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拳と魔法と勇者と世界  作者: マークIII
2章 勇者の遺産
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第24話 運営委員長マスクマンの開会

予告詐欺になってしまいましたorz

王立闘技場。

その歴史は古く、約数百年前に設立し、数多の戦士達がここで血を流してきた。

そして、先人達を敬う行事として誕生したのが、二ヶ月に一度、年に五回行われる『隔月闘技大会』と、十月に行われる『大闘技祭』である。

が、年を重ねるにつれ、その目的は戦士達の戦いの場としてでは無く、貴族達の賭博の場となってしまった。

長く続いてきた国全体の行事を簡単に廃止する事は出来ず、かと言って、国としても扱い辛い貴族全員を検挙するわけにもいかず、王都は沈黙を続けてきた。

しかし、それでもこの行事を楽しみにする民は多く、偶数月のこの日、王立闘技場には戦う戦士達一目見ようと、多くの人々が集うのだ。

そして、それは参加する者達も例外では無い。

名を上げたい者、己が力を試したい者、もしくは、何らかの理由があって、出場せざるを得ない者。


そして、そんな事情を抱えた一人の青年が、王立闘技場へと訪れる。


青年は、服こそ普通のものだったが、その体には、無数の生傷が刻まれていた。

すると、青年の後ろから、白衣を纏い、煙草をふかす女が現れた。

女は煙を吐き出すと、口元だけを歪め、青年、ラズマ・エイジスへと声をかける。



「……さて、まあ、色々思う所はあるだろうけど? いよいよ開戦だよん。気分はどう?」

「……いいわきゃねぇだろうがよ」



ラズマは首筋を掻きながら、深々と溜め息を吐く。



「……体が鍛えられた、って実感はあるんだがな。けど、実戦はバラドーさんとの手合わせだけだぜ? 大丈夫なのかよ、こんなんで」

「へいへい、大丈夫じゃなきゃ困るよん。結構高価な薬まで使ったんだからね」



女、ケイト・ウェイルスは「にゃはは」と笑う。

ケイトが使った薬というのは、端的に言えば「結果がすぐに出る薬」だ。

そもそも、たった一週間では、血の滲むような努力も、ほとんど効果が出る事は無い。

そこで、ケイトはその薬をラズマに投与する事で「鍛錬の効果が出るのを早めた」のだ。



「そういや、バラドーっち達は、もう中に入ってるみたいだよ。張り切り過ぎだってばよ」



軽くおどけるケイトだが、ラズマはそれに構っていられるほど余裕は無く、その重い口を開く。



「……なぁ、ケイトさん。正直に言ってくれ。……俺に、あいつを救う事は出来るのか?」

「んー……正直、確率的には五分五分かなー。『誘』のカラクリはまだバレちゃいないだろうけど、あっちも雑魚はいないからねー。そうでなくても穴が多い作戦だってのに」

「……そうか」



肩を落とすラズマのその肩に、ケイトはポンと手を置いた。



「なーに、そう落胆しなさんなよ。こんな時の為の天才美少女ケイトさんの出番でしょうが」

「……ケイトさん」



不器用なりに励まそうとするケイトを、ラズマはじっと見つめる。



「な、なによ、何なのさ」



少し頬を赤くして照れるケイトに、ラズマは真面目な顔でこう答える。



「さすがに少女は無理あるんじゃね?」



どこぞで聞いた事のある台詞と共に、頬を叩く小気味のよい音が闘技場の外に鳴り響いた。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






