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アストライヤー〜これは、僕らの世界と正義の物語〜  作者: 星野アキト
第6章 ~captured princess~
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反逆開始

「こっちに来てから碌な事がないな・・・」

 イレブンスは嵐が去ったことにほっとしながら、正面を向くとマイアと目が合った。するとマイアは少し視線をイレブンスからずらしながら、呟くように口を開いた。

「面倒をかけた。すまない」

「別に。おまえの所為じゃないだろ」

「いや、私の所為だ。私がこの場に来なければ、もっと事はすんなり済んでいたかもしれない」

「おまえ、そんな事気にしてたのか?」

 マイアはこくんと頷いた。

 馬鹿な奴。

 イレブンスは苦笑しながらそう思った。

 何となく、自分がキリウスにやられた当たりから、マイアの態度が自分に対して遠慮がちになっていると思っていたが、もしかしたら、マイアはマイアなりに責任を感じているのか知れない。まったくそんな事を感じる必要はないっていうのに。

 イレブンスは軽くマイアの頭を小突いた。

「らしくない事するなよ。おまえが俺に謝るなんて。それだったら、いつもみたいな表情で『感謝する』ぐらいの方がまだマシだって」

 少しからかう様にイレブンスがそう言うと、マイアが目を瞑りながら穏やかに笑ってきた。

「・・・・・・」

「黙りこくって、どうかしたのか?」

「あ、いや・・・別になんでもない」

「そうか?なんでもない様には見えないが?」

 そう言ってマイアが手を伸ばし、平然とイレブンスの頬に触れてきた。

「なっ!」

 ひんやりとしたマイアの手が頬に触れてきて、イレブンスは思わず驚いた。

 イレブンスの上げた声に、マイアが目を瞬かせながら驚いている為、イレブンスは慌ててマイアから顔を背けた。

「やはり、どうかしたのか?それとも私が貴様の気に障るような事をしたか?」

「違う。別におまえが何かしたわけじゃない」

「では、何故顔を逸らす?」

「それは・・・」

 イレブンスが返答に困り、言葉を濁す。するとマイアが

「ПожапуЙcта увидьте меня(こっちを見ろ)」

 ロシア語でそんな事を言ってきたが、少し照れたとも言えず、イレブンスが顔を背けている。

「もしかして、照れたのか?」

「Выглупые!(アホか!)」

「フフ、冗談だ」

 マイアにからかわれた事に妙な悔しさを覚えながら、横目でマイアを見た。

 さっきから連発して人を驚かせる様な表情ばっかりしやがって。

 イレブンスが少し気持ちが温かくなるような感覚になりながら、ふと部屋にある窓にしせんを向けた。

 そしてイレブンスは、口元を引き攣らせた。

「・・・なにやってんだよ?おまえら?」

 イレブンスが口元を引き攣らせながら、窓の向こうに三人の人影があった。一人はニタニタと人をからかう様な笑みを浮かべる男。二人目は両手で窓枠を掴みながら、ぼっーとした表情で見る背の低い少女。三人目は爽やかな笑みを浮かべた男だ。

 そしてこの三人はイレブンスと同じ東アジア地区のナンバーズで、順にテンス、エイス、フィフス。三人とも今まで香港支部に行っていたため、不在していた。確かセカンドも香港支部にいたはずだが、マイアと連絡を取っていたあたりを考えると、もう東京の方にいるらしい。

そしてイレブンスに気づかれた三人は窓を開け、部屋に入ってきた。

 最初に入ってきたテンスはイレブンスと同じ日本人で、年はイレブンスより年齢は上だが、気さくな性格で話しやすい性格をしている。

 続いて入ってきたフィフスは台湾出身で、冷静だがフランクな性格。

 最後のエイスはⅥと同じ、茶褐色の肌に肩位まで白髪を伸ばした少女で、天然なのか少しズレた感性を持つ少女だ。

「いやぁ~、ホンマはちゃんと部屋のドアからお邪魔しようと思ってたんやけど、なんや

、部屋からけったいな話声が聴こえてきたから、窓から様子見しようと思ってな、わざわざ回って来たんや。そしたら・・・・」

「良い雰囲気でジャレ合っていたから、そんな二人を邪魔するのも悪いだろ?」

 テンスの言葉にフィフスが、落ち着いた声でからかってきた。

「ばっ、ジャレ合ってるわけないだろーが」

「へぇー、俺たちにはそう見えたけど?エイスもそうだろ?」

「うん。見えた」

 エイスがフィフスの言葉に頷いた。

「ほらね」

「ほらねじゃないだろ!変な誤解すんな」

「照れるなよ」

 フィフスが焦るイレブンスを見て、クスっと笑った。

「照れてない。というか、何でここにいるんだ?」

 イレブンスが否定しながら、突然来た三人に訊ねると、テンスが額に手を当てながら首を横に振った。

「何でって、自分・・・、それはな、自分を心配して来てやったんやろ?そうやなかったら、香港から日本に戻ってるわ。それで、自分、豪いデカい事やったそうやないか。欧州のボスに噛みついたんやろ?自分らの姫さん連れ戻すために」

「いいね。あたしお姫様を救い出す勇者の話、嫌いじゃないよ」

 テンスの言葉に、マイペース気味のエイスの言葉が続く。

「姫さんって・・・。それにしても随分、情報入れるの速いな」

 呑気なテンスとエイスを呆気に感じながら、話を本題に戻した。

「まぁな。戻る前に日本の支部に連絡いれたら、サードがヒステリックに叫んできたんや。ひどいやろ?疲れてる俺らに「自分たちが到着するまで、先に行ってイレブンスを守れ」とか叫んでくるんやで。ホンマ、モテる男は辛いな」

