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アストライヤー〜これは、僕らの世界と正義の物語〜  作者: 星野アキト
第12章〜Queen of the night aria〜
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タイムロス

 先に行く操生の背を横目で見てから、イレブンスは自分へと銃口を向けている公安へと先制攻撃として銃弾を飛ばす。イレブンスが飛ばした銃弾は二発。一発の弾がこちらへと向けられる銃の銃口を塞ぐように命中する。すると因子を含んだ銃弾が命中した銃の銃身が大きく抉られたように破裂する。

 二発目の銃弾が車のタイヤを撃ち抜き、前輪を撃たれた車が蛇行しながら、近くの建物の壁を削りながら急停止する。そんな車から脱出した公安の男一人が後方から来た味方に車のボンネットに飛び乗る。

そしてそのまま男がイレブンスに向け、新たな銃から銃弾を放つ。銃口からは火花が上がり、その瞬間には、音速の速さを保持する高速弾がイレブンスへと向かってくる。

 イレブンスは口許に笑みを浮かべながら、自分に向かってくる高速弾へ銃弾で撃ち落とし、さらに、バイクの方向を急転させ、自分たちへと向かってくる公安の車へと向かって行く。

 車とバイクが各々、アクセル全開で向かって行く。

 高速で動く車体のハンドルから手を離し、イレブンスは手に持った銃の銃爪を引く。イレブンスが放った銃弾が男の右足を撃ち抜く。

「的中からは外してやったんだから、感謝しろよな」

 足を撃ち抜かれ、その痛みに表情を歪める男にイレブンスが呟いた瞬間、イレブンスの横ではオースティンの電磁投射砲が放たれ、アスファルトの道を荒削りしながら一気に車二、三台を後方に吹き飛ばして行く。

「うぜーんだよ。雑魚がワラワラと戯れやがって……品がねぇー」

 オースティンが肩を竦めながら、そんな事を呟いているが……その顔は満更でもなさそうだ。

 アイツ、自分で品がねぇー、品がねぇーとか言いながら、やり方はやっぱアメリカンらしさが出てるな。ダイナミックで派手だ。

 内心でオースティンのやり方を見ながら、イレブンスはそう思った。

 それからイレブンスはオースティンと共に、自分たちを追ってくる公安の足止めを行う。

 イレブンスが、銃弾を銃に装填し、銃撃を開始しようとした瞬間。自分の頭上に影が出来た。はっとして、イレブンスは車体を横にスライドさせる。

 イレブンスがバイクを横にスライドしたのと同時に、元々居た地面に真上へと飛んで来たヘリによる機関銃の銃弾が叩き付けられる雨のように振ってきた。

「車の次はヘリか……」

 イレブンスはそう吐き捨て、銃を変えた。手に持ったのはバレットM82。対物ライフルとして、重宝される銃型のBRVから、自分の頭上の後方に付く形で飛行しているヘリに向かって、銃撃を放つ。

 イレブンスの銃弾を受けてヘリが空中で爆発する。ヘリが空中分解され辺りの地面に散らばる。

 だがその瞬間、イレブンスの頭上に真上からヘリの残骸ではない物が落下して来た。

 落下してきたのは、オープンフィンガーグローブを嵌めた男だ。しかもその男は落下してくる時に、イレブンスの身体にワイヤーを引っ掛け、確実にイレブンスの元へと降り立つ気だ。

「男に上から降ってこられてもな……全然、こっちの気分が上がらないね」

 イレブンスは呟いて、スーツジャケットの内ポケットに入れていたナイフを細く伸びるワイヤーに向けて投擲し、ワイヤーを断ち切る。すると男が軽く舌打ちする音が聞こえて来た。

 男は二本目のワイヤーを近くの街頭に伸ばし、軽やかな仕草で地面へと着地している。

 その行動を見ながら、イレブンスは眉を潜めさせた。

 こいつら、因子を持ってる奴じゃないな。

 さきほどの銃弾に因子が含有されているのを見て、てっきり因子を持っている公安の奴が追って来ているのかと思っていた

 しかし因子を持っている者ならば、男がいた一〇階立建てのビルの高さなら、わざわざワイヤーを使わず、地面に着地することができるはずだ。

 けれどイレブンスへと拳を突き出して来た男はワイヤーを使って地面に着地したのだ。確かに因子を持っていないという基準でいえば、先ほどからの身のこなしは超人としか言いようがない。

 いや、待てよ。元々俺たちとの繋がりを持ってる軍伝いで、武器を入手していたなら……

 その中に因子を元々含ませている銃弾を入手することも可能だろう。

 呉越同舟の関係だとして、まさかテロリストの敵である公安にこんな武器を持たせているとは思ってもいなかった。はっきり言ってアストライヤーたちが一般の警察色が強い公安に因子を含んだ武器を渡すことはないだろう。それをするくらいなら、自分たちで倒しに行くという奴らだ。

 イレブンスは再び自分たちが向かう方向へバイクを走らせる。するとワイヤーを使って地面に着地した男が内ポケットから銃を取り出し、自分の仲間を派手に吹き飛ばしているオースティンへと銃口を向けているのが見えた。

 だがオースティンだってナンバーズに入るほどの実力を持っている。そんなオースティンが時分に向けられている殺気に気づかないはずがない。

 そのため瞬時にオースティンもワイヤー男へと銃口を向け、男が放った数弾の銃弾をセミオート……一発の銃弾だけで撃ち落としている……と因子を持っていない者にならそう見えたかもしれない。