闘技場内部。

その北東にある第一選手控え室。

そこには、既に大会への出場者達が多く集まっていた。

その中に、一参加チームとして溶け込む、"裏"の住人が二人。


シャルロットが差し向けた刺客、チェイズとペレトゥだった。


いや、差し向けたというよりは、この二人がこの任務の参加を強く希望したのだ。

理由は簡単で、この二人、ラズマに一度"してやられた"事がある為だ。

二人は長らく沈黙を続けていたが、ようやくチェイズから口を開く。



「……バンデとタナトスはどこだ? あいつらも出るんだろう?」

「……第二控え室」

「そうか……ふむ、まだ結構時間があるんだな。退屈だ」

「……油断禁物」

「……そうだな。私もお前も、一度奴にしてやられたんだ。同じ失敗を繰り返すわけにはいかない」

「……ん」



ペレトゥが満足したように頷くと、二人は再び沈黙を決め込む。

静かではあるが、この二人から放たれる威圧感は並のものでは無く、参加者達は無自覚の内に、彼女達から距離を取っていた。


ある一組を除いて。


その一組は、茶色い腹巻をして酒瓶を抱えている中年男と、黒いロングコートを羽織った黒髪の美女という、まさに異色のコンビだった。

二人は暇そうにしていたが、中年男が、自分達の周りにペレトゥとチェイズしかいない事に気付くと



「……ん? こんなに人少なかったっけ?」

「ふん」



コートの女が、顎でペレトゥ達を指す。

中年男は「ああ、なるほど」と言うと、そのまま二人に歩み寄る。



「……おい、フータロー」

「大丈夫大丈夫」



フータローと呼ばれた中年男は、軽く笑いながら二人に近づく。

男に気付いたチェイズは、目の前の男をジロリと睨む。

が、フータローは特に臆した様子も無く、笑みを浮かべたまま二人に話しかける。



「やあ。君達も参加者なの?」

「……参加者じゃない奴が、ここにいる理由が無い」



チェイズは不機嫌そうにそう答える。



「ああ、それもそうか。あ、自己紹介が遅れたね。僕はフータロー。で、あっちの目つきの悪い美人さんがパートナーのルヒジダちゃん」

「誰が美人だ」



ルヒジダは照れというより、本気で嫌がっている様子で、憎々しげに呟く。



「それで、君達は?」

「……名乗る必要が無い。そもそも」



チェイズは立ち上がると、そのまま剣を抜き、刃をフータローの首に当てる。

突然の出来事に、控え室にいる選手達は「何だ何だ」とどよめく。



「互いに勝ち抜けばいずれ分かる事、だろ?」


「……なるほど。確かにね……けど、君達には決定的に足りてないものが一つある」



フータローは剣身を軽くつまむ。

そのまま顔色を崩さず、チェイズを見て口を開く。



「年上への敬意だ」



直後、パキッという金属が割れる音がした。

見れば、フータローの指が剣身を砕き、チェイズの剣にヒビが入っていた。



「ッ!?」

「剣を折って悪かったね。まあ、そちらも危ない事してきたし、どっちもどっちって事で」



フータローは立ち上がると、そのまま控え室を後にする。

ルヒジダは深い溜め息を吐きながら、フータローの後を追う。

二人が去った控え室は、まるで嵐が通り過ぎたかのように静かになった。

そんな中、チェイズとペレトゥの二人は、心中にてこう思う。


-……奴等だけとは、戦いたくない。


二人は、三つ巴の戦力図に、新たな力が加わるのを、静かに、それでいて確かに感じ取った。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






