表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/493

護衛の二人

生徒たちが密林の中で、演習に励んでいる一方では、モニター越しにその様子を榊たちが監察していた。

 榊たちがいる場所は、スタート地点とは反対側にある、簡易式のテントだ。テントの中にでは、衛星写真による鮮明な映像が、モニターに映し出されている。

「撃破人数、五名。・・・予想通り、最初に得点をとったのは輝崎たちのところか」

 モニターを見つめながら榊がそう呟くと

「まぁ、それはそうでしょ。なんせ一軍の成績優秀者なわけだし」

 コーヒーカップを片手に持った館成が、へらっとした笑みを浮かべながら答える。

「確かにな」

 通年、このサバイバル演習での高得点者は一軍生だ。そんなこと教官のみならず、生徒たちも分かっている。

 だがそれでも、今回のように二軍が奮起する場合も少なからずあるのだ。そういった二軍の生徒の戦いは、慢心に溺れている一軍生に焦燥を感じさせ、二軍生の士気を上げる役割も果たしている。むしろ、こういった流れが出来上がれば、この演習は達成したも同然なのだ。

 そのため、真紘たちが叩き出した得点の下に、狼たちが獲得した得点が表示されているのを見て、榊は内心満足をしていた。

 今年は骨のある輩が多いな。おもしろくなりそうだ。

 そんな榊の後ろから声が掛かった。

「失礼ですが・・・―、発言をさせて頂いてよろしいでしょうか?」

礼儀の良さを感じさせる声に、榊が振り返る。

 振り返ると後ろには、姿勢正しく椅子に座る二人の女性がいた。

 言葉を発したのは、艶やかな濡羽鴉を棚引かせ、凛々しい表情をした女性が榊を真っ直ぐに見ていた。

 その女性は佐々倉誠。代々輝崎の家に使える武家の家だ。その隣は、長い髪を後ろで結った髪型をしている蔵前左京。蔵前の家も佐々倉と同様に、輝崎の家に使える由緒ある家だ。

 二人は真紘の護衛として、このサバイバル演習に加わっていた。

「どうぞ。何か質問でも?」

「ええ。では、この二位の得点を獲得している者たちの中の一人が、イザナギを持っているのですか?」

「そうですが、それが何か?」

「いえ、別に大層なことではないのですが、何故イザナギを持っている者が二軍なのか、少々気になっただけです。答えられないのであれば、お気遣いなく」

 イザナギというBRVを知る者なら、この疑問は当然だろう。だが、この問いに対しての答えを、榊は持ち合わせていない。

 この問いに答えられるのは、理事長でもある宇摩豊くらいだろう。

 はっきり言って、狼の入学時のランクは中の中。特に目立つ物もない、普通の二軍生としか見ていなかった。

 そんな狼がBRVの中でも、特出しているイザナギを手にしている。こんなことは本来ならばありえないことだ。二軍生レベル、いや一軍生レベルでもイザナギを復元できるかどうかだ。それにも関わらず、狼は難なくイザナギを復元し、とんでもない技まで使っている。

 だからこそ、榊は考えていた。

 このサバイバル演習は、通年にない番狂わせが起こるのではないかと。

 けれど今のところは、番狂わせという事にはなっていない。

 狼たち二軍が二位の順位にいるというのも、別に驚くことでもない。

 二軍の中にも、優秀な人材はいるのだから。

「それにしても、お二人ともかなりの実力者にも関わらず、何故、アストライヤーの代表にならなかったのですか?」

 二人に飲み物を配りながら、館成が質問する。

「そのような事は、とんだ愚問です。我々両家は、輝崎家に仕える家臣です。そのため、アストライヤーになるという考えは、毛頭持ち合わせておりません。それ故にです」

 館成の質問に答えたのは、誠ではなく左京だ。

 左京にしても、誠にしても口調がどこか古風なのは、家柄のためか。そのため、館成は肩を上下させている。

 この二人を見ていると、輝崎の頑固さの理由も窺えるな。

 そう思い榊はひっそりと苦笑を漏らした。

「それと一つ案件が浮上しているようですが、そのことについて話を移します。もう、御分かりかと思いますが、この島の近郊で軍事用のヘリが一機、確認されたとのことです」

 淡々と話す左京の目に鋭さが宿る。

「トゥレイターか」

「その用です。その為、何か対策を講じますか?」

「いや、こちらが対処しなくても良いでしょう。もし何かあれば生徒たち自身で対処をさせた方が実践的で、こちらとしても好都合ですし」

 そんな榊の言葉に誠が同意の意思として頷く。

「確かに、それも一理ありますね。それでは、我々は緊急事態に備えて、準備はしておき、後は見守るということで、よろしいでしょうか?」

「こちらは一向に構いません」

 話が纏まったところで、榊たちはモニターへと視線を戻す。

 モニターには、それぞれの各所でぶつかり合う生徒たちの姿が映っている。

 そして、その中でも一際目につく光景があった。

 その光景を見て、榊は口元を少し上げながら

「これは、見ものだな」

 と呟いた。


今回は、ちょっとした繋ぎ部分なので短いですが、区切りということで、お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