 けれどオースティンが行ったのは、銃型を得意とする者がよく行う方法で、一発の銃弾に因子を込め、因子の籠った銃弾から自然と放散される因子の熱で近くを飛んで来た物体を溶かし落とす方法だ。

 だからこそ、その銃を得意とする因子持ちでそれを行うと、種類の違う因子の熱が反発しあい、まるで空中で誘爆し合っているように見えるのだ。

 イレブンスはそんなオースティンの姿を見てからすぐに、ビルの屋上の柵から自分に標準を定めている狙撃手の気配を感じた。すぐさま手に持っていたM82の対物ライフルからベレッタM92の自動拳銃に持ち替えて銃を構える。

 イレブンスは自分に標準を向けている狙撃手を挑発するように、狙撃手が握るライフル横の柵に銃弾を跳ねさせる。柵に当たった銃弾が甲高い音を立てた。

 イレブンスに自分の存在を気づかれたと分かった狙撃手が素早い動きで身を隠すかのように別の場所に移動して行くのがわかった。

 イレブンスはオースティンと共に、道の突き当たりに差し掛かり、猛スピードを出したまま無理矢理バイクを傾けさせ、右に曲がる。

 同じく突き当たりに、差し掛かった車が曲がりきれずに真正面にあった何かの建物の塀に衝突して、タイヤを止めている。

 だがそれでも、やはり……粘り強く追ってくる車はある。

 車の装甲をボロボロにしながらも、お構いなく、自分たちを追ってくる公安の姿にイレブンスは鬱陶しさを通り越して、思わず感服してしまいそうになった。

 日本という平野面積が少ない場所で、バイクと車では有利さが違いすぎる。

 追ってくる公安の車をイレブンスが目を細めて、身を捻らせながら普通の銃弾を撃ち込み、後ろから付いてくる公安のフロントガラスを破砕する。

 パラパラと割れたフロントガラスが地面に落ちる。そこからこちらを睨む公安の男と目が合った。目が合った瞬間、イレブンスとその男が一斉に銃の銃爪を引いた。

 パシュッ、パシュっという空気を割るようにして飛ぶ銃弾がぶつかり合う。勢いよく顔面に吹き付ける風で目が乾く。だがその乾きを瞬きして回復させている暇なく、相手からの銃弾が向かって来ている。

 音速で向かってくる銃弾を目の前にし、瞬きなんてしていられない。イレブンスの持つベレッタM92から飛び出した銃弾が相手の弾を弾く。続けて次々に弾が飛んで来ている。弾き落とした銃弾が地面にパラパラという音を上げながら地面に落ちて行く。

 イレブンスは銃弾が空になった銃を捨て、別の銃を取り出す。向こうはイレブンスのように銃を捨てるということはせず、弾を装填している間に別の者がイレブンスたちへと銃撃を放つという形でトレードを繰り返しているようだ。

 時間は少しずつ過ぎる。

 イレブンスは腕についている情報端末で、時間を確認しつつ、銃口を宙に向け二発発砲する。

 するとそれを合図とし、イレブンスのすぐ後ろにオースティンが運転するバイクがついてきた。

 顎先を軽く動かし、次の突き当りを右に曲がることをオースティンに伝達する。するとオースティンが軽く左瞼を触り、理解したという合図を送ってきた。

 イレブンスたちは、少し速度を緩めていたバイクを急加速させ、一気に公安の車と距離を開ける。

 開けた所でバイクの車体を左に寄せるような素振りを見せてから、右へと曲がる。右へと曲がり、少し細い道を走り抜け、一番近くの国道へと出た。

 国道に出ると、周りには公安の車とは関係ない一般車両が、さっきよりも多い数で道を走行している。その一般車両の間を縫うように、イレブンスたちは走る。

 後方を確認すると、自分たちを追って来ていた公安の車が一般車両に阻まれ、自分たちとの距離がどんどん開いて行くのが見えた。

「一応、撒けたか」

「変なのに、捕まった所為でタイムロスだ」

 イレブンスの呟きに、オースティンが辟易とした溜息を吐いてきた。そんな溜息を聞きながら、イレブンスは端末を耳に付けたインカムに接続する。

 まずは先に行った操生に連絡を取り、どこら辺の位置を走っているのか確認した。

『出流たちが、まだ都内を出ていないということは、私と四〇キロは離れてるね』

「分かった。じゃあ、そのままの速度で現地に向かってくれ。けど、一人で建物には入るな」

『了解』

 操生との通信を切り、もうすでに保管庫の方まで付いているであろう7thに通信を入れる。けれどいくら呼び出しても、通信に出る気配がない。

 むしろ、電波状況が悪いようだ。

 これは……もう中に入ったと思った方が良い。7thたちの中には、一度保管庫に入ったことがあるマイアもいるため、下手な仕掛けにやられないとは思うが……進むのに手間取っている可能性は高い。

 だがあんな保管庫内で手間取っているわけにはいかない。もうすでに自分たちを追って公安が動いてきたということは、明蘭を襲っていた軍が自分たちの動きに気づいたということだ。そしてそれを考えると、豊たちにも動きがバレテいると考えた方が良いだろう。

 唯でさえ、豊たち側には面倒な情報操作士がついている。しかもその情報操作士は操生や7thなどの話や、イレブンスに皮肉めいたメッセージを送ってきた行動からすると、抜け目ない性格をしているのは間違いない。

 わざわざ自分たちの手中に持ってきたヴァレンティーネを易々とイレブンスたちに奪取させるわけもない。それを考えると、これから先、自分たちに何かしらの妨害策を仕掛けてくると思っていた方が良さそうだ。

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