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アストライヤー〜これは、僕らの世界と正義の物語〜  作者: 星野アキト
第6章 ~captured princess~
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疾駆

「二人の美女を捕獲しましたーっ!!」

 セブンスが今に至るまでに地中に張り巡らせていた糸が一気に地上へと突きだし、Ⅲや近くにいた5thの二人を絡め取るように、糸で出来た繭へと閉じ込めると、そのまま糸全体に因子を流こむ。因子を流し込まれた糸から炎が噴き出し、捕らえた獲物を焼きつかさんとする。

「ふっざけんなーっ」

 セブンスの糸が織り成す繭にⅢと共に閉じ込められた5thが空気を揺らす様に吠える。そしてその瞬間、繭が爆発し、そこから飛び出してきた5thがスーパーバズーカをセブンスに向け発砲する。

「おっと」

 セブンスが糸を操り、砲弾を裂く。空中で中規模な爆破が起こる。その余波の熱風がセブンスと5thの髪を揺らした。

「素直に私に切り込まれていれば良いものを・・・」

 Ⅲが能面顔でそう言いながら、セブンスの隣にいたテンスへと斬りかかる。テンスは自分のBRVである紙を突撃槍へと変化させ、それを受け止める。

「悪いな。俺の体はそう簡単には切らせへんで?」

 ニヤッと笑みを浮かべながら、テンスとⅢが衝突する。Ⅲが棒術と剣術を組み合わせた動きでテンスを後方へと押す。

「ほらほら、あんまり無理はせず、早く切り込まれなさいな」

 剣棒術 レイブン

 Ⅲとテンスの間に深い霧が立ち込め、Ⅲの姿が一瞬にして消えたかと思うと、テンスへと向かって刺突の斬撃が飛んできた。

 その斬撃がテンスの肩を貫き、テンスの動きを鈍くさせる。

 そのため集中力を上げ、どこから飛んでくるか分からない斬撃を回避する事に気を尖らせる。

 周りではⅢが作りだした霧の所為で、視界を奪われた他のナンバーズ達の動きが止まっている。

「おい、E―Ⅲ!!これじゃあ、俺たちも戦い難くなる。さっさとこの霧を消せ」

 そう叫んだのは南米・北米の8thだ。

「これからBIGな事やるんだ。早くしろ」

 8thがⅢを急かす声が響いたと思ったら、ガガガガという鈍い音がテンスやイレブンスたちの耳元にはっきりと聞こえた。

「ちょっと、何の音?変な事したら先に貴方の方を切り刻むわよ?」

「変な事じゃないさ。今から始める事は・・・BIGだぜ!!」

 まったくと言って良いほど答えになっていない8thの言葉だが、イレブンスは何となく、8thがしようとしている事が分かった。

 きっと、これはMGM―31パーシングのミサイルの先端を上へと向けた音だ。つまり、8thは誰を狙うと言うわけでもなく、ただ闇雲にミサイルを放ち強制的にこの場を制圧しようとしているのだろう。

 しかも、まるでおすすめ品を見せるかの様にライトアップされていた所を見ると、ただ単にこれを使いたかっただけという事もありえる。

「ふざけやがって・・・」

 イレブンスが奥歯を噛み、霧が薄れ、ぼんやりと姿を見せているMGM―31パーシングを睨む。

 相手が何の考えも無しにあれを撃ってくると言っても、通常の被害で済まないのは一目瞭然だ。もしかしたら、本当に強制退場になる可能性もありえる。

 あの8thが持ってきたMGM―31パーシングに普通の燃料が使われていない事は確かだ。その証拠にパーシングの後ろの噴射口からは緑色に光る因子が漏れ出しているのが見えた。

 因子を燃料代わりに使っているという事は、どのくらいの威力の弾道ミサイルになったのかが把握しづらい。

「フィフス、あのデカい二発を意地が何でも止めるぞ」

「だろうな。他の連中は各々の相手をするのに忙しいだろうし。見て見ぬフリをするにも物が大き過ぎる」

 半ば呆れた表情のフィフスとイレブンスがパーシングに向け、地面を蹴った。

 二台ある内の片方に向かってイレブンスが奔るが、あちらこちらで起きている戦闘の余波がその道を塞ぐ。

 イレブンスは自身の身体に因子を巡らせながら、防御態勢を取り、パーシングに向け駆ける。

 パーシングの横では、8thが大きい声で発射までのカウントダウンを始めていた。8thの隣にいるリーザはウキウキとした表情で両耳を塞いでいる。

「そう簡単に撃たせるかよ!!」

 イレブンスが手に対戦車用の九七式自動砲を復元した瞬間に、パーシングが通常よりも遥かに低空で発射された。

 直径1メートル弱あるパーシングが目の前に猛スピードで向かって来る。その時間はほんの刹那的時間だ。だからこそ、イレブンスも頭で考えるよりも反射的に銃弾を放つ。接合バンドと爆発ボルトが接合された部分とそれを補助するためにエンジンの傍にある爆薬へと銃弾を撃ち込み、炎上をさせる。

 フィフスもイレブンスと同時に、手刀による斬撃でパーシングを爆砕する。その炎が一気にイレブンスたちがいる中庭一体と建物を覆う。

 凄まじい熱風と炎で五感が全て、封じられる。大気中の酸素を全て奪うような炎に呼吸すらままならない。ここで息をしてしまえば喉が焼かれる。

 身動きが取れなくなったイレブンスは、歯を噛み締めた。

 やっとここまで来た。そうやっとここまで。

 ここにヴァレンティーネがいるのだ。

 だったらこんな炎で止まっていられない。いたくない。

 そんなイレブンスにどこからともなく、水が降りかかった。水と炎が衝突し、蒸気が立ち込めている。

 水が降ってきた方向をイレブンスが見ると、屋根へと跳躍していたナインスが平然と立っていた。

 そして、自らの水を操るように手を不規則に動かす。

 それでも炎の勢いは止まらない。今もなお酸素を奪い、周囲を焼きつかさんとする炎はナインスの放った水と互いの打ち消し合いを始める。

「ほら、さっさと行けば?お姫様を助けに行くんでしょ?」

 そう言いながら、ナインスが彼女らしくない笑みを浮かべてきた。そんなナインスの笑みにイレブンスも笑みを返す。

「はっ、当然」

 イレブンスが強く地面を蹴り上げる。そしてそのまま高く高く跳んだ。

 その瞬間。

「跳躍と移動」

 ナインスと同じように屋根の上に待機していたエイスが、いつものぼけっとした表情で、言の葉を使う。

 するとイレブンスの跳躍スピードが一気に膨張し

「え・・・?」

 気づけば、クエレブレの姿で空を旋回していたシックススよりも遥か高くに飛んでしまっている。そのため、まるで大空に打ち上げられる花火のように、打ち上げられたイレブンスを下にいるナンバーズたちが一時動きを止め、食い入るように眺めている。

 こんな形であの場を離脱しようと考えていなかっただけに、イレブンスは内心でエイスからのフォローを呪った。

 これじゃあ、まるで動物園のパンダになったかのようだ。

 こんな死にたくなるくらいの羞恥心を感じた所で、やはり止まるわけにはいかない。

 イレブンスはなるべく下のナンバーズを見ない様に、事前に操生から教えてもらったヴァレンティーネがいるという場所まで疾駆した。



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