目は。俺はこの目でばっちりと見たんだよ。あのバカ殿の奴、俺のワイヤー切って、上がってく瞬間、おまえのこと見て少し眉を動かしてたからな。絶対、あれは「やべ、しまった」の顔だね。左京もちょっと失敗したときにあの顔するんだ。一緒にいると感化されるって言うけど、あれはまさしく左京使用だ」

「左京使用って・・・・でも、よくあの時の状態で真紘の表情なんて見れたね」

「当然。狙撃手の視力、舐めんなよ」

「なるほど」

 確かに銃などのBRVを使う名莉などは、動体視力、観察力、的確性、判断力、集中力など様々なことを養う訓練を行っていた。

 それらを鍛えることで、実戦での精密射撃をより確実に行う為らしい。

 イレブンスもきっと似たような訓練を行っているはずだ。そう考えると真紘のちょっとした表情の変化を見るというのは、朝飯前なのだろう。

 到底、狼では真似できない芸当だ。

「そういえば、おまえの名前って狼だけっか?」

「うん、そうだけど。よく僕の名前知ってるね。言ったっけ?」

「おまえが、二回目に俺と戦ってる時に、サードに言ってただろ。憶えてねぇの?」

「ああ!」

 これまでに、色々な事が起きたために忘れていた。そういえば、真紘と間違われて言ったかもしれない。

 それにしても。

「よく、憶えてたなぁ。すっかり忘れてた」

「へっ。おまえと頭のデキが違うんだよ」

 イレブンスが少しすまし顔で答えた。

「別にちょっと忘れてただけだろ。それより、僕の名前訊いて何?」

「いや、狼、おまえって二重人格なのか?」

「そんなわけないだろ!なんで、僕が二重人格になるんだよ?」

 まったく意味が分からないイレブンスの言葉に、狼は思わず声を張り上げてしまった。

 そんな狼の声を少し鬱陶しそうに、イレブンスが耳を塞いでいる。

「いきなり、そんな大きい声出すなよ」

「ああ、ごめん。つい驚いちゃってさ。でも何でそう思ったんだよ?」

「そりゃあ、思うだろ。おまえ一番最初に戦った時は強かった癖に、二回目の戦いは・・・あれ、最悪だろ。弱いし、ビニールシート踏んで、一人で転けてるし」

 イレブンスにそう言われ、狼はやっとイレブンスが言いたい意味を理解した。イレブンスが言っているのは、最初にイザナギで戦った時のことだろう。

 最初の時はイザナギに意識を乗っ取られて戦ったため、みんなが驚く程の戦闘能力を見せたと聞いたが、それはイザナギが狼を誘導していたようなものだ。

 そのため、狼の力とは言えない。

 そう狼の力は、イレブンスが最悪と言った方が、本来の実力なのだ。

「最初に戦った時は、僕の実力じゃなくて、二回目の方が僕の実力なんだ。残念ながら。でも、僕だって、少しは実戦だって積んだし、左京さんに鍛錬も付けてもらい始めたから、少しは成長してる・・・と思う」

 だんだん狼の声は小さくなっていく。

 実戦と言っても、そこまで活躍したかは定かではないし、左京ともまともな討ち合いをしているわけではないからだ。

 いいや。でも、やらないよりはやった方がいいに決まっている。そうだ。千里の道も一歩からと言うではないか。

 僕の努力も無駄じゃない。

 狼は力強く頷いた。

 そんな狼を訝しんだ目でイレブンスが見ている。

「意気込んでるのはいいけど、おまえもバカ殿みたいに左京に感化されるなよ?」

「されないよ。それに感化される所なんてないだろ」

「あるんだよ。例えば、有難迷惑な性格の所とか。少女漫画の見過ぎて、二次元思考が強いところとかな」

「え、左京さんって、少女漫画好きなの?」

「ああ、まぁ知らなくても当然だろうな。まるで男子がエロ本を隠れて見るように、少女漫画を読んでるんだからな。だから、あいつの部屋漁ってみ?何冊か出てくるから」

 イレブンスに言われ、狼は左京が一人、部屋で少女漫画を見ている姿を思い浮かべる。

 少女漫画を見ながら、ハラハラワクワクしている左京。

 ・・・・うーん、似合わない。

 いつものキビキビと動く左京が、少女漫画を読む。どうも不釣り合いだ。

 狼がそんなことを考えている間にも、イレブンスが口を開く。

「アイツ、昔俺がそのことをひやかしたら、血相変えて慌ててたからな。あれは傑作だったぞ。ははは」

 本人からしたら笑い事じゃないんだろうに。

 隣で思い出し笑いをしながら歩くイレブンスを見ながら、狼は苦笑を浮かべた。

「それにしても、この廊下長くない?」

 歩きながらふとした疑問を狼は口にした。

 するとイレブンスも「確かに」と頷いて、周りを見渡し始めた。

「もしや、俺たちここをぐるぐる回ってるとかないよな?」

「それはないだろ。だってそしたら、僕たちが曲がってきた廊下があるはずじゃないか。でも、そんな場所なかっただろ?」

「わかんないだろ。どんな細工があるのかわかんない所なんだ。何があってもおかしくないだろ。もしかしたら、俺たちが来た場所が塞がってるっていうベタなオチとかな」

「そんな馬鹿なぁ・・・」

 そう言い返した狼だが、頭の中で「楽しいだろ?若いうちは楽しまないとね。あははははは」という暑苦しい顔で、言ってくる宇摩豊の姿が思い浮かんでしまった。

「そんな馬鹿なことあるかもしれない」

 少し引き攣った狼の顔を見て、イレブンスが首を傾げているが、それについて言及されることはなかった。

「でも、どうやってここから抜け出す?」

 狼が短い嘆息を尽きながら、イレブンスに訊ねた。

 するとイレブンスが少し黙り、考え込む。

 そしてイレブンスが黙りこくること、数十秒。

「ロック・オフ」

 そう言って、アサルトライフルを出し天井に向け、銃弾を放つ。

 するとパァァァンと金属が跳ね狩るような音と共に、狼たちの元に銃弾が跳ね返ってきた。

「うわぁ」

 その銃弾を狼が慌てて避ける。イレブンスが放った銃弾は天井と床を何回かバウンドするようにして、やっと静まった。

「危なかったぁ~。いきなりそんなの取り出すなよ!!」

「さっきのはゲッシュ因子を流してない普通の銃弾だったからな・・・・今度は因子流し込んで撃ってみるか・・・」

 狼の言葉をまるで聞いていないように、イレブンスがそんなことを呟いている。

「どうするんだよ。またさっきみたいに僕たちに向かってきたら!!」

「いや、なんかイケる気がする」

 どこからその自信は出てくるのか、狼は不安で仕方ない。

 だが普通の銃弾でも危険なのに、因子を流した弾なんて危険すぎるではないか。

 けれど・・・

 狼は隣でアサルトライフルを構えているイレブンスはやる気満々だ。

 その姿に辟易しながら、狼は肩を落とすしかない。

 どうせ、僕が何か言っても、聴く耳を持つかどうかだ。



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