受付開始から一時間が経過した。

既に百五十以上のチームが参加し、受付も締め切れられようかという時。

ミーシェとティナは、ギリギリで参加に成功した。

出場まではこじつけたが、ミーシェの正体がバレるのも時間の問題だろう。


そして、このような大会に出場する『守六光』に対する都民の印象が悪くなる事も、ティナは承知していた。


ミーシェは「気にしない」と言っていたが、やはりそう簡単な問題ではないだろう。

だからこそ、しくじるわけにはいかない。

ミーシェの覚悟を無下にしない為にも、そして、二人の目的を達成する為にも、ティナは、何としてもブロンドウェイの真意を確かめなければならない。


「……あんなに混んでるとはね。おかげで、大分時間が掛かったわ」

「王都ってあんなに人がいたんだね。びっくりだよ」



二人の少女、ミーシェとティナは安堵しながらロビーで一息着いていた。

開会式まであまり時間は無いが、人波に揉まれたせいか、少し疲れていた。

しばらく沈黙が続いた後、唐突にティナが口を開く。



「……いよいよ、だね」

「……そうね」



そもそも、王都の要人である『守六光』がこのような大会に出る事自体、異例中の異例なのだ。

サーティスの計らいによって、それは何とか叶ったが、代わりに失敗は許されない。



「……でも、具体的にはどうやんの?」

「そうね……一番手っ取り早いのは、この大会に出てるっていうブロンドウェイの駒から、話を聞く事ね」

「なるほど。……でも、あっちだって『十人議員』の私兵だよ? そう簡単に話が聞けるとは思わないけど……」

「……まあ、とにかく今は任務の遂行だけを考えましょう」



その時、『ピンポンパンポーン』というアナウンスの音が響き渡る。



『ただいまより、開会式を行います。選手の皆さんは、至急闘技場へとお越し下さい』



アナウンス後、選手と思われる群集が次々と闘技場へと、観客は観客席へと向かう。

ミーシェ達も急いで闘技場へと向かうが、この時、スタッフが闘技場へと赴く選手達にある物を渡している事に気付く。

流れのまま、ミーシェ達もそれを受け取る。


それは、どうやら腕輪のようなもので、何故か鎖のようなものがついていた。



「……何これ?」

「……さあ。分からない、分からないけど……何となく、嫌な予感がするわ」



直後、ミーシェの予感はやはり当たる事になる。

だが、同時に彼女の予想し得なかった展開も待ち構えていた。


それぞれの想いを胸に、いよいよ『隔月闘技大会』は幕を開けようとしている。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






百六十八組、計三百三十六人。

それが、今回の『隔月闘技大会』の参加チーム、及び人数だった。


そんな中、いよいよ開会式が始まる。


開会の言葉兼ルール説明兼来賓(らいひん)紹介という何とも適当な題目。

すると、主賓席へ珍妙な仮面を被った、変な男が出てきた。



「YA! 皆乗ってるか!?」

『YEAHHHHH』



予想以上の会場の盛り上がりに、初参加の組は目を丸くする。

この男は闘技大会の運営委員長、ルール説明、実況、結果発表をこなす自称紳士、ザ・マスクマンだ。

とまあ、フータローも噂程度でしか聞いてなかったが、まさかここまでアレな人物だったとは思わなかった。



「さてさてさてぇ! 盛り上がってる所悪いが、これからルール説明に入らせてもらうぜ!」

『YEAHHHHH』

「……どうにかならんのか、あの五月蝿いの」



ルヒジダの憎々しげな呟きが聞こえる筈も無く、マスクマンは喋り続ける。



「今回は二対二のタッグマッチ! 勝利条件は二つ。相手を気絶させるか、負けを認めさせるかだ。ここ数年では全く起きていないが、相手を殺してしまった場合は失格の上にお縄に繋げられるんで覚悟しとけよ!」

「……殺しは駄目、か。面倒だな」

「同意」



約二人の女私兵の物騒な呟きも、当然マスクマンには届かない。



「だが、まずは参加者を絞らなきゃならない。そこで、まず百六十八のチームを四つのブロックに分け、予選を行ってもらう! つまり、一ブロックが四十二チームだな。予選内容は至ってシンプル、バトルロイヤルだ! 勝ち残った各ブロックの勝者が、決勝トーナメンとへと駒を進めるぜ!」

「バトルロイヤル、か……ちょっと不利かな」

「どの口が言っている?」


「が、普通に戦っても面白さはナッシング! そこで、予選の間、てめぇらには与えられた腕輪を両者の片腕にしてもらう。つまり、てめぇらは相方と文字通り"一身同体"になるわけだ」



マスクマンのこの言葉に、これまで黙っていた選手達がざわざわどよめき始める。



「おいおい、そうどよめくなよ戦士共。戦いはまだ始まってないぜ? 男なら、いや、(おとこ)なら! 与えられた試練は不満を垂れながらやるもんじゃねぇ。黙ってぶち壊してくもんだ! 違うか!」


