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破壊しなければならない1

 突然の警告に、弛緩していた狼たちの気分が一気に強張る。

「どういうことだ?」

 真紘の言葉とともに、狼たちが豊へと視線を投げる。そしてその視線の先にいる豊は、やや戸惑った表情を浮かべていた。

 しかし、狼たちの訝しげな視線に気づき顔を顰めさせた。

「考えられるのは、ミサイルの発射システムが何らかの誤作動を起こしたか……もしくは、私の身体の異常を感じ取っての、連動発射システムが起動したかのどちらかだね」

「考えるまでもなく二つ目の理由に決まっているだろ! いや……今はこんな事で論議している時間はない。何とかしてミサイル発射を食い止めるぞ」

 豊の言葉に、真紘が呆れ混じりに溜息を吐き、ミサイルの方へと視線を移した。

 ミサイルの数は、六機。

 ここで動けるのは、狼自身を含め四人。つまり一人一機を相手にするとしても、数が足りない。

 しかも、ミサイルの弾頭部分にある大量の因子を考えれば、無闇に破壊することはできない。

「地上で無理なら、上空に飛ばしてからの破壊が良いかもな。といっても、このサイズ之奴じゃ、マッハ20くらいは余裕で出すはずだ。けど地上への影響を考えると、最低でも飛んでから一〇秒以上は、手出しが出来ない。俺が狙えるライフルで確実に狙える距離が六キロだ」

「つまり、地上からの攻撃は難しいという事だな」

 真紘の言葉に出流が頷いている。

「ここに情報操作士がいれば……」

 今の状況を一気に打壊できたはずだ。

 しかし、鳩子は別の場所におり慶吾との情報攻防をしている。

「いや、待てよ」

 今まで敵対していた豊とは、もう敵対はしていない。なら、慶吾に協力を仰げないだろうか?

 狼がそう思った矢先。

『ミサイル発射まで二分切ったよ。早く対策を考えないと』

「條逢先輩っ!」

『残念だけど、俺は黒樹君たちに手を貸すつもりはないよ』

「どうして……?」

 自分の出鼻を挫くような慶吾の拒絶に、狼は動揺が隠せない。

『理由は簡単だよ。このミサイルは使われるか、破壊されないといけない。そうしなければ、面倒になる事は目に見えてるからね』

「だとしても、協力は仰げないんですか?」

 慶吾の情報収集力があれば、音速で飛行するミサイルを追跡する事が可能なはずだ。けれど、慶吾からの返答はない。

 無言の拒絶が狼にのしかかる。

 狼と共に慶吾の言葉を聞いていた、真紘たちも眉を寄せたままだ。

「黒樹、今は説得に時間を費やすことは出来ない。なら、俺たちで何とかするしかない」

 真紘が首を横に振りながら、狼に声を掛けて来た。煩わしいアラーム音が狼の耳を激しく揺さぶってくる。

 深く考えている暇はない。けれど、かといって、音速で発射されようとしているミサイルを迅速に破壊する方法が思い浮かばない。

 その間にも、狼たちが立っていた床が左右にゆっくりと開き始めた。

 狼たちもその床に合わせて、倉庫内の端へと押しやられる。

 アラーム音と共に、ミサイルの発射台が上へ上へと上がって行く。

「俺たちもここから、外に出るぞ。ここにいたら、発射時の発火に巻き込まれてしまうからな」

 真紘と出流がそれぞれ、綾芽と豊を抱え開いたハッチから外へと跳躍する。狼と名莉もそれに合わせて、ハッチから外へと出る。

 すると、甲板にはすでに真紘たち以外の人影があった。

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