番外編 処理者ティナの罪悪感
今回は少し短めの番外編です。
1日に2つ投稿したのは初めてですね。
ディライズがミーシェの魔法を受けた数分後。
ティナはディライズを連れ広場に降り立った。
そして、そのまま介抱を始める。
「カハッ……何を、している?」
「喋らないで!傷に障るから!」
「あいつらの、始末は、仕方ないとしても、あと20分、で、死体の処理を、しなければ、コホッ、ならないんだ」
「そんな事言ってる場合じゃないでしょ!?えっと、包帯はこれで…」
「いいから、しろ!」
ディライズは傷だらけの体で叫ぶ。
「俺は、お前の方が、処理が早いと踏んで、庇ったんだ。それを、無駄にするのか?」
「それは……」
「とにかく、早く終わらせて、俺を、近くの町まで運んでくれ。介抱は、そこで頼む」
「でも」
「俺なら、大丈夫だ。あの『守六光』、ミーシェ、と言ったか?あいつの甘さに、助けられた」
「?」
「考えて、みろ。『守六光』の、詠唱魔法を受けて、死体が残る事さえ、おかしいんだ。それが、この程度の傷で済んだのは、やはり、殺しに、徹し切れて、なかったんだろ……フン、この国の平和さに、感謝、しなければな」
「ディライズ……ごめん」
「……そうだ、お前は俺に、謝罪、しなければならない」
「………」
「だがそれは、俺が、怪我を負った事に対してでは、ない」
「え?」
「お前の、行動が、俺達の仕事に、支障をきたした、事に、対してだ」
「……どういう意味?」
「……お前が、あのデブに攻撃し、『守六光』の、怒りを買ったのは、確かに、お前の責任だ」
「……うん」
「だが、俺がお前を、庇ったのは、俺の独断であり、俺の、責任だ。お前が、負い目を、感じる事では、ない」
「……違うよ。全部アタシが悪いんだ」
「ああ。お前が、悪い」
分かっていた事ではあったのだが、ストレートに言われるとさすがに傷つく。
だが、ディライズの言葉はまだ終わっていなかった。
「だから、覚えておけ」
「え」
「俺が、怪我をしたのは、お前が原因だ。だが、お前の、責任じゃない。俺の責任だ。俺の責任を、勝手に、奪うな。罪悪感を抱いているの、ならば、筋違いだ。とっとと、返せ」
「……どうして、ディライズはそんな風に割り切れるの?よく分かんないよ」
「フッ、だろうな。今は、それでいい……長く、なったな。さあ、とっとと働け」
「……分かった、それがディライズの望みなら」
ティナはディライズに背を向け、黙々と死体を運ぶ。
正直に言うと、自分の顔をディライズに見せたくなかったのだ。
頬が火照り、真っ赤に染まった自分の顔を。
何故こうなったかは分からない。
だが、自分の事を身を挺して守ってくれたディライズ。
厳しい言葉の中にも僅かな優しさを含み、自分がやるべき事を諭してくれたディライズ。
罪悪感に苛まれている自分を、そっけない言い方で慰めてくれたディライズ。
気がつけば、ティナはディライズの事ばかりを考えていた。
この感情を何と言うのか、彼女はまだ知らない。
それでも、この気持ちを大切にしたい、ティナはそう思った。
ということで、今回は敵サイドのお話です。
自分の中でディライズさんがどんどんカッコイイ人になっていくので困りますww
テーマとしては、自分の判断ミスでディライズに怪我を負わせてしまったティナの後悔と立ち直りでしょうか。
まあ、あれを立ち直りというのか人それぞれだと思いますがw
一応番外編としましたが、時間軸的には3.5話というところですね。
次回からは本編に戻ります。
ピリンクの安否は、そして一行の取る選択を軸にしようと思ってます。
評価・感想・指摘等もらえるとありがたいです。