「ははっ・・・」

 そう言って、テンスがイレブンスを肘で小突いてきた。

 ヒステリックに叫ぶサード・・・。

 想像しやすすぎて、イレブンスは苦笑を溢した。

 自分を心配してくれているのは有り難いが、サードの所為で大変な目にあってるナインスやファーストがすんなりと思い浮かんだ。

 そしてそんなサードから迷惑をかけられた、二人からの風当たりが自分に来そうだとイレブンスは思った。

「で?イレブンスの隣にいる彼女は?」

 フィフスがそう言って、マイアの方に視線を向けた。

「せやせや。スパイシーな豪い別嬪さんやないか~」

 テンスが気分良さそうに、マイアを見てきた。

「ああ、こいつはティーネのお付きでマイア・チェルノヴォーク」

「貴様たちは、東アジア地区のナンバーズか?」

 マイアがそう言うと、三人がそれぞれの簡単な自己紹介を済ませると、フィフスがイレブンスの方に視線を向けた。

「ティーネ?ボスの事だろ?俺たちはまだボスに会った事ないから、ボスについてもある程度知っておきたい。教えてくれないか?」

「ああ、そうだ。本当の名前はヴァレンティーネ・フラウエンフェルトだけどな。長いからティーネだ。そんで、まぁ・・・アイツを一言で言うと・・・・」

「別嬪?」

「ああ、そうそう・・・じゃなくて、アイツはボスらしくない。むしろトゥレイターっぽくないな。なんていうか、戦いとかと不釣り合いってというか、ボケてるというか・・・」

 イレブンスが考えながら、想いつたヴァレンティーネのイメージを上げて行く。

 なんか性もない事ばっかり上げてるような気がする。

 イレブンスが、ちゃんとしたヴァレンティーネの事を教えようと思っても、思い浮かんでくるのは、こっちの気が抜けるくらいの笑顔で、紅茶を飲んだりしている姿だ。

 んーと唸りながら、イレブンスが考えていると、

「因子能力的には、どうなんだ?」

 フィフスが顎に手をあてながら、訊ねてきた。

「能力・・・・・・、あいつの能力?」

 少し考えてから、イレブンスはヴァレンティーネが因子を使った事がない事に気づいた。多分、因子を持っていないという事はないだろうが、イレブンスはヴァレンティーネがどんな能力を有しているのか、まるでわからない。

「なぁ、マイア、おまえはティーネの能力とか知ってるか?」

 マイアだったら知っているかもしれないと思ったが、横にいるマイアは首を横に振った。

「小さい頃からティーネ様にお仕えしているが、ティーネ様の能力については私も知らされていない。だが以前、ティーネ様の妹で、今は北米・南米地区の統括者であるリーザ様から、ティーネ様の因子は特殊という事は訊いたことがある」

「特殊系か。まさかティーネの因子を使って、何か企んでるんじゃないだろうな?」

 イレブンスが眉間に皺を寄せ、あり得そうな憶測を立てた。

「そうかもしれない。だがティーネ様の因子は使用すると、身体に相当の負荷がかかるとも聞いた」

「なんだと?」

 イレブンスの中に嫌な予感が走った。

「だが、それはキリウス様も承知している。キリウス様はどんな物よりもティーネ様を大切にされている。だからあまりティーネ様の命にかかわるような事はしないと思うが」

 マイアはそう言ったものの、やはりまだ嫌な予感は拭えない。

 そんなヴァレンティーネの身体を気遣うくらいなら、いきなり連れ去ったりはしないし、ヴァレンティーネにも事前に話をするはずだ。そうすればヴァレンティーネの口から自分たちに報告され、欧州に来たりはしない。きっとそれはキリウスや幹部たちは分かっているはずだ。それなのに、それらを全て投げていきなりヴァレンティーネを連れ去ったのだから、余ほど何かに焦っているか、急を要する事態が発生したに違いない。

 そして、そんな時にヴァレンティーネの身を本当に保障できるのか?

 イレブンスは、嫌な予感を噛み潰すように奥歯を噛んだ。

「なるほど。そういう事か」

 話を聞いたフィフスが納得して、頷いた。

「元々、俺たちがセカンドから聞いた話と今の話を聞いたら、今回の大まかな概要はわかったけど、さて、どうする?きっとワルシャワまで早く着くことは、けっこう至難だと思うけど?」

「せやな。姫さんがいるワルシャワに行くゆうても、きっとルートが全部固めてるやろ。裏ルート含め、な」

 確かにワルシャワまで行くのは難しいだろう。きっとⅩたちから自分たちがここにいるのは、知っているに違いない。

 そして、自分たちに横やりを入れられないように、ポーランドまで行ける、ルートを全て潰しているはずだ。

「それだったら悩む事ないだろ?」

 イレブンスはニヤリと笑みを浮かべた。

「なんや?何かええアイディアでも持ってるん?」

 テンスがイレブンスを見ながら首を傾げた。

「ああ。俺たちがワルシャワまで行く方法としたら、強行突破に決まってんだろ」

 イレブンスの言葉を聞いたテンスとフィフスは、苦笑交じりに溜息を吐き、マイアとエイスは黙ったまま頷いた。

 そうだ。俺たちはトゥレイターらしいやり方で、ヴァレンティーネを連れ戻す。

「よし・・・反逆開始だ」



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