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アストライヤー〜これは、僕らの世界と正義の物語〜  作者: 星野アキト
第6章 ~captured princess~
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最後の手札

運がない。

 11thは素直にそう思うしかなかった。

 イレブンスたちの後を追う形のルートで、ポーランドに向かっている最中、まんまと化物に出くわしてしまったのだ。

 しかもここにいるのは、11thとセブンスのみ。

 他の連中はイレブンスたちを追うのを優先させ、先に行かせた為だ。

「あ~らぁ~、東アジア地区のナンバーズに、北米地区の1stに11thじゃない?お久しぶり」

 そう言って、欧州地区のⅪが11thたちに向け、ウィンクを投げてきた。

 それを受け、11thと近くにいるセブンスが身体に悪寒を走らせる。

 今11th達の前にいるのは、欧州地区の戦闘員50名を引き攣れたⅩとⅪだ。

 50人の戦闘員は全員が因子を持っている。その50人を束ねているⅩとⅪは強敵だ。

「よりにもよって、何でE―11に合わないといけないんだよ?俺はこんな怪物じゃなくて綺麗な女性に会いたいぜ」

「ふざけた事言ってないで、さっさと動け。あっちからの攻撃が来るぞ」

 だらしなくだらけるセブンスを余所に、11thは戦闘員たちより前で、悠々と立っているⅩとⅪの二人と、一定の距離を取りながら手にM16のアサルトライフルを復元し、銃撃を開始する。

 11thが放った銃弾に向かって、デュランダルを振り払う。すると11thが放った銃弾は速度を失い、地面へと転がり落ちた。

 Ⅹの能力か。

 11thは転がり落ちた銃弾を見ながら、舌打ちした。

 Ⅹの能力は、物体の時間を止める力だ。だからさっきのは、銃弾が自分に向かって行く時間を止めたという事だ。

 そしてそのままⅩが11thへと肉薄しようとしてくるが、そこに特殊繊維の糸を操る為に使用するグローブ型のBRVを着用したセブンスが前に出てきた。

「美人の相手ならベリッシモ・セブンスにお任せ~~!!」

 そう言って10本の強靭な糸を操り、Ⅹを囲む。

 糸に囲まれたⅩが鬱陶しそうな表情を浮かべ、デュランダルを糸と糸の間の網目に着き刺し、糸を引き裂こうと下から上へと、刃を払う。

 キィィィィィィィイィイィィイィィィィィィィィイイィィィィィ・・・。

 耳を塞ぎたくなるような、鉄と鉄の衝突する音。

 デュランダルの刃と鋼鉄の糸が激しくこすれ合い、火花を散らす。

「いくら愛しのⅩが相手でも、ここは負けるわけには行かないんだよなぁ。これからデートしてくれるって言うなら、考えちゃうかもしれないけど」

「貴方の悪ふざけに付き合っている暇はありません」

 そうぴしゃりとセブンスの言葉を跳ね返しⅩは、デュランダルの刀身を青白く光らせ、因子の濃度を上げる。だがそれはセブンスも同じことだ。デュランダルに籠められる因子の濃度が上がるなら、糸に流す因子の濃度を上げる。そのまま膠着状態に持ち込む。

 それを横目に11thも欧州地区のⅪと銃撃戦をしていた。

 お互い一定の距離を保ちながらの銃撃戦。

 11thとⅪはイレブンスのように、拳銃格闘戦は選択しない。あれはアサルトライフルを好んで使う狙撃手に取ってイレギュラーな行動でもあり、イレブンスだからこそ出来るというのもある。あれをイレブンスが行えるのは近距離戦に置いてのちゃんとした間合いの取り方を知っているからだろう。

 確かに11thやⅪも近距離戦は行った事があるが、間合いの取り方を習ったわけではない。そのためやはり、近距離戦はやりにくい。

 だから近距離戦を得意とするⅩと、真正面からやり合うのは難しい。

 Ⅺの持つFA―MASから撃たれる銃弾を自分の顔面スレスレで避ける。Ⅺの銃弾は厄介で一度よければ終わりではない。Ⅺの銃弾は標的に当たるまで、標的を追尾し襲い掛かってくる。だがそれはⅪの能力ではない。Ⅺが造る特殊弾の性能だ。そしてⅪの脅威的な能力は、絶対的探知能力。その探知可能距離、半径15キロとも言われる。つまりⅪから直径30キロ圏内は、どこに隠れていようと、狙撃対象となってしまう。

