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カカオにシュガーを  作者: hi-ra
中学生編
6/52


 「優花ねぇ!試合、始まってるよ!」

 フィールド近くの芝生の上で話しに夢中になっていた二人は、気がつくと、前半戦が始まってからもう半分もの時間が過ぎていた。

「あらほんと――。サッカーって中々点が入らないから、私、野球のほうが好きなのよねぇ……」

「優花ねぇ……そんなここに来た意味がなくなるような事を簡単に……」

「あら、来た意味はあるわよ?だって私、柊の好きな人、一度も見た事が無かったんですもの」

 優花は白い日傘をくるくると回しながら、楽しそうに話している。

「応援に来たんじゃないの?」

「そんなの、いつでも行こうと思えは行けたでしょう?私、麗の試合見るの、初めてなのよね」

「えぇ?」

 麗が小さい頃からサッカーをしていた事は、柊でも知っていた。もちろん、優花が知らないはずはない。けれど、何十回とあったであろう試合に、優花は一度も来た事が無かったという。

「呑気なようで、ほんとは凄く負けず嫌いなのよ、あの子。だから、自分が負けたところなんて見られたくないの。見られるくらいなら、一度も見に来てくれないほうが麗にとっては楽なのよ」

 クスリと笑うと、優花は優しい眼をして麗のことを見ていた。

「だから、私の言った事を何なくクリアしてしまうのよ。裏での努力を必死に隠してね」

「……そうなんだ」

 柊はその言葉に妙に感心してしまった。


 そして――


「あ、前半戦、終わったみたいだよ」

 柊は楽しそうにそう言ってコフィールドを見まわした。

「麗君、凄かったね。ちゃんとレギュラーとして活躍してたよ!」

「あら、でも同点じゃない。2対2なんて、ちっとも面白くないわ」

「楽しかったよ?だって、必死にボールの取り合いしてるんだもん。何かまだ小学生みたいにはしゃいでるように見えたな」

「……要するに、子供に見えて可愛かったってこと?」

「あ……そうなるかも……」

 考え込むように柊が呟く。

「私より、柊のほうがひどいんじゃない?年頃の男の子に向かって小学生って」

「う……で、でもこの前までほんとに小学生だったし……」

「ほら、後半戦始まるみたいよ」

 言い訳する柊をよそに、優花はまたコートのほうへと視線を寄せた。

 後半戦は、点の取り合いではなく、必死に点を取られまいと動き回っていた。結局、麗がゴールを決めて、3対2で試合は終わった。

「麗君、良いとこ取りで終わったね」

「……そうね」

 優花はとても満足げにそれだけ言って笑う。

「……それだけ?」

「え?」

「麗君の試合を初めて見た感想とかないの?」

「……まぁ、恰好良かったんじゃないかしら。流石私の弟ね」

「え、麗先輩のお姉さんだったんですか?」

 急に目の前に立っていた男の子に、柊と優花はびっくりして身を震わせた。

「え……?」

「あ、すみません。俺、サッカー部のものなんですが、麗先輩に言伝を頼まれまして……」

 と、なぜか照れながら、その男の子は話している。

「言伝?」

「はい。今からミーティングがあるので、もうしばらく待ってくださいとのことです」

「わかったわ。そう、伝えておいてくれる?」

「はい!」

 と、なんだか嬉しそうにそう言うと、その部員は去って行った。

「柊、あの子知ってる?」

「んー、私は知らない。多分、麗君の同級生なんじゃないかな?」

「……そうね」

 二人はその後も楽しくおしゃべりしながら、麗を待つ事にした。

 彼が麗の事を、「先輩」と呼んでいた事などすっかり忘れて……。




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