「……そうだな」

「ああ。思えば、予選が出鱈目(でたらめ)なのも、今回に始まった事じゃないしな」

「前回は鬼ごっこだったしな」

「やっぱりマスクマンは最高だぜ!」

「ああ!」

『マ・ス・ク! マ・ス・ク!』


「……ここの選手達って、あの仮面に洗脳でもされてるのかな?」



フータローの(もっと)もな意見も、群衆の歓声に掻き消される。

すると、ザ・マスクマンが突然声色を変える。



「……それじゃあ、今大会のスペシャルゲストを紹介するぜ……正直、俺もマジにビビった。主催者側のジョークだと思ったくらいだ」



もったいぶるマスクマンに、フータロー達を始めとした選手達は「何を大袈裟な」と呟く。



「それでは登場してもらうぜ……」



マスクマンがそう言うと、主賓席の影から、女性のものと思われる人影が現れた。

それは、マスクマンが言うように、冗談としか思えないような人物だった。

マスクマンが、高らかにその人物の名を叫ぶ。



「王都を牛耳る『十人議員』の一人、シャルロット・C・ブロンドウェイ様だぁ!」


『なっ!?』



ミーシェが、ティナが、フータローが、ルヒジダが、バラドーが、トリシアが、ケイトが、そして会場のほとんどの者達が、驚きのあまり耳目を疑った。

だが、現実は疑いようもなく、確かにシャルロットの姿はそこにあった。

シャルロットは手を振りながら、その口を開く。



「皆さん。おそらく、大方の方達とははじましてになります。シャルロット・C・ブロンドウェイと申します」



ケイトは混乱しながらも、情報を整理する。

バラドー達の調べによると、シャルロットが公の舞台に姿を晒した事は一度も無い。

それほどまでに正体を隠し続けた彼女が、何故ここで姿を現したのか。


つまり、シャルロットには、今日姿を出さなければならない何らかの理由があり、その理由がリスクに見合うものだと判断した事になる。


だが、ミーシェ達やフータロー達、他の参加者達にとっては、予想外の出来事ではあるものの、そこまで気にする事ではない。


が、ケイト達にとって、それは大きな問題となる。


そんな状況もお構いなしに、シャルロットは澄ました笑顔で群集に微笑みかける。



「私は『十人議員』という役職をやっているわけですが……今日は、一人の都民、シャルロット・C・ブロンドウェイとして、ここに来ました。皆さん、今日は無礼講です。存分に騒ぎ、稼ぎ、盛り上がりましょう。あ、でも、稼ぐ方はあまり羽目を外し過ぎないよう」



シャルロットの、ある意味ギリギリな言葉に、群集は笑いに包み込まれる。

庶民的な冗談を言うシャルロットが、何となく身近に思えたのだ。

そして、笑顔を崩さずシャルロットは言い放つ。



「選手の皆さん。それぞれ優勝を目指し、戦う理由の為に、頑張ってください」



そう言ったシャルロットの目は、確かに、邪悪に笑っていた。



という事で、闘技大会に出場する参加者達の心情と、開会式の話となりました。

新キャラ、運営委員長マスクマン。

と言っても、彼は戦いの実況以外、ほとんど出番の予定はありませんw

まあ、濃すぎるキャラなので、少し出れば十分かとw


あと、前書きでも書きましたが、図らずも予告詐欺になってしまいました。

本当に申し訳ありません。

あの、違うんです。

本当は今回で最初の決勝トーナメント出場チームが決まる予定だったんです。

ですが、まあ、色々と加筆していく内に、予定の文字数をオーバーしたわけで……。

今後はこのような事はなくしていきたいです。


というわけで次回予告。


ついに始まる『隔月闘技大会』予選。

果たして、最初に予選を抜けるチームは……。・

次回、「少年ラズマの成長?」

頑張ります。


評価・感想・指摘等頂けたら幸いです。

質問も頂けたらお答えします。

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