 それに加え因子によって強化されたⅪのBRVの有効射程距離は通常のアサルトライフルの65倍~100倍ともなっている。

 いくら因子を使えど、瞬間移動の能力を持っていない限り、一瞬で30キロという距離は移動できない。

 そのためⅪの攻撃から身を隠す事は実質上、不可能という事だ。

 つまりⅪの攻撃を躱すためには、銃弾を撃ち落とすしかない。

 だがⅪの恐ろしい所まだ存在する。それは、高い狙撃術とその的確性。厄介な能力に加えこの二つが備わったⅪは、欧州地区のナンバーズで1・2位を争う実力だ。

「もう、前から言ってるじゃない。F―11はすぐ気持ちが焦ると、照準が甘くなるんだから。教えて上げたでしょ?困った子ねぇ。そんなんじゃ、まだⅤの心は撃ち抜けないわよ?」

「なっ」

 一瞬驚愕の声を上げた、11thの頭上をⅪの銃弾が掠めて行く。それに冷や汗を掻きながら、11thはⅪに向け、眉を潜めた。

 そんな11thを見ながらⅪがわざとらしく、片手を頬につけて身体をクネクネとさせている。

「このあたしが知らないとでも思ったの?お馬鹿さんね」

「・・・どこでそれを知った?」

「うふふ。見てればわかるわよ」

 茶化された事に顔を赤らめながら、11thはM16を乱射する。Ⅺはそれをミラー撃ちで撃ち落としていく。

 その動きに無駄がない。

 糞が。

 11thがそう思いながら、舌打ちをしていると

「まじかよ~?何?おまえ、アイツの昔の女に惚れてんの?」

「は?」

 不意を衝く言葉に11thが、後ろに振り向くとⅩと攻防戦を続けるセブンスがニヤニヤ顔で11thの方を向いてきた。

 最悪だ。

 11thの顔が一気に引き攣る。

「セブンスったら、そんなシビアな所聞いちゃ駄目よ~。恋する男子はシャイなんだから」

「マジか。だからか。おまえがアイツに突っかかるのって。そうだよな。自分の愛する女が他の男に取られちゃなぁ、それは腹立つわ」

「なに言ってんのよ?それは恋する乙女も一緒」

「まぁ・・・それは否めません」

「テメェら勝手に、他人事で盛り上がってんじゃねぇー!!」

 普段は真面目なⅩまでが、話に参加したところで、耐え切れなくなった11thが叫んだ。

 こいつら、自分たちが戦ってる自覚あんのか?

「でもまだまだ、Ⅴを落とすのは時間かかるわね。まだあの子J―11に未練タラタラだから」

 イラッ。

「嘘だろ。E―5もあんな奴やめて俺にしとけばいいのにな」

「はぁ。貴方のような下品な人に、惹かれる女性などいるわけありません」

「ひでぇーな。まっ、そういうツンとした所が俺の熱いハートを燃え上がらせるぜ」

 軽口を叩くセブンスに向かって、Ⅹが黙ったままデュランダルを振りかざす

「おっと」

 セブンスが糸を使って、自分を守る盾を作りⅩの攻撃を防ぐ。Ⅹの動きに合わせて戦闘員達も一斉に11thとセブンスを囲み、各々のBRVが無形エネルギーを放ってくる。

 その威力は、ナンバーズに比べれば小規模な物だが

「数も集まればそれなりにはなるか。でも、残念だぜ。俺は今腹の虫が悪いんだ」

 11thはそう呟いて、真上へと跳んだ。すばやくM16から自身の特化型BRVで電磁投射型レールガンへと改造したバレットM82を地面へと向け発射した。

 電磁投射 ラジエーション フィールド

 戦闘員たちが立っている地面へと放たれた一発は地面に衝突した瞬間、電撃が瞬く間に広がり、地面を削りながら戦闘員達を吹き飛ばした。

 戦闘員が吹き飛ばされていく中、Ⅺが悠然と立ち11thにFA―MASの銃口を向けた。

 そして銃口から5.56×45㎜の銃弾が何発も発射される。

 幸い撃ってきた銃弾は、Ⅺが造った特殊弾ではない。そのため11thはそれらをM82から電磁弾を放ち、撃ち落としていく。

 落下しながらⅪへと11thが肉薄する。

 その最中に徐にⅪが遠くの方を指差し

「あら、Ⅴ・・・」

 と呟いてきた。

「え?」

 反射的に11thが振り返る。だが後ろには倒れた戦闘員とその横には戦いを続けるⅩとセブンスの姿しか見えない。

「うーそぴょん。うふっ。やっぱり純粋ボーイは可愛いわ~」

「ふざけっ」

 11thがⅪの方へと振り返った瞬間、右側から顔面に強い衝撃が11thを打った。そしてそのまま、地面へと叩き落とされ、11thの口の中では血の味が広がる。

 土埃を巻き上げながら地面へと叩き落とされた11thは、切れた口から血を吐きだし、すぐに地面を蹴った。

「舐めた事しやがってぇぇ!!」

 何がうそぴょんだっつーの。あの巨漢に言われるから尚の事、腹立たしい。

 11thが電磁弾をⅪに向け連射しているが、Ⅺが放つ銃弾と衝突し爆発を起こすだけだ。

 それの繰り返しに11thが苛立たしげに、舌打ちを打つ。

 そんな11thの横に、Ⅹと交戦中だったセブンスがやって来た。

「何の用だよ?」

 苛々しながらセブンスに訊ねると、セブンスが一枚の封筒を手渡してきた。

「さっきサードから早く来いの連絡が入った。今のサード怒らせると面倒だからな。今渡した奥の手で、一旦ここを撒く。だからそれを使ってあの猛獣を何とかしたら、千光弾を撃つんだ。きっとⅪの探知能力で銃弾は飛んでくるかもしれないが、まぁ、それは避けながら逃げ切るしかないな」

 セブンスはそう言うと、再びⅩへと疾駆して行った。

 11thはセブンスに渡された封筒の中身を確認する。

 ・・・・・なるほど。いける。

 11thはそう確信した。

 どうして、セブンスがこんな物を持っているのかは分からないが、これを上手く使えば、この二人を撒くことは可能だろう。

 11thがそんな事を考えながら、足を止めていると

「そんな所に突っ立てたら危ないわよ~?」

 Ⅺがそう言いながら、銃弾を飛ばしてきた。11thは一度その銃弾を反射的に避け、間を空けないまま、躱した銃弾を電磁弾で追撃する。

 これで死角からの追撃はないだろう。

「さて、これから反撃してもらうぜ?E―11。俺のターン!」

 まるでカードゲームの決めポーズの様に、封筒から取り出した一枚の写真をⅪに向けて翳す。

「そ、それはっ!!」

 11thが翳した写真を見て、Ⅺが驚愕しながら身体を震わせたと思うと、破面した。

「欲しい~~~!!」

 11thがⅪへと翳した写真。

 それは幼き頃のキリウスの写真だ。

 本当にこんな物をどこから入手したのか?写真の中のキリウスは、真剣な表情でバイオリンを弾いている様子が写っている。

 そして大のキリウス好きのⅪは目をハート型にしながら、猪のように突貫してくる。

「品がねぇ・・・」

 自分が持つ写真へと突進してくるⅪを見ながら、11thがそう呟く。

 そして、11thは手に持っていた写真を横にスライドさせるように、セブンスと戦っているⅩの方へと投げる。

 するとⅪは勢いをさらに加速させ、11thが投げた写真へと突っ込む。

「な、何をやっているんですか?貴方はっ!!」

 突如として、自分の方へと突っ込んでくるⅪに向かってⅩが叫んだが、それも虚しくⅩを巻き込んで、Ⅹ諸共Ⅺが写真をキャッチしながら地面に倒れ込んだ。

 それと同時に11thが数十弾の千光弾を撃った。


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